ホロライブも、ファミ通も、イチナナも 「VTuberとゲーミングコミュニティ」が生み出す熱気へ注目が集まる

 月末ということもあって、ニュースがかなり豊富な一週間だった。とりわけ、夏の一大企画「ホロライブサマー2023」のオンラインライブを終えた「ホロライブ」からは、様々な発表がなされた。

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 ひとつはゲーミングプロジェクト「HLZNTL(ホリゾンタル)」の始動である。自社主催のゲーム大会などを通して、タレントの活躍の場を広げつつ、ゲーミングコミュニティの創出を目標としたプロジェクトになる。これまで消極的だった外部のストリーマー、クリエイター、VTuberとの連携も視野に入れているとのことで、「ぶいすぽっ!」などに見られるような「ゲームを中心としたコラボ」に注力しようという意気込みが感じられる。

 また、他ならぬ「ホロライブ」タレントからも人気のクリエイターユニット「HoneyWorks」との音楽プロジェクトや、公式コミュニティアプリ『ホロプラス』のリリースなど、複数の企画が立て続けに動き出した。

 来週には、謎めいた企画『hololive DEV_IS』の詳細も明かされる模様だ。事務所としては間違いなく“安定期”に入った「ホロライブ」が、今後どう動き出すか。カバー株式会社の上場と合わせて、長期的な注視をしておきたいところだ。

 「ゲームを中心とした配信者とファンのコミュニティ」は、FPSを中心としたシューター系が主流ではあるが、直近は格闘ゲームも注目されつつある。とりわけ『ストリートファイター6』の発売は大きな転換点となっている。そんな中、「ファミ通」を運営するKADOKAWA Game Linkageが、格ゲーVTuberプロジェクト「りーさるぷらん」を始動した。

 大まかに解説すると、格闘ゲームの魅力を発信するVTuberタレントを公募・デビューさせつつ、YouTubeに「格ゲーチャンネル」を開設し、先述のVTuberタレントも織り交ぜながら格闘ゲームの情報発信や大会・対戦会の運営を行う、という複合プロジェクトである。オーディションを通して全3名の女性タレントを採用し、キャラクターデザインは『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』のキャラクターイラストを手掛けた樋口このみが担当するとのことだ。

 VTuberとゲーム系ストリーマー、そして格闘ゲームプレイヤーが、格闘ゲームでの交流を通して親交を深めていった直近の動きを、大手メディアが旗振りしてさらに加速させようという思惑が垣間見える。専門メディアだけでなく、大会イベントやプロゲーミングチームの運営にも携わった知見が、どのように活かされるかがカギだろう。

 類似する動きとして、配信アプリ『17LIVE』にて、公式発VTuberユニットの第2弾オーディションも始動した。こちらのコンセプトは「バーチャルサバゲーガール」。「プロゲーマーとしての活動経験、ゲームの大会出場実績」が歓迎条件に見られるあたり、シューター系ゲームを軸にした活動が予想される。「ゲームとVTuber」という軸は、今後も根強い勢力となるだろうか。こちらも要注目だ。

一週間で三社登場 加速する『VRChat』公式パートナー契約の流れ

 先週は驚くことに、『VRChat』の公式パートナー契約締結のリリースが3本も舞い込んだ。

 一社目は株式会社V。ファッションやアバターを中心に『VRChat』へ注力している企業である。今年は「ANREALAGE」のバーチャルアパレル展開を手掛けたほか、アバターのカスタム例を画像でシェアできるWebサービス『kaihen』の開発・運営も行っており、とりわけファッション領域での活躍が目立っている。今後は「ブランドとのアバター制作・販売」「アニメIPとのワールド制作」に注力するとのことだ。

 二社目は株式会社スケブ。クリエイターに対してイラストや音声データなどの有償リクエストができる、コミッションプラットフォーム「Skeb」の運営企業だ。一見すると無関係のようだが、じつは「自分の3Dアバターのイラスト依頼」が全体取引の13%超という一大ジャンルとなっているとのことだ。公式パートナー契約によって、「Skeb」でリクエストしたイラストを展示できるアートフレーム開発などを進めるとのことで、「アバターとイラスト依頼」というカルチャーの推進がさらに進むかもしれない。

 三社目は株式会社ポリゴンテーラーコンサルティング。クリエイター即売会「メタフェス」や、JTの特設ワールド作成など、『VRChat』を中心としたVRメタバースコンテンツの企画立案・制作・運用をワンストップで行う企業である。様々なイベントやコンテンツ制作を手掛ける同社にとって、公式パートナーシップの恩恵は特に大きいだろう。今年の11月には、『メタフェス2023』の開催も予定されており、その恩恵が早速発揮されるかもしれない。

 日本における『VRChat』の(正確には米・VRChat社の)パートナーシップ契約事例は、2023年に入って急速に増加している。華やかな文化が息づくメタバースである『VRChat』に、国内事業体からの熱い視線は着実に重なっている。

■圧倒的な展示物と展示体験 『VR宇宙博物館 コスモリア』で宇宙と天文学に触れる

 そんな『VRChat』に、またひとつ白眉なワールドが生まれたので、本稿にて軽くご紹介したい。VR宇宙コミュニティ「天文仮想研究所」が制作した、『VR宇宙博物館 コスモリア』だ。

 『VRChat』を中心に活動する宇宙同好会・社会人サークルによる有志制作ワールドだが、そのクオリティは圧巻だ。全7テーマで構成された常設展では、様々なクリエイターが制作した3Dモデル・コンテンツが豊富に展示されている。スペースシャトル、宇宙ステーション、天体望遠鏡CERNの「LHC(大型ハドロン衝突型加速器)」に日本の「スーパーカミオカンデ」など、宇宙に関わるものが無数に制作され、眼前で見える場所に展示されている。

 展示体験も非常に良く練られている。「惑星ごとの重力の違い」は「ジャンプ操作時の挙動」で実体験でき、人工衛星が飛行する高度へ飛ぶこともできる。原寸大再現の「ISS(国際宇宙ステーション)」や「LHC」を、その足で歩いて(あるいは、浮いて)見ることができる。果ては「星の一生」を、核となる星の大きさごとに眼前で再生し、見ることもできる。遠目で見る模型や教科書のテキストでは感じられない“実体験を伴う展示”は、深い理解をもたらしてくれるものだ。

 展示導線や、プラネタリウムにも変貌する天文台など、あらゆる面で突き詰められた「VR博物館」の傑作ともいえるワールドである。訪問できる人はぜひ訪れてみてほしい。誇張抜きで、これは学習用の教材にもなり得る逸品だ。

(文=浅田カズラ)

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