世論調査は世論ではないと言う石丸市長

 今、日本で全国的な注目を集めている広島県安芸高田市の石丸伸二市長は、「世論調査は世論ではない」と突っぱねている。

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 果たしてそうか。

世論調査は地元有力紙の偏向報道や誘導質問に影響を受けた回答」だから公平性を書いているというのが同市長の見解のようだ。

 米国でも共和党支持者のトランプ支持が異常なほど高いことに、「本心では支持したくない自分を偽ってか、世論調査員に偽って答えているふしがある」と指摘するジャーナリストもいる。

 こうした少数意見を押し流すように、共和党支持者の37%はトランプ被告こそ、直近の共和党大統領の中ではロナルド・レーガン第40代大統領(41%)に次いで第2番目に優れた大統領だと答えている。

(Republicans view Reagan, Trump as best recent presidents

 たかが世論調査だが、されど世論調査。世論の傾向を手っ取り早く知るには世論調査は有力な材料だ。

米有権者はバイデンもトランプも望まない

 その米世論調査どれも見ても、米有権者の過半数は2024年大統領選に立候補しているジョー・バイデン大統領ドナルド・トランプ大統領も「Unwanted Candidates」(好ましくない候補)になっている。

 それなら、別のフレッシュ候補を選べばいいのだが、それができない。

「古木」が新芽が出るのを妨害している。既成の二大政党制の弊害なのかもしれない。

 最新のAP通信・シカゴ大学世論調査によれば、民主、共和両党の支持者は、バイデン、トランプ両候補が党大統領候補として来年11月6日に立候補すればそれぞれに票を入れると答えている。

 一方で、米国民全体で2人を「好ましくない候補」としているのは、トランプが「刑事被告人」だからで15%、バイデン氏は「高齢だから」で26%だ。

 バイデン氏については、「2024年再選されても任期を全うできない」は全体で77%、共和党支持者では89%、民主党支持者でも69%に上っている。

Biden’s age is a significant concern for voters

有罪は無党派層で64%、刑務所送り51%

 トランプ被告の4つの裁判関連についての世論調査結果はどうか。

「ポリティコ・Ipsos」世論調査では、トランプ被告が有罪だとした人は全体で51%。民主党支持者では88%、共和党支持者では14%。無党派層では64%となっている。

 その結果、「刑務所に送るか」では全体で50%が「送るべきだ」と回答、民主党支持者では87%、共和党支持者では11%、無党派層では51%がトランプ被告の拘置を支持している。

 共和党支持者では拘置ではなく、執行猶予・保護観察が23%、罰金刑は19%となっている。

 トランプ問題では民主、共和両党は真っ向から対立しており、この世論調査はその傾向を如実に表したもの。

 となれば、51%がトランプ被告を「Lock him up」(監獄にぶち込め)とした無党派層の答えは極めて重い。

Lock Him Up? A New Poll Has Some Bad News for Trump

 ちなみに、2022年1月6日の米議会襲撃事件で逮捕された極右団体「プラウド・ボーイズ」の指導者、アンリッケ・タリオ被告は8月30日、米連邦地裁で禁固刑33年を科せられた。

憲法2条、修正14条の通説覆す解釈続出

 ところが、米国憲法では有罪判決を受け、刑務所に入れられても大統領選に立候補できるというのが通説になっている。

 米憲法第2条には「服役している人物は大統領選には出られない」などとは書かれていない、というのがその根拠だ。

Constitution Annotated

 ところがここにきて、この通説に反論する憲法学者や法曹家の見解が次々と公表されている。

 米連邦提訴裁判事だった保守派のJ・マイケル・ラティング氏とリベラル派のローレンス・トライブ・ハーバード大学名誉教授は、「ジ・アトランティック」に寄稿した共同論文で、こう指摘している。

「トランプ被告は2020年の大統領選挙結果を覆そうと工作し、米議会襲撃事件という事態を起こした。これは大統領にはなれない欠格条項を完全に満たすものであり、大統領を目指す選挙に立候補する資格はない」

 さらに、ペンシルバニア大学の保守派ウィリアム・バウデ、マイケル・S・ポールセン両教授は、米憲法修正第14条3項の規定によりトランプ被告の大統領選立候補の無効をこう唱えている。

「トランプは大統領就任時、憲法を支持することを宣誓した」

「にもかかわらず、憲法に反対する暴動・反乱に関与した者を激励、支援したことに鑑みれば、大統領に再度なる資格はない」

 両教授は同趣旨の論文を2024年、ペンシルバニア大学論文集に寄稿するという。

 2024年3月以降、公判が続く中で米法曹界での論議を巻き起こすことは間違いない。

The Constitutional Case for Barring Trump from the Presidency

The Fourteenth Amendment Fantasy

スーパー・チューズデー前日、ジョージア州公判のインパクト

 トランプ被告にとっては逃げ場のないジョージア州フルトン郡地裁の公判は2024年3月4日に決定した。

 共和党予備選の天王山、スーパー・チューズデーの前日だ。

 スーパー・チューズデーは、カリフォルニア(代議員数169人)、テキサス(162人)、バージニア(48人)、マサチューセッツ(40人)など16州が同時に予備選(党員集会)を行う。

