今年、創立100周年を迎えるディズニーが、ディズニーランドの人気アトラクション“ホーンテッドマンション”を実写映画化。怖いけれど惹かれる、いや怖いからこそ惹かれる、あのゾクゾクした興奮が2時間たっぷり味わえる。ニューオーリンズの奥地、999人のゴーストが住む呪われた洋館に暮らすことになった親子と、そこへ集められた心霊現象のエキスパートたちが、ゴーストと攻防を繰り広げる――。まるでアトラクションに乗っているかのように、ノンストップで現れる個性豊かなゴーストや彼らが仕掛ける罠が襲い来るが、怖いのにどこか笑ってしまう、恐怖と笑いのハイブリッド作品になっている。

【写真を見る】全員似合いすぎ!片岡愛之助、土屋アンナ、八代拓が『ホーンテッドマンション』キャラクターさながらの衣装で登場

日本語吹替版には、個性的な豪華ボイスキャストが集結。MOVIE WALKER PRESSでは、館の謎を解き明かすため集められた、神父ケント役の片岡愛之助、霊媒師ハリエット役の土屋アンナ心霊写真家ベン役の八代拓に、アフレコの感想から作品の魅力までを直撃し、映画さながらのチームワークで大いに語ってもらった。

■「最初は『ゴースト役のオファーか』と思っていました(笑)」(土屋アンナ)

――まずは、ディズニー作品のオファーを受けた感想を教えてください。

愛之助「それこそ『ヤッター!』でした。やっぱり誰もがディズニー作品には携わりたいですよね。特にキラキラした物語よりも、本作のようなちょっとダークな世界観の方が、僕のキャラには合っていると思いました」

土屋「最初に『ホーンテッドマンション』の吹替と聞いた時、『ああゴースト役のオファーか』と思っていたのですが、蓋を開けてみたらメチャクチャ綺麗な女性の役で、すごく嬉しかったです(笑)。昔からディズニー大好き人間なので、自分ができるすべてを出し切ろうと思いました」

八代「僕も幼少期からたくさんの夢をいただいているディズニー作品に参加できるなんて、本当に幸せだと思いました。しかもほかの吹替キャスト陣を見て、『この中に僕が!?』とさらに驚きが大きくなって。テレビで拝見している皆さんと一緒にやれるのかと、楽しみの中にドキドキ感があって、背筋が伸びる想いでした」

――お調子者のケント、大袈裟なハリエット、実は霊を信じていないベン。三種三様クセのあるキャラクターに対して感じたこと、また自分との共通点があったら教えてください。

愛之助「ケントは非常に適当な人でもありますが、明るく前向き。それでいてちょっと臆病で怖がりな面があるんです。その“明るく前向きなところ”は、自分と似ていると思いました。臆病で怖がりな面も、ちょっと似ています」

土屋「ハリエットは感情や気持ちを、とても素直にシンプルに、声や表情に出すタイプ。しかも“無自覚なのに実はすごい力があった”という人。私も『私にできるかな?』と思いつつやったら、意外とできたという経験があるので、そんなところも似ているかな」

八代「ベンは心霊写真家なのに、最初は頑なに幽霊を信じないのが、演じるうえでひとつポイントになりました。その頑固さみたいなのが、自分にもあるなと感じました」

■「大きなジェスチャーをする人物に声を入れるのは、すごくおもしろいと同時に難しい」(片岡愛之助)

――俳優陣の演技はいかがでしたか?彼らの演技に声を当てていく、その苦労と楽しさを教えてください。まずはケント役のオーウェン・ウィルソンはどうでしょう。

愛之助「本当にステキで大好きな俳優さん。今回のケント役にもピッタリだと思いました。僕は普段、歌舞伎の世界にいるので、海外の作品におけるいわゆる“洋服を着た人物”とは、所作がまったく違います。むしろ抑えねばならない世界で育った僕が、とても大きなジェスチャーをする人物に声を入れるのは、すごくおもしろいと同時に難しくて、勉強になりました。オーウェンさんの繊細な表情に合わせた、声にならない声みたいなものが特に難しかったですね。自分が(生身で)演じても、そういう声は出さないだろうな、みたいな表現も今回はあったと思います」

――ハリエット役は、ティファニー・ハディッシュさんが演じています。

土屋「彼女はアフロ・アメリカンなので、言葉のスピードが早いうえ、すべてをリズムで歌って演じているような印象を受けました。どうやって日本語を合わせるのか戸惑いましたが、そんな彼女のベースから抜けださないとできないぞ、というところからスタートし、あとは吹替監督を信じるのみでした。ただ私も音楽をやる人間なので、彼女に合わせるのは、すごく楽しかったです。落ち込むと(声のトーンが)下がるし、気持ちが上がると(声のトーンも)上がる。ハリエットを演じたことで、私自身の引き出しもメチャクチャ増えました。また、言葉数が多い英語に対し、言葉数が少なく重い日本語をどんな風に発すればハリエットの慈悲深さや悲しみを表現できるのか、学ぶ時間でもありました」

