Blackmagic Designによると、トライベッカ映画祭にて封切られたドキュメンタリー映画「All You Hear Is Noise」の撮影に複数のBlackmagic Designのデジタルフィルムカメラ、ポストプロダクションに編集、グレーディング、VFX、オーディオポストプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioリモート・コラボレーションにBlackmagic Cloudが使用されたという。

ネッド・キャッスル氏とマット・デイ氏の両氏が監督・制作を手掛けた同作は、スペシャルオリンピックスのアスリートであるトレントクリス、メラニーの3名が、2019年スペシャルオリンピックス夏季世界大会(アブダビ)に向けてトレーニングを重ねる姿を追う。同作では、3人のアスリートたちと友人、家族、その他のアスリートとの交流の様子と、アメリカ帰国後に直面することになった新たなチャレンジを映し出している。同作は、レブロン・ジェームズのコンテンツ制作会社であるSpringHill Companyと、アスリートに対するエンパワーメントに焦点を当てた同社のブランドUninterruptedにより共同制作された。また、制作総指揮はロビン・ロバーツ氏が務めた。

長年の友人であるキャッスル氏とデイ氏は、共にドキュメンタリーを制作する機会を長い間探していたという。

デイ氏:電話でいろいろと漠然としたアイデアを語りあっていたのですが、ある時ネッドがスペシャルオリンピックスのことを話題として持ち出したんです。バーモント州でのボッチャのコーチとしての経験を話してくれました。

題材について話し合ううちに、スペシャルオリンピックスや知的障害に関する作品があまりないことに気づきました。

当初はスペシャルオリンピックス世界大会に向けてトレーニングを重ねるトレント・ハンプトン氏に焦点を当てる計画で、両氏は撮影の準備を始めた。

キャッスル氏は、次のようにコメントしている。

キャッスル氏:真の意味で独立した映像作家であるので、本作の資金のほとんどは自分達で負担しました。そういったことから、予算は最も重要な要素でした。

シネマライクなルックが得られるカメラが必要でしたが、様々な場所で単発的に撮影を行う予定だったので、レンタルは現実的ではありませんでした。

Blackmagic Design導入事例:ドキュメンタリー映画「All You Hear Is Noise」の場合

両氏は計画当初から候補として挙げていたBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kデジタルフィルムカメラを採用することに決めた。その後、Blackmagic URSA Mini Pro 4.6K G2を追加し、撮影終盤でPocket Cinema Camera 6K Proも追加された。

デイ氏:内蔵NDフィルターとミニXLRはドキュメンタリー制作において、非常に役立ちます。

Pocket Cinema Cameraは小型で、とても直感的かつ簡単に使用でき、非常に美しい映像が得られます。

撮影条件が常に変わり続けていたので、身体的・物理的な面だけではなく、撮影においても、あらゆる状況に対処できるように準備する必要があったという。

デイ氏:3幕目で、トレントロングアイランドトライアスロンボランティアをしているシーンがありました。

雨や雹が降り、強風が吹いていました。ゴミ袋にカメラを包んで、できる限りのことをしました。陰気な空と打ち寄せる波、風雨にさらされて冷きったしかめっ面など、本当に説得力のある映像となりました。

Blackmagic RAWで撮影したことで非常に大きな違いを生みました。ドキュメンタリーの撮影では、屋内から屋外、その中間を動き回るので、同じ照明条件で撮影できることはほとんどありません。本作では一度も照明を使わなかったので、露出とカラースペースの両方で、このようなラティチュードが得られたことにとても助けられました。

ポストプロダクションにおける編集は、ロサンゼルスのデイ氏、バーモント州バーリントンのキャッスル氏、メキシコシティーに拠点を置くエディターパブロ・ガーサ氏、バージニア州リッチモンドのアシスタントエディターであるマロリー・ブラッケン氏が行った。

