DMM TVのオリジナル企画「2.5次元的世界」新作として、俳優の立石俊樹と佐奈宏紀が声のみで演じる“言劇ミュージカル”『天使のはかりごと』が、9月1日(金)20時より配信開始となる。「MANKAI STAGE『A3!』」シリーズなど数多くの2.5次元作品を手掛ける松崎史也が脚本・演出を担当する本作は、人間界のバランスを保つ役目を与えられた2人の天使の物語。今回、天使の“先輩”と“後輩”を演じる立石と佐奈にインタビューを行い、作品の聴きどころや収録秘話、ミュージカル黒執事』で共演歴のある2人の関係、彼らが感じるミュージカル2.5次元作品の魅力などを聞いた。

【撮りおろし全15枚】顎ピースと笑顔がチャーミングな立石俊樹と佐奈宏紀

■衝撃的なラストとダブルミーニングに注目

――本作『天使のはかりごと』は、人間の運命を調整する任務を持つ天使の物語。松崎史也さんによるオリジナル脚本です。ハートフルかと思いきや、かなりヘビーなストーリーですが、お2人が台本を読まれたときの感想はいかがでしたか?

佐奈宏紀 「一本取られたわ~!」って感じでした。悔しかった。

立石俊樹 まさかのラストでしたね。

佐奈 最初、素直に物語を読んでいて、それだけでも十分な満足感だったところを、最後にグサッと刺されて…視聴者の方にも同じように素直に聴いてほしいので、ネタバレになることは言えないんですけど!衝撃的なラストです。

立石 一度聴いた後、結末を踏まえてもう一度聴くと、聴こえ方が変わると思います。

――途中で一度驚いて、最後でもう一段階びっくりしますよね。

佐奈 そうなんです。あと、タイトルの意味に気づいてゾッとしました。「そういうこと!?怖っ!!」って。

立石 ダブルミーニングの仕掛けがあるよね。

ミュージカル黒執事』ぶりの共演、役柄に新鮮さ感じる

――“言劇”は普段の舞台とは違い、声だけの演技となりますが、その点はいかがでしたか?

立石 僕は声だけの演技って、今までは朗読劇くらいで。今回はミュージカルでもあるということで、新しい挑戦だったけど、佐奈ちゃんとやれて楽しかった。

佐奈 声だけで掛け合うのって、舞台稽古の最初にやる本読みに似てるなと思いました。でも、ブースに入って収録するのは新鮮でした。あと、セリフの一部分だけを録り直すときに、自分の中で前後を把握しながら一言だけ読むというのがチャレンジでしたね。

――確かに、舞台はずっと流れがありますもんね。

佐奈 一言だけだと、流れでやったときとテンションが違っちゃったりして。

立石 ちょっと強くしてみようと思って演じたら、逆に強くなりすぎちゃったり。そこは難しかったです。

――お2人は、本作でも脚本を手掛けた松崎さんが演出の『ミュージカル黒執事」〜寄宿学校の秘密〜 』(2021年)以来の共演となりますが、初めての2人芝居はいかがでしたか?また、立石さんはクールな“先輩”役、佐奈さんはそんな先輩を慕うかわいい“後輩”役ですが、配役についてもお聞かせください。

立石 『黒執事』では、直接の掛け合いはなかったんですよ。舞台上では会話してないんじゃないかな。

佐奈 『黒執事』は稽古場の前の席が俊くん(立石)で。いつもくるっと振り向いて「何してんの?何食べてんの?」「今日もかわいいね」(立石のモノマネ)って言われて (笑)。

黒執事」でしかお互いの演技を間近で見ていないから、今回のキャスティングは新鮮でした。共演できて嬉しかったし、「俊くんってこういう役やるんだ!」と思いました。

立石 確かに、『黒執事』と全然違う関係性だから、ギャップが意外で新鮮だったかも。

佐奈 僕は初め、勝手に自分が“先輩”役だと思ってたんですよ。(立石は)天然でかわいらしい一面があるので“後輩”かなと…今日も収録ブースの扉がずーっと開けられなくて(笑)。「開け方こうだよ」って言うと「ああ、そうだった」って言って、また開けられないのを4、5回やってて。かわいいなあと (笑)。

立石 3歳違いますけどね(笑)。

――立石さんから見て、共演したときの佐奈さんの印象はどうでしたか?