 代議員総数の3分の1がこの日に決まる。

2024 Presidential Election Calendar

 その日までに代議員獲得でトランプ候補がどこまで他候補をリードしているか。していれば、この日、大量得票を得て、独占態勢に入れる。

 だが、その前日にジョージア州フルトン郡地裁の大陪審が有罪に向けた動きでも見せれば、予備選の結果は大きく変わりうる。

 それでなくともトランプ弁護団は、4つのすべての公判を大統領選挙後に開始するよう要求している。

 その一方で、ジョージア州地裁でトランプ被告とともに審判を待っている被告の一人、ケネス・チェセブロ被告(ジョージア州の弁護士)が早期判決を望んで、スコット・マカフィー判事は10月23日の審理開始を認めた。

 同被告の裏切りか。「俺は他の被告とは違う」と司法取引に出る構えなのか。いずれにせよ、トランプ陣営には綻びが出てきた。

バイデンに対する日本の信頼度は73%

 一方、「高齢問題」を抱えるバイデン氏は、1期目の外交内政での業績を前面に打ち出し、「年齢よりも実績・経験」を有権者に訴えている。

 確かに、外交面ではトランプ政権時の同盟国・友好国の対米信頼度はひどかった。バイデン政権はそれを改善させてきた。

 世界23か国を対象としたピュー・リサーチ調査ではその事実が数字で示された。

 トランプ政権に対する信頼度は20%前後だったのが、バイデン政権では50%を超えた。

 ちなみに主要同盟国・パートナーの信頼度はバイデン政権では以下の通りだ(カッコ内はトランプ政権時の信頼度)。

日本:73%(25%)

韓国:79%(11%)

インド:56%(30%)

英国:59%(19%)

International Views of Biden and U.S. Largely Positive

ハリス大統領なんか、想像できますか!

 だが、外交では票にならない。

 日韓では「歴史的な合意」とされた日韓米首脳会談の制度化について知っている共和党大統領候補は何人いるだろうか。

 共和党は、バイデン氏の続投を見越して次男ハンター氏疑惑やバイデン氏の副大統領時の不正容疑を追及しようとしているが、主流メディアは乗ってこない。

 そうした中で、先の候補者討論会で存在感を示したニッキー・ヘイリー元国連大使(元ノースカロライナ州知事)が「バイデン再選後のシナリオ」を描いて有権者に警鐘を鳴らし出した。

バイデン大統領が再選されたとして、第2期を全うするとは思えない。その時はカマラ・ハリス大統領大統領に昇格する」

「(支持率も低く、実績なしの)ハリス氏が大統領になったら、この国はどうなるのか、想像できるだろうか」

What Happens if Biden and Harris Both Decide Not To Run In 2024?

 ちなみに、本選挙でハリス氏とヘイリー氏が直接対決した場合どうなるか。ハーバード大学・ハリス調査では38対43(3月)、41対38(5月)と互角だ。

General_election_haley_vs_harris

バイデン離脱すればニューサム急遽登場か

 こうした危惧の念について民主党選挙戦略担当者の一人、バン・ジョーンズ氏は、CNN とのインタビューでこうコメントしている。

「これはトリッキーな質問だ。確かに民主党内でもバイデン大統領の年齢について懸念する声はある。ただ、みんな公けの場では話したがらない」

 政治サイト「ザ・メッセンジャー」のダグラス・マッケノン氏は、こう見ている。

バイデン氏が立候補を取りやめ、ハリス氏も同調して立候補しなくなった場合、どうなるか」

「立候補しているロバートケネディジュニア民主党大統領候補に選ぶ? いや、彼を選ぶくらいなら割れたガラスを食べた方が(Rather eat broken glass=党大統領候補指名を諦めたりするような行為)ましだ」

「誰かを選ぶとしたらカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏か、もし出てくればミシェルオバマ大統領夫人か」

「あるいは、2020年大統領選に立候補した連中がまたぞろ出てくるのを期待するしかない」

What Happens if Biden and Harris Both Decide Not To Run In 2024?

 いずれにせよ、2024年に次期大統領を決めるイベントと並行してトランプ問題を裁く公判がある。

 しかも、ジョージア州フルトン郡地裁でトランプ被告を起訴したウィルス郡地区検事の父親は、かつて黒人過激派グループ「ブラックパンサー」のメンバー(弁護士)の一人。

 フロリダ州フルトン郡の黒人住民の一人はこう述べている。

「権力をほしいままにしてきたトランプ前大統領を裁くのが黒人女性なんて。こんな誇らしいことはない」

 米国がもはや「白人万能国家」ではなくなった一つ証左である。

Trump-georgia-motorcade-fulton-jail

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