子育てのイライラ、不満がふつふつと……これはママの心の“ガス漏れ”状態。爆発したら大変なことに!

パパになる男性の「本当の気持ち」を、映画『うまれる』監督に聞いた

口コミだけで40万人を動員、子育てママに絶大な人気を誇る映画『うまれる』の監督で、その第2弾となる新作『うまれる ずっと、いっしょ。』の公開を控えた豪田トモさんに、ママがラクになる秘訣、家族もハッピーになれる子育てについてお話をうかがいました。

イライラするのは、ママのガス漏れ状態

映画製作を通して100組以上の夫婦に接してきた豪田トモさん。もうすぐ4歳になる娘さんのパパでもあります。

「僕は子育てで一番大切なのは、“ママが幸せでいること”だと思っています。でも、ママがストレス満載で精神的に安定していないと、何でもない事でもイライラして、怒りをぶつけがちになってしまいますよね。それって例えるならママが“ガス漏れ”している状態なんです」

ガス漏れ! 現役ママにはすごくよくわかる例えです。

「心の中で“ガス漏れ”しているから、火がつきやすくなっちゃうんですよ。だから些細なことで子どもに怒鳴ってしまったり、もしくは子どもを適切に褒められなかったり、必要な言葉がけができなかったり、うまれてきてくれた素晴らしさを忘れてしまったり…
心の“ガス漏れ”は子どもに飛び火してしまう可能性もあるので注意が必要かなと思います」

身に覚えある方も多いのでは。
ガス漏れの原因とは何なのでしょう? その対処法はあるのでしょうか。

ガス漏れの原因その1:パートナー(パパ)との関係に不満がある

子どものパパであるパートナーとの関係がストレスになって、ガス漏れ→発火してしまうママも多いかもしれませんね。
最初にお伝えしたように、子育てで一番大切なことは、子育てをしているママが幸せでいること。そのためには、できればパパを中心として、ママが充分サポートを受けられるような環境作りが必要なんです」

サポートの一番の担い手は、やっぱりパパなんですよね。パパにうまくサポートしてもらうコツってあるんでしょうか?

●実はパパもサポートが必要

ママをサポートしたいけど何をすればいいのか分からない、というパパも多いはず。「男性は女性と違って、どうしてもパパスイッチが入るのが遅いんです」と豪田さん。

「妊娠、出産が経験できないパパは、女性に比べてどうしても“パパスイッチ”が入るのが遅いんです。育児をしながら徐々にボリュームアップしていくイメージですね。父親意識を目覚めさせるためには、妊娠期間をなるべく奥さんと一緒に過ごすとか、出産に立ち会うとか、育休を取る、平日や土日もなるべく育児に参加するなど、パパもパパになれるような“父親体験”が必要です。
僕ら男性は「察しろ」と言われてもできない生き物(笑)。明確に“父親体験”できないと、ママをどう助けていいのか分からない人も多いんです」

パパが育児の大変さを実感しないと、ママの助けにもなれない。ママを支えるパパにもサポートが必要だと豪田さんは言います。

「お互い余裕がないと“私をサポートしてほしい”“オレも疲れてるんだから”と、争ってしまいがちですよね(苦笑)。一歩引いて、お互いをサポートし合えるにはどうしたらいいんだろう?って考えられるといいのかな、と思います」

理想論かもしれませんが、と豪田さんは笑いますが、夫婦のコミュニケーションは、育児をする上でとても大切。ガス漏れしてるな……と思ったら、「自分のことは棚に上げて相手を責めていないか」など、なるべくひと呼吸おいて振り返りたいですね。

親が言ってもらいたい「魔法のことば」

ガス漏れの原因その2:自分の両親との関係がうまくいっていない

「実は子育てに一番影響するのは、自分の親との関係なんです」と言う豪田さん。

「遺伝というのは身体的特徴とか性格とかだけじゃないんです。“人との接し方”、ひいては“子育て”も遺伝するんです。
子育てをしていると、細胞にインプットされている無意識の記憶が顔を出して、知らず知らず親からされて嫌だったことを自分もしてしまうことがあります。もちろん逆もそうです。
親の存在は望むと望まざるとに関わらず、人生に大きな影響を与えてしまいます。
親との関係は、そのまま他人との関係につながりますから、親を許せないと、他の人に対しても許せないという感覚を生み出しやすくなり、子どもパートナーとの関係も複雑にしてしまいがちです。」

「親に対して感謝が出来ない状態、怒りや失望などの負のエネルギーは、心の“ガス漏れ”を引き起こし、発火しやすい。でも、親に感謝できる状態だと、精神的に安定して“ガス漏れ”が起きにくく、些細な事にも発火しない。
だから、もし親との関係があまり良くない場合は、それを自分なりに見つめ直し、出来れば向き合って良い方向に改善させることが、子育てのイライラをなくす大きなきっかけになると思うんですよ」

