日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 大ヒット「サメ映画」の第2弾が登場! 老人の復讐計画に巻き込まれた若いドライバーの運命は?

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『MEG ザ・モンスターズ2』

評点:★2点(5点満点)

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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巨大海洋モンスターの大バトルを楽しむコツは一つだけ!

突っ込みどころ満載」という言葉は好きではないし、芯のしっかりした映画はつまらない「突っ込み」をものともしないパワフルさを備えているものだ。

本作ではとてつもない深海に生息していた古代の超巨大サメ「メガロドン」が海面まで上昇してきて人間を襲う。一種の「ロスト・ワールド」的なアイディアで、モンスター映画の常道でもあるので、それは構わない(水圧について考えなければ)。

主人公は人間が一瞬で押しつぶされて消えてなくなるほどの深海に生身で出ていくが、ヒーローが常人には想像のつかない能力を発揮することはよくあるので、それも構わない(水圧について考えなければ)。

さらにメガロドン以外にも超深海に生息していた謎のクリーチャーどもがビーチに上がってきて人間を襲うのだが、サメ以外のもっと別のサイズのモンスターも見たいし、巨大生物同士のバトルというのはいつ見ても血沸き肉躍るものであり、なかなかサービス精神も行き届いている(水圧について考えなければ)。

というわけで本作を楽しむコツはただ一つ、「水圧のことを考えない」ということだけなので、それだけ注意して夏の海洋モンスター大バトルを堪能しよう!

STORY:潜水レスキューのジョナス・テイラーは海洋調査のため人類未踏の約10㎞の深海へと向かう。だが、そこは生態系の頂点に君臨する巨大ザメ「メガロドン」、通称「MEG(メグ)」の群れとさらなる巨大生物のすみかだった!

監督:ベン・ウィートリー
出演:ジェイソン・ステイサム、ウー・ジン、ソフィア・ツァイ、ペイジ・ケネディほか
上映時間:116

全国公開中

『復讐の記憶』

評点:★4点(5点満点)

©2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & MOONLIGHT FILM ALL RIGHTS RESERVED.
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社会性をうまく取り込んだパワフルなエンターテインメント

アルツハイマーが進行中の老人が、過去に自分と家族の人生を台無しにした憎い相手を一人ずつ殺すことを決意し、実行に移す復讐の物語である。

黒澤明監督作品『生きる』の復讐版、と言ってもよい(その場合『生きる』ではなく『殺す』という題名になるのだろうが)。主人公の老人を演じたイ・ソンミン(ご本人はまだ50代とのことで、老人に見えるのは特殊メイクアップ効果)が、時折『生きる』の志村喬(たかし)に見える瞬間もある。

本作は一種のバディものでもあって、そうと知らずに復讐行脚のドライバーを務めることになる若者(ナム・ジュヒョク)との年齢差を超えた友情も熱い。

主人公の記憶力が衰えていること、殺人がうまくいくかどうか、警察の目をどうやってかいくぐるかなどなど、サスペンス要素も盛りだくさんで非常にエンターテインメント性の高い作品でありながら、しっかりソーシャル・コメンタリーが込められているのも良い――何といっても復讐の背景にあるのは、かつての大日本帝国による植民地支配がもたらした悲劇なのである。

戦争や植民地支配といった巨大な奔流を前に、人はどう生きるべきなのか。その問いは主人公自身にも突きつけられるのだ。

STORY:アルツハイマー病を発症した老人ピルジュは家族を死に追いやった"裏切り者"への復讐に動き出す。彼から1週間の車の運転を頼まれた20代のインギュだったが、予期せぬ形でピルジュの復讐の計画に巻き込まれてしまう。

監督・脚本:イ・イルヒョン
出演:イ・ソンミン、ナム・ジュヒョク、ソン・ヨンチャンほか
上映時間:128分

シネマート新宿ほか全国順次公開中

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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【写真】『復讐の記憶』のレビューにも注目!

高橋ヨシキが映画『MEG ザ・モンスターズ2』と『復讐の記憶』をレビュー!