夏の甲子園で107年ぶりの優勝を成し遂げた慶応(C)CoCoKARAnext

 107年ぶりに深紅の大優勝旗を手にした慶応ナイン。巷では森林貴彦監督のリーダーシップも話題になっています。

 そもそも森林監督とは、どんな方なのでしょうか。

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 慶応関係者は言います。

 「慶応では巧守のショート。大学では野球部に入らず、学生コーチとして高校を指導します。卒業後はNTTに就職し、エリート会社員としての道が拓けたにもかかわらず、高校野球指導者を志して3年で退社。筑波大大学院にコーチング論を勉強しに行くのです。ここでいったん慶応を出て、野球以外の他競技の選手とふれあった経験が、後に『高校野球の常識を疑う』という多様性への原点になったと話していました」

 「もう一つの顔」もあります。何と慶応幼稚舎(小学校)の3年生の担任。子供たちからは「モリバ」の愛称で呼ばれる人気教諭です。

 「神奈川の地方大会でも甲子園でも、慶応の応援席に行くと、必ず幼稚舎の制服を着た一団に遭遇します。親御さんも一緒になって、森林さんを応援している。小学校の教諭と高校野球の監督はともに激務。森林さんじゃなきゃできません(笑)」(前述の慶応関係者)

 従来の高校野球の指導者にしばしば見られた、体罰や暴言とは無縁。WBC侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹監督にも相通じるものがある、モチベータータイプのリーダーといえそうです。

 栗山監督同様、ビジネスマンにとっても参考になりそうな「森林流」とはどこにあるのでしょうか。

(1)役職ではなく「さん」付けで呼ばせる
 高校野球の監督と言えば選手から「先生」「監督」と呼ばせるのが普通。しかし慶応では、「先生」と呼ばれるのは福沢諭吉一人だけという伝統があります。前任の上田誠監督時代から、慶応では「監督」ではなく「さん付け」が基本的な呼び方。たかが呼び方、されど呼び方。チームの自由闊達な空気を形成する一要素になっています。

(2)ユーモアがある
 小学校の授業ではダジャレを連発するとの証言も。遊び心に満ちたユーモアあふれるトークも森林監督の特色です。

 代打として背番号13の元気印・安達英輝を送り込んだ場面の意図について聞かれると「メディア的には清原(勝児)の方が面白かったと思うんですが」と報道陣の笑いを誘うなど、“森林節”は悲壮感とは無縁。むしろ指揮官の姿勢が「エンジョイ・ベースボール」を体現しているともいえます。リーダーがピリピリすることなく、率先して職場に笑いを提供していけば、自ずと風通しもよくなることでしょう。

(3)絶えず勉強し続ける
 森林監督の交友関係は野球界、スポーツ界のみに止まりません。慶大時代の仲間は広く様々なビジネスの現場で奮闘していますが、彼らと会話の中からチーム経営へのヒントを得ることもしばしばあるそうです。

 野球人はどうしても野球界の枠の中へ収まりがち。でも視野を広く持ち、ビジネス界の成功者の生き方を教材に選手たちが議論を交わすそのコーチングからは、「社会に出てから通用するスキルを高校時代に学んでほしい」という森林監督の願いが込められています。

 時代に即したタイプの指導者。今夏の優勝を成し遂げたのも、必然かもしれません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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