舞台『ヒプノシスマイク』(通称:ヒプステ)の全ディビジョン集合ライブ公演「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Battle of Pride 2023-」(以下BoP)が9月3日(日)より開幕する。今作をラストにキャストの卒業が発表され、ファンからは別れを惜しむ声が上がっている。この度、オオサカ・ディビジョンどついたれ本舗”より、白膠木 簓を演じる荒牧慶彦、躑躅森 盧笙を演じる里中将道、天谷奴 零を演じる郷本直也に独占インタビューを実施。BoPに向けた意気込み、track.3のオオサカ初登場から今に至るチームの変化、そしてヒプステへの思いを語ってもらった。

【撮りおろし全9枚】白膠木 簓を演じる荒牧慶彦のクールなソロショット

■1万人の観客に囲まれるアリーナは宇宙のよう

──「Battle of Pride 2023」直前ですが、現在の心境を教えてください。

荒牧慶彦 とにかくお客さんと一緒に楽しみたいですね。《Rep LIVE side D.H》を経て、お客さんの声があるとこんなに楽しいんだということを改めて感じられたし、当日は《Rep LIVE》を経てスケールアップしたであろうヒプステメンバーが揃っているので、よりすごい熱気が生まれるんだろうなと。それが楽しみです。

里中将道 本当にその通りで。最後なので楽しいライブにしたいなというのが一番ですね。僕たちだけじゃなくて、出演するみんなで良いライブができたらいいなと思います。

郷本直也 全ディビジョンが揃うし、お祭り感みたいなものはあるよね、きっと。1万人くらいのお客さんがいる真ん中で歌う感覚ってどんななの

──郷本さんは、今回が初めての「Battle of Pride」ですもんね。

郷本 そうなんですよ。

里中 いや、すごいですよ。

荒牧 ぴあアリーナ、本当に大きいからね。

里中 お客さんが星に見えます。まるで宇宙にいるような(笑)。

郷本 よく「夢のような時間」とか言うけど、まさになんだね。……なんか、俺がインタビュアーみたいになっちゃった(笑)。僕の今の心境は、初めてなので全てにドキドキしているけど、ワクワクもしているという感じです。

■MCの漫才ネタを絞り出す楽屋

──「Battle of Pride」はライブ公演となりますが、ライブならではの楽しみはありますか?

郷本 オオサカっぽいのはあれだよね。この間の《Rep LIVE》もそうだったけど、よりアドリブが出せること。

里中 そうですね。

荒牧 前回のBoPでも漫才みたいなこともやったし。

里中 そうそう。しかもめっちゃ煽るし。そういうところで一体感みたいなものを作っていきたいなと思います。

荒牧 《Rep LIVE》はオオサカだけの単独ライブだったけど、BoPは他のディビジョンもいるので、他のディビジョンもイジっていきたいですね。怒られない程度に(笑)。

──そういったアドリブは事前に考えておくんですか?

荒牧 おおまかな流れは考えます。でもその場で生まれることも多いですね。

里中 だからいつも本当にドキドキしています。笑ってもらわないといけないので、必死です(笑)。

郷本 芝居とはまた違うドキドキ感よね(笑)。

里中 前回のBoPのときも、漫才が終わった時点で二人で「ああ、終わった」って安心しましたもんね。歌って踊らなあかんのに、漫才がメインみたいになっていました(笑)。

荒牧 ありがたいことに他のディビジョンメンバーも僕らの漫才が好きみたいで、視聴率も高かったから余計にね。

里中 「ありがとうございました」ってはけていくとき、優越感みたいなものも感じて(笑)。「これが芸人か」って。

郷本 本番前の楽屋での2人もめちゃくちゃ面白いですからね。何かを生もうとしてアイデアを振り絞っていて。「これいいね!」「そうだね」「これでいこう」とノリノリで行けるときもあれば……。

荒牧 「何も生まれない! 何かやるから、なんか返して」ってことも。ギリギリまでネタが降りてこないときもめちゃくちゃあります。

──芸人さんにインタビューをしているような気持ちになってきました(笑)。

郷本 2人は、感覚的にはほぼもう芸人さんです。

■3年間で進化してきたチームの関係性

──荒牧さんと里中さんは 2020年10月のtrack.3から簓と盧笙を演じてきましたが、最初に出演が決まったときはどう感じましたか?

