長らく続いた「デフレ相場」が終わり、2023年4月から「インフレ相場」がはじまったとみられる日本。経済環境が大きく変化するなか、近畿大学世界経済研究所の客員教授で投資家・ストラテジストの菅下清廣氏は、かつてのソニー松下電器のような、「日本発の世界的なスター企業」が出現するといいます。その根拠とは、みていきましょう。

「アベノミクス」は間違っていなかった?

4月8日、10年ぶりに誕生した日銀の植田和夫新総裁は、物価目標2%を達成するまで、大規模金融緩和を継続、黒田東彦前総裁の政策を引き継ぐことをアナウンスしました。このことはつまり、現時点で、アベノミクスは間違っていなかったという植田総裁の宣言でもあります。

第二次安倍政権(2012年12月~2020年9月)は、デフレ脱却のための大胆な金融緩和、機動性のある財政出動、民間投資を喚起した成長戦略という3本柱の経済戦略アベノミクスを掲げ、それに呼応して実際株価は上がってきました。日経平均、TOPIX、マザーズ指数、すべて2倍以上上昇したのです(円は対ドル、対ユーロで円安)。

この間、雇用も増え、企業業績回復。私はアベノミクスは大きく成果を上げたと評価しています。ただ黒田前総裁は、10年の在任期間でも目標とする物価目標2%を達成できませんでした。

黒田前総裁は退任時、「経済、物価の押し上げに効果が現れ、デフレではなくなった」と自らの任期中の施策を総括しましたが、それは植田新総裁も十分わかっていることです。

インフレによって、日本の金利は最低でも1%以上になる時代が近づきつつあります。この点も我々は投資判断、銘柄選びの参考にしなくてはなりません。

大きく遅れをとった日本の「ハイテク技術」、巻き返しなるか

日本が再び世界トップクラスの技術大国になるためには、「77年サイクル」衰退の後半期で大きな遅れを取った半導体などのハイテク技術を再興し、世界のデジタル社会をリードする先端技術を取り戻す必要があります。

中でも、アメリカのOpenAIが開発したChatGPT(生成AI)は、世界最速でユーザー1億人を突破して、グーグルやアップルなどデジタルでこれまで世界をリードしてきた先端企業を驚かせました。

DX関連、メタバース(インターネット上の仮想空間)など、デジタル関連のあらゆる技術での立ち遅れをどうやってキャッチアップしていくか。とてつもないスピードで進化を続けるDX分野では、3年以内にキャッチアップできなければ挽回することさえ難しくなるでしょう。

かつてのソニーや松下電器…「日本発・スター企業」誕生なるか

かつて世界のスター企業となったソニー松下電器(現パナソニック)などのように、いま再び日本から世界的なスターとなる企業が出現するかどうかが日本再興の鍵ですが、私は出現すると思っています。

なぜか。世界レベルでネットワークを拡大する大企業が日本には多いからです。資金は潤沢にある。勝ち上がっていく可能性は大です。

また海運、鉄鋼など重厚長大な大型銘柄の活況には、眠れる日本の個人金融資産2000兆円(うち現預金約1000兆円)が流れていく可能性があります。

直接流入するか、積立て型投資信託などを通じて流入するか。どちらにしろかなりの資金量が流入するのではないでしょうか。

2023年4月からはじまった、資産インフレ相場を迎える上で、私たちはどうすればよいのか。千載一遇のこのチャンスに思案中の人は、何もしなければ、インフレ時代の負け組になる可能性さえあることに注意が必要です。

77年サイクルの最初の3年間、

デフレからインフレへ、 ②円高から円安へ、 ③株安から株高へ、

という大きな変化が進行していくことは間違いないでしょう。

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社

代表取締役社長

(※写真はイメージです/PIXTA)