●親との関係をふりかえってみる

「僕自身も35年以上、親との関係がうまくいっていませんでした。
でも命と家族の原点である前作の『うまれる』という映画製作を通して、親との関係に徹底的に向き合いました。
両親との仲が劇的に良くなったことで、心の“ガス漏れ”が止まったんです(笑)
些細な事にイライラして発火しなくなったので、パートナーや様々な人間関係まですごくよくなったんです。それは子どもとの関係にも活きています。子どもに怒る事もほとんどない(叱る、のは別ですが)。
親との関係を改善させると、子育ての悩みも劇的に減る。これは僕の実体験や、さまざまなご家族に会った中で心から実感しています。」

●親に「生んでくれてありがとう」と言ってみる

でも親と長年の確執がある場合、なかなか難しいのでは? 具体的に豪田さんはどんな風に親御さんとの関係がよくなったのですか?

「電話なんてほとんどしたことがなかったのに電話ができるようになりました(笑)。一緒に食事もするようになりましたね。
映画を通して、ひとつの命が誕生するということのすごさに気づき、自分を産んでくれた親への感謝が生まれたことが大きかったです。様々なご家族や誕生を取材・撮影させていただいた事で、親が生んでくれたから自分がいる、という事を心からしっかりと感じる機会をもらいました。“体験”や“気づき”のきっかけがないと、なかなか実感できないですよね」

そして「産んでくれてありがとう」と伝えることができたことも大きかったと言います。

「子育てってなかなか人から褒められない、認めてもらえないじゃないですか。仕事だったら査定など数字で評価されるからわかりやすいけど、子育てには尺度がない。24時間365日を20年近く費やす事に対して、褒められないってやっぱり辛いことじゃないかと思うんですよね」

毎日こんなにがんばっているのに褒められない、評価されない。その辛さは子育てママなら何度も経験すること。

「それは僕たちだけではなく、実は自分たちの親もそうなんですよね。
親に対して何かしらわだかまりのようなものを持っている人はとても多いと思いますが、様々な環境や時代背景の中で、親は親なりに精一杯やってくれたと思うんですよ。幼少期の頃なんて、親が数日、面倒を見なければ、既にこの世にいなかったわけですから……。
だから、もし色々あったとしても、『産んでくれてありがとう』と伝えることは、親にとっても、自分にとっても、すごく大切な事だと思っています。」

『産んでくれてありがとう』という言葉は、親の全人格、全人生を肯定する魔法のような言葉。

「自分も、もし子どもに20年後、30年後に『産んでくれてありがとう』って言われたら、生きててよかったな、子育てしてきてよかったなって思えるじゃないですか。だから親にその言葉を伝えるということは、すごく大切なことだと思うし、そういうことって子どもにも伝わっていて、巡り巡っていつか自分にも返ってくるかもしれない。
子どもから『産んでくれてありがとう』って言われるのは、オリンピック金メダルを獲得するくらい、人生にとってスゴい事だと思うんです」

“親と関係がよくないから育児も夫婦仲もうまくいかない”という事に気づいてないママも多くいる、と豪田さん。
でも親との関係を改善したり、パートナーとの関係を見直したり…そんなにいろいろ頑張らないとできないの? と思うママもいるかもしれません。
でも「自分のガス漏れの原因」を知って何とかしていかないと、いつまでもイライラは減りません。

ママに愛情を!

ママの“愛情タンク”を満たしてハッピーに!

「よく虐待、ネグレクトで事件が報道されますね。僕の考えですが、本当のネグレクトっていうのは“ママが孤立化していること”を指すと思うんですよ。
虐待しようと思って子どもを産み育てている人なんて本当はいない。命をテーマにした映画を撮っていますし、虐待に関しても僕は結構リサーチしました。虐待防止を目的にした映画上映も100回以上やっています。
でもその中でわかったのは、虐待してしまったママもほとんどが普通の人だし、まさか自分がこういうことをするとは思っていなかった。ママ自身が親やパートナーから愛情をかけてもらえず孤立化してサポートを得られていないこと、親からの負の遺伝を継承してしまったことが主な原因なんです。」

子育ては子どもに愛情を与える仕事。その愛情を与えるママの愛情タンクがカラカラだと、子どもにも愛情を与えてあげることができない、と豪田さん。

「まず身近なパートナーが、ママの愛情タンクを満たしてあげてほしいですね。小さい我が子とどう接していいか分からないパパはたくさんいると思います。でも育児中のママを、全面的にサポートしてあげてほしいです。ママを幸せにするのはパパの“特権”です」