立石 佐奈ちゃんは、本読みのときから仕上がっててすごいなと思ってました。あと、佐奈ちゃんのアドリブに稽古場でみんな笑ってましたね。

佐奈 たまに松崎さんだけ笑ってないときがあるんですよ(笑)。そのときは「みんな笑わないで!笑われるともっとやりたくなっちゃうから!」って思ってました。

■転生するなら?「ワンちゃん」「朝倉未来

――作中で、天使は任務を果たすと人間に転生できるという設定ですが、お2人は転生するなら何になりたいですか?

立石 僕はワンちゃんになりたいですね。しっかりかわいがってもらって、お散歩とかも連れてってもらえる、愛されてるワンちゃんの人生を歩んでみたいです。

佐奈 僕は…朝倉未来さんになりたいです。

立石 (笑)。

佐奈 僕、小さい頃の夢が「最強になること」だったので。とにかく最強の称号を手に入れたい。範馬勇次郎でもいいんですけど。最近ちょっとガタイもよくなってきてますし。

立石 鍛えてるの?

佐奈 いや、こんなに筋肉つくはずじゃなかったんだけど、想定よりどんどんムキムキになってきちゃって(笑)。すごく筋肉がつきやすいらしいんですよ。トレーナーさんに「1000年に一人の逸材だから、こっちの世界に来ないか?」って誘われてます。ボディビルダーに転生するかもしれません(笑)。

――(笑)。本作はミュージカルということで、歌唱もあるそうですが、歌についてはどうですか?

立石 浅井さやかさんとテニミュ以来、久しぶりにご一緒できて。歌録りはこれからなんですけど、収録が楽しみです。

佐奈 すごくいい曲で最高です。意外だったのは、僕の上パートが多かったことですね。わりと声が低くて、ミュージカルでも下ハモを任されることが多いので…聴いて下さる方にも、この肉体から奏でられる繊細な高音を味わってもらえたら。

立石 (笑)。普段のナンバーで出さない声が聴けると思いますし、先にお芝居のパートを全部録ったので、歌にもその表現を乗せていけるかなと思います。

――お2人は音楽活動歴もありますが、キャラクターとしてミュージカルで歌う時ならではの特に意識する点はありますか?

佐奈 ミュージカルの歌は物語なので、感情を素直に乗せる。自分で作った曲を歌うときはそんなに劇的な感じではなくて、もっと自然なので…意識しなくても、全然違うものですね。ミュージカルで歌うときは、完全にセリフの流れで歌っています。

立石 僕も、ミュージカルはセリフだと思って歌っているので、発声もそうなりますね。ポップスは自由に音楽を楽しむ。どっちもよさがあって、どっちも好きです。

愛についても描かれる物語。2人が愛しているものは?

――『天使のはかりごと』は、愛もひとつのキーワードになっていますが、お2人が今愛しているものは何ですか?

佐奈 妻と子供です。

立石 いたのか!(笑)

佐奈 いないいない(笑)。こういうのネットで本気にされるから!冗談です。愛してるもの…いっぱいありますけど、一番はやっぱり、応援して下さるファンの皆様ですかね!(キメ顔)そしてスタッフの皆様!共演してくれるみんな!

立石 胡散臭い!(笑)

――すごくいいこと言ってるのに(笑)。

立石 それはもちろん前提として、僕が愛してるものは…。

佐奈 リップクリームじゃないの?俊くん、5分に1回くらいリップ塗り直すんですよ。唇にだけ豪雨が降り注いだのかと思う。

立石 僕の場合、唇が乾くと滑舌にも影響するんですよ!

佐奈 俊くんの愛してるものはリップクリームです。

立石 そういうことにしておきます…もう少しちゃんとしたこと言った方がいいですか?(笑)

――お願いします(笑)。

立石 僕が愛しているものはミュージカルです!だから今回も“言劇”という形でミュージカルに関われて、とてもうれしいです。

――素敵なコメントありがとうございます。では、お2人が思う、ミュージカルならではの楽しさはどんなところですか?

