水問題の構造的な解決に挑むWOTA株式会社(代表取締役CEO・前田 瑶介、以下「WOTA(ウォータ)」)は、持続可能な水インフラの構築に向けて、愛媛県東京都などの複数の自治体と共に、新たな小規模分散型水循環システムを実装していくことになりました。人口減少、上下水道の老朽化の加速により、上下水道財政が大幅に悪化していく2040年までの解決を目指し、「Water 2040」プロジェクトを始動します。

■『Water 2040』 プロジェクト発表会開催

 2023年8月31日、都内会場にて『Water 2040』プロジェクト発表会を、ソフトバンク株式会社、株式会社日本政策投資銀行、愛媛県東京都利島村の協力のもとで実施。下記についての理解促進を図りました。

1. 日本の上下水道財政問題の現状

2. 解決の一策となり得る、「小規模分散型水循環システム」の可能性

3. 「小規模分散型水循環システム」を実装した自治体の取り組み事例

(写真左から)WOTA株式会社 代表取締役 兼 CEO 前田瑶介、ソフトバンク株式会社 法人事業統括デジタルトランスフォーメーション本部第一ビジネスエンジニアリング統括部統括部長 河本亮、株式会社日本政策投資銀行 常務執行役員 原田文代、愛媛県 デジタル変革担当部長 兼 出納局長会計管理者 山名富士、東京都利島村 村長 村山将人

■日本の上下水道財政問題の現状

 日本の水道事業は、戦後、人口増加を見込んだ水源の確保や施設の拡張整備が進められてきました。結果として2021年度には水道普及率は98.1%に達しています。一方、給水人口は少子化に伴い2010年をピークに減少し続けており、加えて、水道施設は徐々に更新時期を迎え、老朽化した管路の更新投資などに多額の費用が必要となっています。(図1)

 そのため、水道事業の運営にあたっては、「給水人口・給水量の減少に伴う収入の減少」と「更新投資需要の増加」のバランスを見極める必要が生じていますが、既に料金収入で給水・下水処理費用を賄えず、国庫からの補助や一般会計からの補填等で費用を賄う自治体も存在します。(図2)

 このような状況を受けて、水道料金の値上げや、官民連携・水道事業者同士の広域連携といった動きもでてきている一方、人口規模の少ない地域ほど、水道財政収支のバランスが難しくなります。(図3)

図1

Source厚労省 水道統計

※1 2020年までは実績値。2020年以降は2019年度普及率(97.6%)が今後も継続すると仮定し、総人口の予測数値に普及率を乗じて算出

※2 2020年以前は過去の建設投資額推移の実績値、2020年以降は厚労省試算に基づく将来の投資額予測値(法定耐用年数の1.5倍である60年で管路更新をする前提)

図2

Source総務省決および、厚労省国交省が発表した方針に基づきYCP Solidiance 試算

※1 料金収入:他会計補助、国庫補助金、その他補填金等は含まない。給水人口は、水道普及率が2019年の水準(97.1%)を維持すると仮定し予測。水道料金は2021年の水準が続く仮定で試算。

※2 上水道費用:2023年以降の建設改良費は年間平均1.8兆円とする厚労省の試算を前提とする。減価償却は耐用年数40年とする。2023年以降、維持管理費は2021年の水準を維持すると仮定

※3 下水道費用:2023年以降の建設改良費・維持管理費は直近8年間の推移をもとに試算。減価償却は耐用年数60年とする。

図3

Source総務省の決算データよりYCP Solidiance試算

※1 水道事業・公共下水事業の総務省の公益企業年鑑における実績値(上水2020年、公共下水2021年)

※2 上水・下水利用における供給原価と単価を自治体規模別に集計し理論値として自治体規模別の1人当たり平均料金収入と運用費用を算出

■「小規模分散型水循環システム」を活用した新たな分散化

 WOTAは、日本における上下水道の財政問題に対して、大きなソリューションになりうると考え、「小規模分散型水循環システム」(図4)を開発してまいりました。

 人口密度の少ない地域などでは従来型の上下水道施設ではコストが見合わず、便益を得られない地域があります。そうした地域に代替手段としてWOTA の「小規模分散型水循環システム」を導入できれば、自治体も従来型施設の維持更新・運用に係るコストを減らすことができる可能性があります。

 ポイントは、「配管コスト」です。浄水場から遠く、配管が長いにもかかわらず、その配管費用を負担する人口が少ない地域においては、収支アンバランスが発生し、水道財政を圧迫します。長距離配管を使わない従来の分散化の方法としては、小規模給水施設を作る、各家庭に井戸などの各戸型給水装置を作る、給水車で送水するなどの方法もあります。このような方法は、老朽化配管更新と比べ初期費用の安さや導入の速さなどのメリットがある一方、維持運営費が高いため長期的にみると給水原価が上がる可能性があります。

 そこで私たちWOTAは、独自開発した水処理の自律制御技術により、使った水をその場で処理し、また使える水に戻す再生循環の仕組み(図5)を構築しました。それが、「小規模分散型水循環システム」です。このシステムは、過疎地域の上下水道の赤字構造を改善できる新たなソリューションになり得ます。(図6)

図4

図5

図6

Source総務省の決算データよりYCP SolidianceとWOTAで試算

※1 水道事業・公共下水事業の総務省の公益企業年鑑における実績値(上水2020年、公共下水2021年)。上水・下水利用における供給原価と単価を自治体規模別に集計し理論値として自治体規模別の1人当たり平均料金収入と運用費用を算出

※2 水循環システムから発生する一人当たりコスト(人口規模1~5,000人までは量産規模100万台のコスト、人口5,000人~10万人までは量産規模1,000万台のコストを適用したWOTA試算)