「ママを幸せにしてあげたい」という豪田さんの優しい言葉と思いに取材中、不覚にも何度も涙がこぼれそうになりました。あ、誤解のないようにお伝えしますと、我が家のパートナー、夫は育児にかなり参加してくれてる方だと思います。
でもママの育児環境について、こんなに真摯に考えてくれるパパの言葉は、毎日育児でバタバタしているママには胸に沁みます。

まずは、自分の心の状態をチェックして

ママ自身も、自分のガス漏れ状態や、愛情タンクが枯れかけていることに気づくことが大切、と語ります。

「育児中はどうしても自分のことは後回し。でも自分の幸せって何だろう? と考えて、そこを満たしてあげることが、結局はいい子育てにつながると思うんですよ。
パートナーと愛情を深める、そこは期待できないから(笑)親御さんとの関係を見直す、友人と楽しく過ごす、仕事を充実させる、趣味に打ち込むなど、円グラフを作ってみて、自分はどこが満たされていれば幸せなのかを考えてみる。そういう作業をして自分を満たせられれば、それが子どもへの愛情につながると思うんですよね」

ママが自分のことは後回し、ではなく自分が「どこを満たせば一番幸せなのか」を考えることが、結局はいい子育てにつながる、という深い話になりました。めんどくさい、と思わず自分の「ガス漏れの原因」を深く探ることが、結局は自分がラクになる近道なのかもしれません。

子育てとは「子どもが生きる手助けをすること」

2010年、映画『うまれる』が公開された約10日後に娘さんが生まれて、親になった豪田トモさん。
半年くらい育休のようなものを取って(半休半仕事)、育児に積極的に参加されたそうですが、育児のスキルをいくらあげても悩みが増えるばかりで愕然としたそうです。

「オムツを換えても、お風呂に入れても、抱っこをしても子育ての悩みが消えないんです。1ヶ月、3ヶ月、半年、1年……毎日、毎週、毎月、新しい悩みが増える。子どもが二十歳になるまで、さまざまな悩みがやってくるでしょう。その度に「今」に悩んだり対応しているだけでは、子どもの「未来」をうまく導けないって思ったんですよね。
生まれた時は子どもに幸せな人生を、と思っても、現状に対処するのに精一杯で、しっかりとした未来のビジョンが見えなくなってしまっていたんです」

次々と押し寄せる子育ての悩みを前に、豪田さんが考えたのは「子育ての目的」。

「子育てに振り回されそうになって、ふと“子育てって何だろう?”と考えたとき、『子育てとは、わが子が生きていくための手助けをすること』だと思ったんですよね。
じゃあ“生きるってどういうこと?”と考えたときに、シンプルに“生まれて、そして死に向かっていくこと”だと思ったんです」

育児で毎日が精一杯だと、なかなか、そんな先のことまで考えが及ばないのですが……。

「確かに、誰でも避けたいというか目を向けたくないテーマだと思います。でも人は生まれた瞬間から死に向かっていくわけですよね。誰もがいつかは旅立つ自分の人生を、どうやって生きていくか、ここに親がしっかり向き合っていかないと“生きる”ということを子どもに教えられないと思ったんです。
“向き合う力”も筋力と同じで、鍛えないとついていかない。最も“向き合う力”がつくのは、親との関係、そして死に向き合うこと。
親が“向き合う力”をつけていければ、子どもを育てていく上で、どんな悩みがやってきても向き合っていけると思うんです」

食べてくれない、寝てくれない、勉強してくれない……その都度ふってくる子育ての悩みも、もっと大きな視点でとらえたら些細な悩みなのかもしれません。

親になるのが怖かった僕が「どんな問題がおきても大丈夫!」と思えるように

最初は親になることも怖かったという豪田さん。
育児中のさまざまな悩みに振り回されながらも、今では、“向き合う力”がついてきたから大丈夫、と思えるようになったそうです。

「ちょっと前までは、娘が理不尽なことで怒ったり泣いたりわめいたりしたら、自分も一緒に怒ってヒートアップすることもあったんですが(笑)、それがほとんどなくなりました。いろいろな問題にぶちあたりますが、高みから見物できるようになりました(笑)

この境地まで行くのは……難しい? いえいえ、きっと毎日がんばっているママなら大丈夫
私を含めて子育て真っ最中のママのみなさん、がんばりましょう! イライラしたら、まずは自分のガス漏れを確認しましょうね。

「家族」についてさまざまな角度から考えさせてくれる豪田トモさん監督の『うまれる ずっと、いっしょ。』は11月22日から全国ロードショーです。

「うまれる ずっと、いっしょ。」 11月22日 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開 ©2014 IndigoFilms, Inc.