――ベン役のラキース・スタンフィールドも、繊細かつユーモアに演じていましたね。

八代「ノリがいいシーンもありますが、印象的だったのは目に宿っている哀愁。大切な人を失い心に傷を負っているベンは、どうしても“過去”を見てしまい、“いま”を見られていない。それを目一つでこんなにも感じさせられるのか、と感動したんです。ベンはケントや(ダニー・デヴィートが演じ温水洋一が声を担当)歴史学者ブルース、ハリエットと話す時と、接する人によって話すスピードもトーンも違うんです。ベンのそういう繊細さや心の温かさは、ラキースさんの演じ方で気づけた部分です。最初は難しかったですが、収録が進んでいくうちに彼と呼吸が合ってくる感覚があって、勝手に彼と分かり合えたような気持ちになれました」

■「八代さんのなんてことのない音などにプロの声優さんのスゴさを感じました」(片岡愛之助)

――3人は、お互いの役や演技をどのように感じましたか。

愛之助「お2人共、本当にすごかったですね。声のトーンといい、演じたキャラクターにぴったりで。アンナさん、まったく違和感がなかったですよね。声がすごくステキですし、本当にいろんな音を出されていて、それがスゴイと思いました」

八代「ですよね、すごかった!ハリエットが優しい言葉をかけるシーンでは、もう『ズルい!』と思うくらい感動しました」

土屋「どうしよう、そんなに誉められて…」

愛之助「八代さんも、ベンとピッタリ一致していました。特に言葉の前の音というか、なんてことのない音などにプロの声優さんのスゴさを感じました」

八代「いえいえ、お芝居では大先輩のお2人に学ぶところが多くて…。でもそれ以上に、パーソナルな部分が役に反映されるのだと、改めて感じたんです。ケントの掴めそうで掴ませてくれないミステリアスさに、愛之助さんの存在感が確実に反映されているな、と聞きながら感動していました」

土屋「そうそう、声をあまり張らずにおもしろいことをサラっと言っていて。すごくステキでした!」

愛之助「ありがとうございます」

土屋「ベンについて、八代さんがスタンフィールドの目の演技がすばらしいっておっしゃいましたが、私も彼のあの目に惹かれたんですよ。この俳優さん、スゴイなと。でも、彼の目の演技を、声だけで表現してる八代さんもすばらしくて、それを見て日々精進だなって思わされました!」

――3人と共にゴーストたちに立ち向かう、歴史学者のブルースを演じた温水さんはいかがでしたか。

八代「ご本人にお聞きしないと分からないですが、結構アドリブを入れられていましたよね!?」

愛之助「あれは多分、アドリブですよね!」

土屋「それも含めて温水さん、おもしろすぎましたよね(笑)」

八代「もう、ズルいくらいでした(笑)」

土屋「あれ、反則ですよね(笑)!」

愛之助「今回、台本に“アドリブOK”と書かれている箇所があって驚きました。自分が(生身で)演じている方が、アドリブも断然楽。声だけでアドリブを出すのは、そのさじ加減も本当に難しかったです」

■「ホーンテッドマンションはどの世代からも愛されるアトラクションなんですね!」(八代拓)

――映画の舞台となる“ホーンテッドマンション”自体が、主役級の味わい深さでした。

土屋「そうそう!私は小さな頃から数えきれないくらい、ディズニーランドホーンテッドマンションに乗ってきたけれど、まだまだ見きれていないものがいっぱいあると思うんです。毎回『あれ、こんなのあった?こんなのいた?』と宝探し状態でキョロキョロ見ていて。でも本作を見て、すべてが繋がりました!あそこでちょっと見えていたモノはコレだったのか、と。すべてにバックグラウンドのストーリーがあるので、アトラクションでチラ見してきたすべての“鍵”が、映画で見つけられる気がします」

愛之助「まさにアトラクションのような、あの壮大な屋敷をくまなく楽しめるお楽しみがありますよね」

八代「建物自体にいろんなギミックがあって、そこにロマンが宿っているから、すごくワクワクするんです。999人のゴーストが、それぞれ生きてる…って言ったらおかしいですが(笑)、違う個性を持っているゴーストのいる空間が、怖いけどたまらなく楽しいんです」

――ちなみにアトラクション自体には、どのくらい乗ったことがありますか。

愛之助「お話をいただいたあと、改めてアトラクションに乗りました。それから収録に臨んだのですが、「あー、なるほど」と腑に落ちるところがたくさんあり、完成した作品を観たら、すぐにディズニーランドに行きたくなりました。」