里中 いや〜、怖かったですよ。オオサカ・ディビジョンのキャストを知ったときに「荒牧慶彦」「東山義久」と書いてあって「俺だけ新人すぎん?」と驚いたし、本当に不安でした。でもヒプステ自体は、(植木)豪さんが演出ということもあって、すごく興味がありましたし、自分自身が大阪出身ということもあってオオサカのキャストで出演したいと思っていたので、出演が決まったことはすごくうれしかったです。

荒牧 僕は挑戦でしたね。そもそも関西弁をしゃべったことがなかったので。それでも挑戦させてもらえるということでドキドキしていました。ヒプステは、track.1からもちろん興味を持って見ていたのですが、エンタテインメントのショーとしてしっかり出来上がっていて、「こんなにワクワクする舞台あるんだ」と思っていました。何よりも「ラップってカッコいいんだな」と思える舞台で。ラップと舞台、ラップと芝居ってこんなに合うんだと思いましたね。

──郷本さんは2022年の《どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!》からの参加ですが、出演が決まったときはどう思いましたか?

郷本 僕も、ラップやダンスに対しては苦手意識があって避けてきていたので、40歳を過ぎてまさかこんな挑戦をさせていただける場があるなんてと、すごく光栄に思いました。僕の場合はみんなが築いたものに入る形だったので、ある意味入りやすくもあり、逆に入りにくくもあり。でも結果的には皆さんの作った“どついたれ本舗”を見させてもらえたので、とてもやりやすかったですね。

荒牧 なおやん入ってきたとき、全然違和感なかったですよ。もともといたのかなと思うくらい。

里中 なんなら「初めまして」の時点でもう違和感なかったです。

郷本 そんなことある? 初めましてで違和感ないって(笑)。

──“どついたれ本舗”の雰囲気自体は最初と今で変わっていますか?

里中 全然違いますね。それこそ僕はお芝居の経験が少なかったので、最初の頃はまっきーくん(荒牧)と東山さん(当時の天谷奴 零役・東山義久)に食らいつくような気持ちでやっていました。でも今は信頼していろんなことを任せていただけていて。ほんまにうれしいです。

荒牧 将道は当初、僕と義久さんを後ろから追いかけてくるというイメージでしたけど、今は本当に堂々と3人で並んで歩いています。僕の中では、何より、僕に関西弁が馴染んだということがすごく大きな変化です(笑)。

郷本 本当に心地の良いチームですね。お互いに信頼感を持っていて、無理がない。そういう意味で、無敵のディビジョンなんじゃないかなと。いろいろなディビジョンがありますけど、オオサカが引っ張っていけるんじゃないかと。

里中 「笑いなら絶対に任せてください!」という感じですね。

郷本 そう、笑いなら、ね!(笑)

荒牧 箸休めは必要なのでね。我々が箸休めになれればなと。

郷本 そうか、引っ張っていくというより、箸休めか(笑)。

■ヒプステは稽古に行くのもすごく楽しみ

──これまでのヒプステで特に印象的だった出来事を教えてください。

里中 僕は大阪出身で、元々お笑いライブが好きで、中学生のときに漫才をやったこともあるんです。お笑い芸人になりたいと思ったこともあるくらいだったので、芸人さんの役ができて、人前で漫才できたのは、本当にかけがえのない時間でした。

荒牧 豪さんは自身の演出作において、アドリブを入れるのがあんまり好きじゃないそうなんです。でも僕たちはtrack.3で勝手に漫才を入れてみた。そしたらその仕上がりがよかったからなのか、それからは「まっきーくんになら任せられるから好きにしちゃってください」と言ってくださって、「だるまさんがころんだ」の場面(《どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!》でのアドリブシーン)など、いろいろやらせてもらいました。その、認めていただけた、信頼して預けてくださったというのがすごくうれしかったですね。まぁそのせいで自分たちを苦しめることにもなるんですけど(笑)。でもそのドキドキ感も好きだったりします。