キャッスル氏:Blackmagic Cloudの機能はゲームチェンジャーでした。

様々なタイムラインをその都度書き出して共有する必要があったら、どんなことになっていたかと考えるだけで恐ろしくなりますね。一つのアプリケーション内で、誰もが同じプロジェクトファイルを同時に使用でき、チェックのためにタイムラインを共有でき、微調整を適用できたことで、非常に多くの時間を節約できました。また、プロジェクトで他の人が作業しているのが見られるので、共同体的な雰囲気も垣間見えました。リモートで作業することで様々な利点がありますが、同時に一緒になって作品を作り上げているという感覚が得られたことも良かったと思います。

キャッスル氏:カメラ同様、DaVinci Resolveはとても直感的で、使いやすく、楽しみながら作業ができます。

道理にかなっていて、意図した通りに動作し、見た目が良いですね。また、Blackmagic RAWで撮影していたので、ファイルの編集はResolveで行う必要があり、そうすることで最大限にファイルの良さを引き出せると思い、Resolveを使いました。

Blackmagic Design導入事例:ドキュメンタリー映画「All You Hear Is Noise」の場合

3年間の制作において、DaVinci Resolve Studioのバージョンが更新すると共にポストプロダクションのスタッフもレベルアップし、アップデートが行われるたびに追加される新しいツールに誰もが満足していたという。

キャッスル氏:始めた時はResolve 15でしたが、編集が終わる頃にはResolve 18を使っていました。これまでに追加された機能は素晴らしいですね。音声分離ツールを特に気に入っています!

編集は最終的に二段階で行われることになった。最初の制作が終わった後、キャッスルとデイの両氏はカットを確認したのだが、これでは完成とは言えないと気づいたという。

デイ氏:良い出来ではなかったんです。

撮影前に行わなかったリサーチを行い、何が欠けているのか、なぜ気づかなかったのか、その欠けている要素を修正し、作品全体を改善するには何をすべきか調査しました。2年越しで撮影しながら、障害に関するアドバイザーを集め、より優れた作品にするための物語を構築する上での助言を受けました。

編集の最終段階で、ガーサ氏が参加することになった。

キャッスル氏:パブロがどんなに素晴らしかったかは語り尽くせません。パブロは物語の流れを構築するセンスに非常に優れています。生まれ持ったものなのでしょう。本作はパブロのセンスのおかげで本当に良いものになりました。

最終的なカラーグレーディングは、Different by Designのルーク・ケイヒル氏が行った。

キャッスル氏:ルークはグレーディングでBlackmagic RAWを扱ったのは本作が初めてだったらしいのですが、フッテージの汎用性の高さにとても驚いていました。

カラーにおいて技術面で最も難しかったのは、様々な照明条件で自然で一貫した赤を得ることでした。特に、スペシャルオリンピックスでは原色の赤は重要な色であるので、真っ赤なシャツやスポーツ用の衣料品、看板、旗などがたくさん出てきます。グラデーションが損なわれないように、このような赤の大きな領域を調整しすぎないように注意する必要がありました。それ以外の面では、Blackmagic RAWのラティチュードに大変満足しました。この物語を伝えるにあたって、このような奥深いカラーパレットを使えたことを本当に嬉しく思っています。

「All You Hear Is Noise」はスポーツのドキュメンタリーでありながら、出演者が世界をまたいで様々な経験をする様子を収めた冒険物語でもある。

キャッスル氏:本作には、汗を流すアスリートたちのテンポの速いシーンと、競技以外におけるアスリートたちの生活を映し出す静かなシーンが含まれています。BlackmagicカメラとDaVinci Resolveで得られたシネマライクなルックは、いずれのスタイルのシーンにおいても空気感を捉える手助けとなりました。また、競技場外でのアスリートの物語のトーンを形成する上で特に重要な役割を果たしました。そういった柔軟性が得られるのは素晴らしいですね。

Blackmagic Design導入事例:ドキュメンタリー映画「All You Hear Is Noise」の場合
Blackmagic Design導入事例:ドキュメンタリー映画「All You Hear Is Noise」の場合