舞台『ヒプノシスマイク』(通称:ヒプステ)の全ディビジョン集合ライブ公演「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』 Rule the Stage -Battle of Pride 2023-」(以下BoP)が9月3日(日)より開幕する。今作をラストにキャストの卒業が発表され、ファンからは別れを惜しむ声が上がっている。この度、ヨコハマディビジョン“MAD TRIGGER CREW”より、碧棺 左馬刻を演じる阿部顕嵐、入間 銃兎を演じる水江建太、毒島 メイソン 理鶯を演じるバーンズ勇気に独占インタビューを実施。BoPに向けた意気込み、逆境だったというtrack.1から4年間演じ続けてきたヨコハマディビジョンの関係性、そしてヒプステへの思いを語ってもらった。

【写真全10枚】2019年上演のtrack.1で初登場した“MAD TRIGGER CREW”

ヨコハマは「強い、悪い、セクシー」

──皆さんは track.1からヨコハマディビジョンを演じていますが、「“MAD TRIGGER CREW”はどういうディビジョンだと思いますか?」と聞かれたら何と答えますか?

バーンズ勇気 “強い、悪い、セクシー”かな。

水江建太 分かる。

阿部顕嵐 色気があるよね。あとはギャップも一番あると思う。クールかつかわいいのもヨコハマで。

バーンズ そうそう。ラップをし始めたらめちゃめちゃクール。ほかにもクールなディビジョンはあるけど、違うクールさというか。

阿部 3人の曲だと、かわいい曲とか明るい曲ってほとんどないもんね。

水江 確かにないね。

バーンズ ダークな曲か、もしくはちょっとチルな感じか。

阿部 そうそう、海を感じるものかダークなもの。あと、声のバランスが良いと思うんですよ。ハイ・ロー・ミッドで、聴いていて飽きない。

水江 確かに。

──以前のインタビューで阿部さんは「ヨコハマの3人は背中を預け合っている」とおっしゃっていましたね。

バーンズ そんなこと言ってたの!? めっちゃカッコいいんだけど!

阿部 イケブクロは真ん中を3人で見ている感じがしていて、俺らは反対かなって。で、シブヤは肩を組んでいるようなイメージ。

水江 分かる、分かる!

バーンズ 本当そうだね。感動しちゃった。さすが。

■逆境だったtrack.1

──最初「ヒプノシスマイク」が舞台化して、ご自身が演じると決まったときはどう感じましたか?

バーンズ 俺は “2.5次元舞台” というジャンルでお芝居をするのが初めてだったので、まずは「どうやって動くの?」から始まって、さらにラップして、ダンスして……って大変そうだなと思った覚えがあります。

阿部 track.1のとき、最初はダンスもいろいろ作っていたんですけど、よりキャラクターらしさを追求するために、ダンスを減らしたりもして。あれは一番大変だった。

水江 そうだね。

バーンズ 最初は結構ちゃんと振りも入れてたもんね。でも千秋楽では、今までは踊っていなかったところで踊ったんだよね。

水江 皆でやり遂げた感じがあったよね。当時、そもそも「ヒプノシスマイク」を舞台化することに対しての反対の声もあって。そういう経験は僕自身初めてだったし、始まりは逆境だったという印象があります。

阿部 でも口コミが広がって、最後の数日は当日券にみんなが並んでくれるようになって。それがすごくうれしかったことを覚えています。カンパニーのみんなで状況を共有していたので「やっと伝わってきたな」と、どんどん広がっていくのを実感できたのも楽しかったですね。

■思い出すのはオモシロハプニングや、阿部によるイタズラ

──その結果、2023年まで続く大きなコンテンツになりました。この4年間で特に印象的だった出来事を挙げるなら何でしょうか?

水江 track.1はすごく印象的だったし、毎回千秋楽では感動するんだけど……ふと思い出すのは誰かのポンコツエピソードとかになるよね(笑)。

バーンズ そうなんだよね〜。

水江 track.1で勇気くんが……。

バーンズ 俺? あっ、俺が噛んじゃったやつか!

阿部 あれは歴代ナンバーワン!(笑)

バーンズ 次の曲までのフォーエイト(8カウント×4)内ですべてセリフを吐くところがあったんですけど、1回噛んじゃって。そしたらそこから3回連続で噛んで、結局セリフを言えないまま次の曲が始まっちゃったんです。

阿部 僕らは大爆笑してたけど、勇気くんは落ち込んでて。でも本気でやっていたのをみんながわかっていたから誰も責めなかったし、むしろオモロかった(笑)

水江 あれは面白かったよね。

──4年間の一番の思い出が面白いエピソードだというのが素敵ですね。

バーンズ 本当ですね。

水江 「背中を預け合っている」とか言っているけど、顕嵐はイタズラも多いですからね。

バーンズ 毎回、笑いを我慢するのが本当にキツイ!(笑)

水江 ね。「何するんだよ!」と思って(笑)。

──遊び心を入れて、舞台を楽しんでいるんですね。

阿部 そうです。

水江 「そうです」じゃねぇよ!(笑)

バーンズ マジなこと言うと、声出しが解禁された『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage《Fling Posse VS MAD TRIGGER CREW》』は印象的でした。声出し解禁になってみんなの声を聴いた瞬間はやばかったです。ヒプマイに限らず、どの作品でもやっぱり応援の声ってめっちゃ力になるんだなと明確にわかった瞬間でした。

水江 そうだね。

■これだけ全員が信頼し合える現場はない

──皆さんにとって『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage』や、このカンパニーはどのような存在ですか?