郷本 僕は、チームバランスがすごく良いということですかね。うちのディビジョンもそうですけど、何よりもカンパニーとしてのバランスが良くて。とにかくスタッフさんたちの愛情が深い。制作さんはもちろん、現場でつく照明さん、音響さん、演出さん、みんなのチームワークがすごく良くて。どこかで何かが起きてもすぐに対応するし、ピリッとした空気になったとしても、豪さんがすぐ和ませてくれて。演出家が先頭を切って笑わせようとする姿を見て、このカンパニーの雰囲気の良さは豪さんのおかげなんだなと思いました。

里中 おかげで、本番はもちろん、ヒプステは稽古に行くのもすごく楽しみなんですよ。

■自信を持つことが大事だと学べた現場

──俳優として、ヒプステで得たものはありますか?

荒牧 舞台上で生きることが楽しいなと、簓を演じていて改めて思いました。

──荒牧さんはこれまで様々な役を演じられていますが、改めてそう感じられたのはどうしてなのでしょうか?

荒牧 簓がより自由なキャラクターだからだと思います。言ってしまえば何でもできるんですよね、自分で回収さえすれば。その自由度はこれまでの役にはあまりなかったことだったので、とても楽しかったです。

郷本 僕は自信を持たせてもらったことが一番大きいかもしれないですね。僕は見た目の割に中身は小心者で、実は、自分に自信を持って舞台に立つということがそんなになかったんです。そんな中で、ヒプステは改めてちゃんと自分と向き合わないといけないような現場だった。「稽古を積んでみんなで成長していこう」というよりも、各々が考えて持ってくるという雰囲気。できないところがあったとしても、誰かがフォローしてくれるのではなくて、自分で気付いて上達していく必要がある。それができないと振り落とされていくような感覚がある現場なんですよ。悪い意味ではなく、ものすごく成長のできる場所。その結果、自信を持って舞台に立つことができた。しかもお客さんがそれに応えてくれて、さらに自信につながりましたね。

里中 僕もtrack.3の初めはオドオドしていたんですが、自信を持つことが、お芝居をする上で、人前に立つ上ですごく大事なんだなということを学ばせていただきました。

──そういう環境作りがされているんですか? それとも自然と感じ取っていく?

里中 僕の場合は、横にずっとまっきーくんがいるので。隣にいると、そのすごさを感じるんですよ。僕も盧笙と一緒で、この人と対等でありたいと思う。そこを追いかけてやっていきました。

──まさに簓と盧笙の関係ですね。

里中 そのあたりもリンクしていたので、お芝居は作りやすかったですね。まっきーくんとじゃなかったら、全然違うものになっていただろうなと思います。それも含めて僕はヒプステでの経験はものすごく大きくて。失敗や悩むこともあった中で、本当に成長させていただいた作品です。自分が盧笙と似ているからこそ、盧笙として生きられて、本当に本当にありがたい経験でした。

■最後の最後までみんなと笑えれば

──「Battle of Pride 2023」で卒業となりますが、最後に卒業に向けての思いを聞かせてください。

荒牧 寂しいことは寂しいですが、原作も含めて簓というキャラクターがいなくなるわけではないので。僕がやる簓は、最後の最後までみんなと笑えればと思います。

里中 僕はこの作品に携われたことがすごく大きいので、卒業はすごく寂しいです。でも、この経験に感謝を込めて、最後までこの3人で笑いを作りながら楽しめたらと思いますし、僕のできる盧笙を最後まで一生懸命届けたいなと思います。

郷本 僕はこの作品に加わったばかりで、今が絶頂に楽しいとき。だから卒業に対してもまだ実感がないというか。楽しいまま終わって、あとから余韻に浸って「楽しかったな」って寂しくなるのかなと思います。けど、今はすごく楽しいので、最後の最後まで楽しむことが全てですね。

■取材・文/小林千絵

撮影/友野雄

ヘアメイク/瀬戸口清香 茂木りさ

スタイリング/小田優士

オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”を演じる3人/撮影=友野雄