土屋「私はもう数えきれない。ディズニー好きから言わせると、ホーンテッドマンションってほかのアトラクションとは少し違って、空間もゴーストもとにかくオシャレでカッコいいんです。とにかく大好きなアトラクションで、インスピレーションが湧いてくる場所でもあります」

八代「初めてディズニーランドに行った幼稚園の頃、ホーンテッドマンションに繰り返し乗りたがっていたと家族から聞きました。ゴーストがいっぱい集まってパーティーをしている世界観に、子ども心に高揚して、怖いけれどワクワクしたのを覚えています。つまり、どの世代からも愛されるアトラクションなんですね!」

■「部屋の隅でひたすらエクササイズしている名物ゴーストになりたいです(笑)」(八代拓)

――本作の監督は、カリフォルニアディズニーランドのキャストとして働いた経歴を持つジャスティン・シミエンです。強いディズニー愛をもつ彼だからこその演出だな、と感じたポイントはありますか?

土屋「アトラクションへのオマージュを、サラっと描いて登場させているところ。例えば、墓地で犬を連れているお爺ちゃんとか、アトラクションでもわりと目立つ存在ですが、映画ではとてもさりげなく登場させている。好きだからこそ、そういう描き方をして、多分、観客に発見してもらいたいんだなと思いました」

愛之助「隠れキャラのようにチラっと登場させている…。なるほど、ディズニーのプロの意見ですね!」

八代「僕はゴーストの描き方に強いこだわりを感じました。死後の世界にいるゴーストって遠い存在のようで、僕らと変わりない人間臭さや魂をもっている。だから親近感が湧くんだな、と。そこに強い愛を感じました」

――いろんなゴーストが登場しますが、お気に入りのゴーストはいましたか?

八代「絵の中にいる、船長のゴースト!」

土屋「一緒、一緒!!」

八代「すごく可愛かったですよね!」

土屋「彼、海に帰りたいと思っているのよね。つまらないテレビ番組でも、海が映っているチャンネルに変えるいたずらをするほど、とにかく海が見たいのよ(笑)」

愛之助「僕が印象に残ったのは、旦那さんをメッタ刺しにしたゴースト。単純に怖いな~って」

八代「確かに、それもすごいインパクトでした」

――自分なら、どんなゴーストになって館に来る人を驚かせたいですか?

愛之助「僕はずっと鎧の中に入って、来た人を驚かせたいです」

土屋「ずっと酔っぱらってヘベレケになって、ずっと犬を口笛で呼んでいるお爺ちゃんゴーストがいいな。なんなら人を驚かせるより、ゴーストのくせに誰かが来たことに逆にビックリしちゃう、みたいな(笑)」

八代「僕は、部屋の隅でひたすらエクササイズしているゴースト。誰かを怖がらせるわけでもなく、ただエクササイズしている名物ゴーストになりたいです(笑)」

■「死んでいようが生きていようが、共に経験を分かち合うことで悲しみを癒す方法がある」(土屋アンナ)

――ズバリ、本作の“大人でも楽しめるポイント”は?

愛之助「人間のみならずゴーストたちの過去や、いろんな愛の形が描かれているところですね。親子や恋人同士の愛など、幅広い世代の方に共感いただけると思います」

土屋「死後の世界に生きるゴーストたちにも、それぞれバックグラウンドがあって、それぞれ悲しみを持っている。死んでいようが生きていようが、共に経験を分かち合うことで悲しみを癒す方法があるということを描いている。そこがステキでした」

八代「僕も生と死というテーマをすごく考えさせられました。ベンを演じながら、“命”そのものより、そこに宿る“魂”がいつ死んでしまうのか、いつまで生き続けるのかなど、すごく考えさせられて…。また、子ども向けの分かりやすくキャッチーな笑いもあれば、大人だからこそクスッと出来るピリっとした笑いも魅力です」

土屋「実は私、4DXで観たのですが本当にヤバかった!技術的レベルがさらに上がったそうで、もはやアトラクションに乗っているかのように動くんです!映画館でグラングラン揺れながら、爆笑しちゃいました!」

子どもから大人まで、めくるめく“恐怖と笑い”のハイブリッドの波に、どっぷり浸かる高揚感。オリジナルの俳優陣に負けず劣らずの、日本語吹替版声優たちの味わい深い声の演技は、ディズニーファンならずも字幕版と吹替版、どちらも制覇したくなるはずだ。

取材・文/折田千鶴子

『ホーンテッドマンション』の吹替キャスト片岡愛之助、土屋アンナ、八代拓へインタビュー!/撮影/河内彩