脱毛センターと聞くと、わきの下やVゾーンなどあるとまずいところの毛を永久脱毛するエステみたいなところだと、思いませんか(かつてエステでローン地獄が待っていた永久脱毛は、今の日本では、医療機関で医師の指示でしかできない法律になっている。ご存じだろうか)。韓国では違う。

 脱毛は、つまり抜け毛が多い、はっきり言えば、禿げで悩んでいる方々を指す。つまり、脱毛センターに行く人は、自発的な増毛を望んでいる人だった。びっくり。

 発毛作用のある育毛剤は、日本では水谷豊さんのCMのものがかつては唯一で、処方箋はいらないが、薬剤師の常駐する「調剤薬局」スペースで、1回の限定数があって売られていた。今は後発品も出てきたが、やはり、一番先に出たものを人は信じる…5箱買ったのに、もっと買えないんですかとすがっていた男性客を見たことがある。

 この手の育毛剤には、ミノキシジルという医薬品成分が含まれている。日本では緩和的に認められているが、韓国では化粧品に使うことができない。まずは痒みという皮膚トラブルの副作用が甚大だからだ~痒みがなくなったころに生えてきますと売る薬剤師もいなくはない。皮膚トラブルの他に、頭痛、多毛症(望む以上にボウボウになるということ)など副作用は軽くはない。

 このほどソウルにある脱毛センターが摘発された。オーナー自身の手作り。普通に育毛剤を完品として化粧品製造会社から納品させ、製品のふたを開けて、オーナーミノキシジル粉末をテキトーに入れ混ぜて、顧客に売っていたのだ。

 一応顧客ごとにオーダーメイドで、毛髪検査とカウンセリングをして10日後に手元に届くシステムにしていたが、それはフェイクであり、テキトーに混ぜただけの危険物を売っていたのだ。

 2019年7月から2022年3月までで、39億ウォン(日本円にして約4億3000万円)相当の製品4万6000個を販売している。それだけ、禿げで悩んでいる人が多かったのだろう。薬剤師がいなくても買えることで日本人も購入しているのは間違いない。

 多くの禿げ族を裏切り、危険な目に合わせたのに、このオーナーに課されるのは、最高3年以下の懲役か300万円ほどの罰金。一般化粧品の原価は100円以下と言われる(プチプラコスメともてはやされる化粧品が100均で売られていることで実証される)。4億以上儲けていていれば、300万円など屁みたいな金額だろう。

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