不動産投資を行う場合、節税の効果と賃料収入額を大きくする目的で「不動産ローン」を借りることが多くなっていますが、固定金利と変動金利ではどちらを選ぶべきでしょうか。YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」で不動産投資の初心者向けに情報発信をしている滝島一統氏の著書『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール 罠を見抜いてお金を増やす』(KADOKAWA)から一部抜粋して紹介します。

ローンは「返済能力」があるほど低利で借りられる

不動産投資物件、つまり収益物件を購入するときのローンは、住宅ローンより金利は高くなります。特徴は、借りる人の属性によって異なり、かなり幅があることです。基本的に不動産融資は金利2%以上がほとんどですが(2023年夏現在)、資産が多い人では1%以下で借りられる例もあります。

逆に資産が多くなく、銀行とも取引がない場合では、3〜4%台になることも珍しくありません。資産家は別として、初めて不動産投資する人、取引先の銀行以外で借りる人は、いい金利で借りるのは難しく、むしろ、「借りられるだけでもいい」と思った方がいいでしょう。

不動産投資のための資金を2%台で借りられるのは、かなり低い水準です。私はマレーシアフィリピンでも仕事をしていますが、両国では住宅ローンが6%程度(2023年現在)で、不動産投資用ローンでさえ2〜3%という日本の金利は破格です。

日本も高度成長期には住宅ローンの金利が8%ほどでした。ちなみにフィリピンのマイカーローンは20%ですが、それでも車の販売は好調です。経済が伸びている証左です。

変動金利は「上昇」の可能性に注意

ローンは変動金利型で借りる方が多いですが、金利上昇が見込まれる時期には固定金利型を検討するのもいいと思います。低金利時に固定型で借りておけば、低金利のメリットが完済時まで続きますし、金利上昇によって返済額が増えることを心配しなくて済みます。返済額が一定なら、先々の収支が計算しやすいという利点もあります。

投資用ワンルームの業者をはじめ、住宅を売りたい不動産会社の中には、「固定型と変動型は金利決定の仕組みが異なるので、固定型が上がっても、変動型は上がりません」などと説明しているところもあります。

しかし、変動金利が上がらない保証など、どこにもありません。特に変動金利は金融政策の影響を受けやすく、日本銀行の金融政策いかんでは、ある程度上昇することも考えておく必要があります。

変動金利型に潜む「未払い利息」のリスク

変動金利型には、「未払い利息」というリスクがあります。

ごく一部の金融機関を除き、変動金利型には、「返済額を25%までしか増やさない」というルールがあります。たとえば毎月の返済が10万円で、金利上昇によって13万円になるとしても、最大で12万5,000円(10万円の25%増)までしか上がりません。

負担が抑えられていいようにみえますが、大間違い。返済した額からはまず利息が引かれ、残りが元金の返済に回るため、金利が上がれば元金の返済に回る分が少なくなります。つまり、普通に返済していても、元金が減るペースが鈍ってしまうのです。

返済額が25%増になるだけでもかなりのダメージですが、そのうえ元金が減りにくくなる。さらに金利の上がり方によっては残債がまったく減らない可能性もありますし、最悪の場合、利息さえ払いきれない(未払い利息が発生する)可能性もあります。

もし未払い利息が発生すると、返済期間終了時に、残りの元金と未払い利息を一括で返済するように請求されます。これは住宅ローンも同じです。

住宅ローンを返済中の方でも、ほとんどがこのルールを知りません。銀行から毎年、償還予定表が送付され、そこにローンの残債額が記載されていますが、見ていない人も多いようです。

日本では、長い間金利が上がらなかったので、知らなくても問題ありませんでしたが、これからはそうもいかなくなりそうです。変動型のリスクをしっかり理解し、変動型と固定型のどちらを選ぶか、慎重に検討する必要があります。また金利が上がれば返済額が増え、借入可能額にも影響すると考えられます。

滝島 一統

株式会社光文堂インターナショナル

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)