現役引退後、いったいどれくらいの年金をもらうことができるのか……参考までに、いま年金を受け取っている人たちに受取額を聞いたら、少々引いてしまう回答が返ってくるかもしれません。みていきましょう。
自営業者も専業主婦も会社員も…全員ひとまとめにしたときの年金受取額は?
――年金、いくらもらっていますか?
そう聞かれたら、年金を受け取っている日本の高齢者は、どう答えるのでしょうか。
厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、公的年金受給者数(延べ人数)は7,698万人。そのうち厚生年金保険(第1号)受給者数は4,023万人で平均受給額は老齢厚生年金で月14万5,665円。国民年金受給者数は3,614万人で、平均年金受給額は老齢基礎年金で月5万6,479円です。
月受取額の分布を1万円刻みでみていくと、国民年金受給者(3,300万人)で最もボリュームが多いのは「6万〜7万円未満」で44.8%。厚生年金受給者(1,600万人)では「9万〜10万円未満」「10万〜11万円未満」が7.0%。また「17万〜18万円未満」が6.44%。これは65歳以上男性の平均受給額が16万9,006円、65歳以上女性の平均受給額が10万9,261円であり、その近似値ということで、ボリュームが多くなっています。
ここまで自営業や専業主婦などと、会社員や公務員などと分けてみてきましたが、それらを合わせた約5,000万人の「日本の高齢者」がいくら年金をもらっているか、という視点でみていくと、これまでとは少々違う景色がみえてきます。
「月、5万円ないくらいかな」
…年金受給者の18.20%
「月6万円から7万円くらいだね」
…年金受給者の31.08%
「月10万円を超えるくらいかな」
…年金受給者の10.03%
年金が月5万円に満たない人が2割弱。そして月8万円に満たない人が6割強。「年金、いくらもらっていますか?」の質問に対し、日本の高齢者たちは「えっ、そんなに少ないの?」と声にしてしまいそうな金額を、なんとも普通のことのように答えていくでしょう。老後にもらえる公的年金、「日本の高齢者」と大きなくくりでみていくと、想像以上に少額です(関連記事:『【早見表】年金月額別「受給者」分布…〈国民年金受給者+厚生年金受給者〉』)。
年金、少なっ!それでも「日本人なら大丈夫」といえるワケ
もちろん「会社員の夫と専業主婦の妻」とか、「自営業の夫と会社員の妻」など、いろいろなパターンの家族のカタチがあります。そのような事情も考慮していないので、「年金受取額が少ない=暮らしていけない」というわけではありません。実際に「年金が少なくて生きていけない……」という高齢者は少数派。それに日本人は大の貯金好きなので、老後を見据えてしっかりと貯めこんでいる人が多数派。年金生活に突入しても、なんだかんだいってやっていけるようです。
総務省『家計調査 貯蓄・負債編』(2022年平均)と、調査世帯(世帯人員:2.91人、世帯主の年齢:59.7歳)の平均貯蓄額は1,901万円、負債は576万円。貯蓄から負債を引いた純貯蓄額は1,325万円です。
さらに日本人の特徴として、持ち家率の高さが挙げられます。現在、60%程度といわれていますが、年齢が上がるとともにその割合は上昇し、年金世帯の8~9割は持ち家といわれています。持ち家でも維持費はかかるものの、賃貸よりは月々の支出は少ないはず。
同じく家計調査で、持ち家世帯(世帯人員:2.91人、世帯主の年齢:61.3歳)についてみていくと、平均貯蓄額は2,043万円、負債額は658万円、純貯蓄額は1,385万円です。さらに1988年以前に家を建てた世帯(世帯人員:2.56人、世帯主の年齢:70.7歳)についてみていくと、平均貯蓄額は2,139万円、負債額は110万円、純貯蓄額は2,000万円超えとなります。
一生懸命働き、貯蓄に励み、家を建て……そんな日本人らしい人生設計のもと生きていけば、年金が少なくても、大半の人は「老後は安心して暮らしていける」といえそうです。
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