■利島村での「小規模分散型水循環システム」導入:島嶼地域モデル

 人口約300人、面積約4.04平方キロメートルの離島である利島村は、日本で4番目に面積が小さい自治体です。豊かな自然をたたえるこの島は、多くの魅力を持ちながらも、かねてから安定した水確保に課題があり、水飢饉を何度も経験してきました。現在では、海水淡水化装置の導入により水供給は安定化しましたが、提供価格の約14倍にもなる高額な給水原価が水道財政を圧迫しています。水不足やそれに伴う給水原価の高騰は、全国の島嶼地域にも共通する課題です。

 こうした背景を踏まえ、利島村では2023年より、「小規模分散型水循環システム」の実装を開始しました。(図7)
 全国の島嶼地域へと普及できる「島嶼地域モデル」の確立を目標に、既に開始している実証実験に加えて、村営施設への実装を行い、2040年までに財政的に持続可能な、村民が暮らしやすい水インフラの構築を目指します。


図7

愛媛県での「小規模分散型水循環システム」導入:過疎地域モデル

 四国の北西部に位置し、多島美を誇る瀬戸内海やリアス式海岸が続く宇和海、西日本最高峰の石鎚山など、豊かな自然に恵まれ愛媛県は、2060年までの人口減少率が40%超という推計があり、ほぼ全域に過疎地域を抱えています。(図8)。また「瀬戸内海気候」のため降雨が比較的少なく、また急峻な地形から降った雨がすぐに海へ流れ出てしまうなど、水資源に乏しいという特徴があり、水資源対策は県政の重要課題となっています。

 また、水道事業を取り巻く経営環境が、急速な人口減少や施設・管路の老朽化等により、厳しさを増す中、市町等と連携して水道広域化の推進に取り組むなど、様々な施策を講じています。

 こうした中、WOTA社が提唱する「小規模分散型水循環システム」は、地域が抱える水インフラの課題解決策の一つとして大いに期待され、2023年度から愛媛県の取り組みとして、今治市伊予市西予市の3市と連携し、実証を開始します。

 今回の実証を通じて、地域への実装に向けた検討を進め、県内市町村への横展開を目指すとともに、全国の過疎地域へと普及できるモデルの創出に取り組みます。

図8

●「小規模分散型水循環システム」導入について、各市長からのコメント

今治市 徳永 繁樹 市長:

今治市は、市街地、中山間地域、島嶼地域など、様々な生活環境があります。

「小規模分散型水循環システム」は、地域特性にとらわれない給排水手段となる可能性があるため、市民だけでなく、今治市への移住を検討する方々にとっても魅力的な地域づくりに、貢献することを期待し、共に実証に取り組んでまいります。

伊予市 武智 邦典 市長:

伊予市には、地形的な要因により水道整備が困難な地区があることや水源に限りがあることなどから、水道布設が難しい、あるいは、新たな観光開発が難しいといった課題があります。「小規模分散型水循環システム」は、水源に縛られること無く人々が居住することが可能と考えられ、上記課題の解決と共に、伊予市の魅力が大きく向上することを期待するものです。

西予市 管家 一夫 市長:

西予市は、広大な中山間部を持ち、簡易水道や、地域住民が独自に管理する給水施設が多く存在します。

給水施設/配管の老朽化、並びに少子高齢化が進む中山間部の集落にとって、「小規模分散型水循環システム」が、持続可能な給排水手段となることを期待し、共に実証に取り組んでまいります。

2040年までに水問題解決するロードマップ

 今回の実証の後、問題が特に深刻な地域からの展開を計画しています。

 まずはPhase1として2023年までに、給水原価が高く住民生活にまで水問題が顕在化した地域から先行的に導入を開始しています。そして、Phase 2として2030年までに、財政赤字で老朽化配管が更新しづらい地域の代替手段として全国に広げていきます。それからPhase 3として2040年には、人口密度の低い地域の標準的な水インフラとなり、次の世代が安心して使える持続可能な水インフラの確立を目指します。(図9)

図9

持続可能な水インフラを、次の世代へ

先人たちの努力により築かれてきた豊かな上下水道によって、これまで私たちの生活は支えられてきました。しかし、その上下水道はいま老朽化を迎えており、更新がままならない状態に陥り、このままでは安心安全な上下水道インフラの維持は困難となります。この課題を解決する新たな手段を導入し、持続可能な水インフラを次の世代へとつなげていくことが、いま求められています。そのためにも、自治体、民間企業、住民、メディア、多くの関係者の皆様と共に、この問題解決に挑みたいと私たちは考えています。

WOTAについて

WOTAは、水問題の構造的な解決を目指す民間企業です。2014年の創業以来、地球上の水資源の偏在・枯渇・汚染によって生じる諸問題の解決のため、生活排水を再生し最大限有効活用する「小規模分散型水循環システム」及びそれを実現する「水処理自律制御技術」を開発しています。既に、2つの製品を上市し、日本国内において全国的に活用されており、災害時の断水状況下における応急的な水利用の実現や、公衆衛生の向上に寄与して参りました。また、日常的な水利用を実現する住宅向け「小規模分散型水循環システム」の実証に成功。2023年から、国内外の自治体・政府等への導入が開始されます。

今後も研究開発とプロダクト普及を推進し、人類の持続可能な水利用のために、「小規模分散型水循環社会」の実現を目指しています。

詳細はこちら:https://wota.co.jp

※2023年6月19日 シリーズB資金調達完了リリースご参考:https://wota.co.jp/news-230619

※8/31(木)13時 集合写真、図3、図6部分を一部更新

配信元企業:WOTA株式会社

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