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胸を触る男性(写真:PIXTA)

《今年、68歳を11月に迎え、その後70歳を超えても、まだまだ歌える限りずーっと歌い続けたいと思っております。人生は死ぬまで試練だと思い、乗り越えてみせます。サンミナ、シクヨロ》

男性デュオ「バブルガム・ブラザーズ」のブラザー・コーン(67)が29日、乳がんであることを自身のSNSで公表し、冒頭のように決意を表明した。治療に専念するため、9月に予定されていた結成40周年の記念公演は中止、年内は活動を休止するという。

コーンはSNSで《左胸にシコリが出来、病院で検査を受けたところ乳癌(がん)と診断されました》と報告し、《乳癌は男性では本当に珍しいらしく、自分でも寝耳に水でした。この現実を真摯に受け止め、この乳癌の治療に専念する事にいたしました》と思いをつづった。

また《現在のところ、乳癌の症状はステージ2で、早期発見出来たため、なんとか命には別状ないと主治医から告げられておりますのでご安心ください。本人は元気です。ただ、抗がん剤治療の副作用が予想以上に大きく、つらい治療に耐える日々が続いておりますので来年また元気なブラザーコーンの復帰まで応援よろしくお願いします》とし、現在の症状を明かした。

■男性の乳がん 発症する年代は? 治療法は?

コーンが《寝耳に水》《男性では本当に珍しい》という“男性乳がん”だが、厚生労働省の集計によれば、2019年に乳がんと診断された男性は670人で、女性の97,142人のわずか0.7%ほど。微増傾向ではあるが毎年600人台と罹患数が少ないため認知度が低く、発見が遅れるケースも多いという。

たかはし乳腺消化器クリニックの孝橋慶一院長は、“男性乳がん”について次のように解説する(以下、カッコ内は全て孝橋院長)。

「男性にも少ないですが乳腺はあるため、乳がんは発生します。男性乳がんは、乳がん全体の0.6~1%を占めると言われています。60~70代の男性に多く、発症時の年齢が女性の乳がんよりも10歳程度高齢であることが特徴です。多くは乳頭付近に発生します」

発症する要因は様々で具体的には解明されていないとした上で、いくつか指摘されている危険因子もあるという。

「ひとつは、特定の遺伝子の変異がある場合です。ただ、その遺伝子の変異がない人でも男性乳がんになる方もいらっしゃるので、それだけが原因ではありません。乳がんになった人の中で、女性よりはその変異を持った男性が多いということです。女性の場合は5-10%前後ですが、男性はその約2倍近くみられると言われています。

また、わかりやすい要因は家族歴です。身内に乳がんの人がいる場合、発症するリスクも高まります」

診断や治療方法は女性とほとんど変わらないという。

「手術による乳房切除、放射線療法、抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的治療が、がんのステ-ジによる進行度やがんの種類により選択されます。

ステージ2ということであれば、腫瘍サイズがやや大きいかリンパ節などに転移していた可能性が考えられ、一般的な抗がん剤の対象になります。男性の場合は女性よりもホルモン感受性が高いためホルモン療法が効く場合が多く、抗がん剤治療が終わってからおそらくホルモン療法になると思います」

■進行が速い男性の乳がん 早期発見のポイントは?

男性の場合は、女性よりも進行が早いという。

「男性は乳房が小さく女性と違って皮下脂肪も薄いので、腫瘍がそんなに大きくなくても、すぐに皮膚や深部の筋肉へ浸潤しやすいです。そのためリンパ節や骨・肺・肝臓などへの遠隔転移が起こりやすく、がんのステ-ジが女性より早く上がりやすいのです」

さらに男性の場合、発見が遅れがちになりやすいため余計に注意が必要だという。

「女性のように乳がん検診を受けることがなく、また普段から自分の胸に注意を払わないものですから、気がつきにくいことが多いです。私が診た中では、着替えの最中にたまたましこりに手が触れて違和感を持ち受診に至るなど、偶然見つかるケースも多いです。先程言ったように女性よりも進行が早いのに、気がつきにくい分、発見した段階ですでに進行しているケースも多いです」

乳がんを発症した場合の兆候はあるのだろうか。

「主な症状は乳房のしこりで、最初は女性と同様、例外もありますが、乳がんには痛みがありません。硬く、可動性がないのが特徴です。しこりで気がつく場合が多く、痛みが来た時点では少し進行していると思った方がいいです。

また、乳首の陥没も症状としてあります。がんが乳首を引っ張ってくるので、凹んでくるのです。それでおかしいと気がつく人もいます。しかし、痛みと同様、こちらもその状態まで来るとそこそこ進行した状態になっていると思った方がいいです」

早期発見のために簡単にできることもあるという。

「お風呂で石鹸をつけたときに胸を触ってみるなど、月に一回くらい触ってみるのがベストですね。違和感があればすぐに受診して、痛みや陥没などの症状が出る前の早期に見つけられるといいと思います」