阿部 リスペクトし合えるカンパニーです。リスペクトし合えるけど、常にライバルみたいな感覚もあって特殊なんですよね。かつ安心感もある。でも芝居もダンスもラップもあるから、真剣にやっていますよ。すぐふざけちゃうけど(笑)。

水江 僕にとっては、自分が知らないカッコ良さを見つけられる場所。カンパニーのみんなとひさしぶりに会うとすごく発見があるし、刺激のもらえる特別な場所だなって。アーティスト面でももちろん、人としてもカッコいいなと思える人たちが集まっている場所です。

バーンズ 表現の仕方が上手な人たちしかいないんですよね、“D.D.B”も含めて。だから刺激になるし、それでいて新しい自分も見つけられる場所。「俺、こういう表現もできるんだ」とか「こういう動き方をしてもいけるんだ」とか。刺激をもらって、ちょっとずつ変わっていく自分も楽しめる現場です。

──カンパニーの話で言うと、植木さんの演出はいかがでしたか? 特に印象的だったものなどがあれば教えてください。

バーンズ 芝居に対して、リアルを探している感じがするんです。「お前、普段はこういうときもっと熱くなるよね?」みたいなことをよく言われて。豪さん自身がプレイヤーだから、プレイヤー目線の演出だと感じます。

水江 豪さんは本当に天才。僕は「尊敬している人はいますか?」と聞かれたら、間違いなく豪さんの名前を挙げます。ヒプステを卒業することが寂しいという気持ちの中には、豪さんの演出を受けられなくなるという寂しさもある。だからまた今後どこかでご一緒できたらいいなと思うし、今後も豪さんの作る作品にずっと触れていきたいです。

バーンズ 《Fling Posse VS MAD TRIGGER CREW》での左馬刻と乱数(飴村 乱数 / 演・安井謙太郎)が無音でラップするところとかすごかったよね。トラックなしで語りラップをするのって、超アンダーグラウンドヒップホップにはあるんですけど、それをこういうものに落とし込んでくる豪さんはすげぇなって思いました。あのシーン、めっちゃ好きだったなぁ。

水江 カッコよかった。でもあれは役者スキルも高かったからこそ成り立ったシーンだよね。

阿部 いや〜、うれしいです。4年間やらせてもらったおかげですね。僕も豪くんに対してはリスペクトしかないです。プレイヤーだからこその演出はもちろんあるし、あとは稽古から本番まで僕らが楽しみながらできるように場を整えてくれるんですよ。例えば20時に終わる予定で組まれた稽古が17時くらいに終わったり。みんなで要領良くやって、パッと終わらせてくれる。そこも信頼しあっているからできることなんだろうなと思います。これだけ全員が信頼し合える現場はないんじゃないかな。だからこそ、ヒプステがここまで大きくなったんだろうし、みんながずっと楽しくできているんじゃないかなと思います。

■4年間やってきたすべてをBoPにぶつける

──9月3日(日)からはいよいよ全ディビジョンが集結する「Battle of Pride 2023」が始まります。直前に控えた現在、どのような心境ですか?

阿部 今回は出演する人数もかなり多いですが、ヨコハマディビジョンとして爪痕を残したいなと思っています。ま、絶対に残せるんですけど。

バーンズ 爪痕はもちろん、今までやってきたものを全部出したいですね。ヨコハマディビジョンはやりながらチームを作ってきた感じもあるので、「最終的にこれだけいいチームになったんだぞ」じゃないけど、そういうものを、感謝の思いと共にぶつけられたらいいなと思っています。

水江 そうですね。何よりもこのメンバーで立つ最後のステージになると思うので、まずは僕らが後悔ないくらい楽しめたらと思っています。

バーンズ 会場のぴあアリーナは横浜だしね!

──“MAD TRIGGER CREW”にとってはホームタウンですね。

バーンズ はい。なんかうれしいですよね。

──「Battle of Pride」はライブを中心にしたステージですが、ライブだからこそ楽しみにしていることなどはありますか?

阿部 今回も面白い煽りはしたいです。面白い、かつ遊び心があって、お客さんもしっかり盛り上がれるようなものを。

バーンズ 今回声出しオッケーだから、お客さんの声をアリーナで聞けるっていうのが何よりも楽しみだな。

水江 そうだね。たくさん聞かせてほしいね。

■最後は全力で楽しんで、ありがとうを伝えたい

──そして「Battle of Pride 2023」で卒業となりますが、最後に卒業に向けての思いを聞かせてください。

バーンズ 正直な気持ちを言うと、やっぱり寂しいです。スタッフさんも含めて最高なメンツしかいなくてすごく楽しい現場なので。最後はここまでやってきた、「俺の“毒島 メイソン 理鶯”」を思いっきりみんなに届けたいと思っています。全てを出し切ります!

水江 僕も「寂しい」の一言になっちゃいますね。track.1から続けてきたので思い入れもありますし。お客さんも同じ気持ちだと思うんですよね。だからBoPでは僕らがすごく楽しむことが、感謝を伝える上で一番大事かなと思うので、全力で楽しんで、いろんな人にありがとうと伝えられたらと思っています。

阿部 もちろん卒業に対する気持ちもありますけど、僕個人としては結構フラットな気持ちです。いつも通りやるだけ。だけどお客さんからは、僕らの背後に4年分の積み重ねが見えると思うので、それを感じてもらいたいですね。普通に生きていたらこんなカッコいい人と出会わないだろうなと思うくらいカッコいい人たちしかいない現場だからこそ、リスペクトと反骨精神にあふれた、ヒップホップ魂の塊のカッコいい俺らを見に来てほしいです。

バーンズ カッコ良! 今の顕嵐のコメント、俺が言ったことにしてください(笑)。

■取材・文/小林千絵

2021年上演のtrack.4での“MAD TRIGGER CREW”/(C)『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage製作委員会