9月1日(金)より、劇団アンパサンド『地上の骨』が三鷹芸術文化センター星のホールで開幕する。24回目を迎える「Mitaka “Next” Selection」の1団体として選ばれたもので、アンパサンドにとっては劇団史上最大規模の公演となる。

今回の物語の舞台は会社のようだ。劇場のサイトに書かれたあらすじには「とある契約社員がいつものように忙しさに翻弄されつつお昼ご飯を口にした途端、契約社員の苦悩が具現化され、同僚たちの日常を変えてしまう」とある。ざっと読むと見落としてしまいそうになるが、気になるのは「苦悩が具現化」のところだ。

劇団アンパサンドが描く世界のはじまりはいつも、なんでもない日常の風景だ。家族と自宅で過ごす朝の時間であったり、同僚たちと仕事に勤しむ職場であったり。登場人物たちはどこかちょっとクセがあるけれども、どこかにはいそうな雰囲気の人たち。その、自然なテンションの会話についつい引き込まれていく。ちょっとした会話のニュアンスに笑いながら彼らの日常を垣間見る面白さ。しかし、その風景に次第に非現実的な展開が混ざり込んでいく。あり得ない展開に戸惑ったり立ち向かったりするそれぞれの振る舞いは、見たことのないものでありながら彼らにとっての日常の延長線上でもある。「あるある」の笑いと「ないない」の笑い。「ないない」の中の「あるある」の笑い。アンパサンドの舞台にはそんな多層的な面白さがある。今回も想像できないような形で「苦悩が具現化」するのだろう。

作・演出を務める安藤奎は、公演に向けて「いつもの劇団アンパサンドではないスケールアップした作品作りをしてしまいそうですが」「小さいことにこだわったいつもの劇団アンパサンドを皆さまにお届けできたら幸いでございます」とコメントを寄せている。これまでにない大きな舞台で見る、これまで培ってきた魅力を見せる彼らの新しい公演を楽しみにしたい。

文:釣木文恵

<公演情報>
劇団アンパサンド『地上の骨』

2023年9月1日(金)~2023年9月10日(日)
会場:東京・三鷹市芸術文化センター星のホール

作・演出:安藤奎
出演:黒田大輔 / 島田桃依 / 篠崎大悟 / 安藤輪子 / 西田麻耶 / 安藤奎

公式サイト
https://gekidanampersand.wixsite.com/mysite

劇団アンパサンド『地上の骨』チラシ