佐奈 僕は感情を素直に爆発させられることです。台詞だけのお芝居だと、例えばブチギレてるときでも100%の怒りは出せなくて、演技ではあえて鎮めないといけない。でも歌ならそのまま全部の感情を乗せていいし、そういう構成になっているから、演じてて気持ちいい。泣きたいときに泣けるし、愛を叫びたいときに叫べる。我慢しなくていいのが楽しいです。

立石 ミュージカルって、お芝居に加えて歌やダンス、いろんな表現をミックスしてひとつの作品として届けられることが、表現の集大成という感じがして僕は好きです。感情を爆発させたり、誇張した表現も良しとされて、劇的なものを思いっきり届けられるのが楽しいです。

2.5次元ならではのやりがいと、エゴサ事情

――お2人は様々な2.5次元作品に出演しつつ、原作のないオリジナル作品でもご活躍されています。演じる上で、2.5次元ならではの面白さはどんなところに感じますか?

立石 2.5次元の面白さは、ミュージカルの好きなところにも通じるんですけど、歌やダンスなどいろんな要素があるところ。あと、お客さんと作品の設定が共有されているから、そこから外れちゃいけないけど、その縛りが作品に更なる面白さを生むということもあって。見た目や声などの制約が多い難しさはもちろんありますが、それをきちんと再現できて、かつそこに僕のリアルな感情が乗ってきたときにすごく面白さを感じます。最初の頃はキャラクターをなぞることしかできなかったのが、自分の真ん中で役をとらえられたときに面白さが出てくる。自分の強みを生かしつつ、新しい自分を発見できるというよさがあります。

佐奈 自分の好きな作品が肉体を持って動いているというのが最高ですよね。『黒執事』も『犬夜叉』もミュージカル『テニスの王子様』も…「僕が!?スゲー!」って、それだけで楽しい。同時に原作を好きな方がたくさんいるので、それをぶち壊すわけにいかないプレッシャーもありますけど。あと、原作を見ながら照らし合わせて、自分に置き換えて役作りをするのが、すごくロジカルな楽しさがあります。そこに少し自分らしさも混ぜてみたものを、観に来てくれたお客さん、僕と同じように原作ファンの方から「キャラそのものだった!佐奈くんが演じてくれてよかった!」って褒めてもらえたときの嬉しさは尋常じゃないです。僕、エゴサ(自分の名前で検索)するタイプなんで (笑)。

――(笑)。

佐奈 僕が気づかなかった視点の感想を見て、「そういう見方もあるんだ!じゃあこうしてみようかな?」ってちょっと変えてみたり。物理的に、観に来てくださる方と一緒に作り上げていくような面白さがあります。

――エゴサって、積極的にされる俳優さんと、演技がブレるからあえてしないという俳優さん、どちらもいらっしゃいますよね。立石さんは、エゴサはされますか?

立石 僕は逆にすごく気にしちゃうタイプなので、見ないようにしてますね。昔はしてたときもあるんですけど、「このシーンでこう言われてたからこうしよう」って雑念が入っちゃうのが嫌で。それなら自分の中の、役としての感情にフォーカスしてやっていこうと思いました。

佐奈 わかる、僕も見たくない感想もあるよ!(笑) でも、そういうのが図星だったりするんですよね(笑)。

――最後に、『天使のはかりごと』の配信を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。

立石 ミュージカルが大好きな自分としても、新しい挑戦ができましたし、耳だけで聴いて世界を想像するというのが、聴いて下さる方にとってより身近なものになるんじゃないかと思いました。僕自身、収録で佐奈ちゃんの声を聞いて“後輩”像をその瞬間に組み立てながら世界に入っていったんですけど、視覚がないからこその没入感があって、楽しんでもらえる作品になっていると思います。

佐奈 “言劇ミュージカル”は、皆さんの自由な想像力で楽しめる作品です。普通の舞台はセットがあるけど、今回は好きに考えられるし、僕ら“先輩”と“後輩”の見た目も衣装も、聴いてくれる方が好きに決めていい。皆さんが最後のピースをはめるという楽しさがあります。そして松崎さんが書く物語は深いので、劇中で迫られる選択について自分だったらどうするか考えながら、天使2人の行く末を聴き届けてもらえたらと思います!そして、よろしければ感想をSNSに書いてください!!見に行きます!

■取材・文/WEBザテレビジョン編集部

撮影/友野雄

衣装(立石俊樹)/シューズ 58300円 (Tools And Construction./ロケット・ステュディオ)

立石俊樹(左)と佐奈宏紀(右)/撮影=友野雄