リサイクルショップや骨董品店で安く購入したものが、驚くほど価値のあるものだったケースはこれまでにもあったが、アメリカに住む女性も4ドル(約580円)で購入した絵画が有名な芸術家の作品と判明した。もしこの絵画がオークションに出品されると、数千万円で落札される可能性があるという。歴史や科学、芸術等に関するニュースを配信する米ウェブサイト『Smithsonian Magazine』などが伝えている。

デラウェア州在住の女性が、リサイクルショップにて4ドル(約580円)で購入した絵画が注目を集めている。マスコミに匿名報道を希望している女性は、2017年にニューハンプシャー州マンチェスターにあるリサイクルショップ「Savers」で中古の額縁を探していたところ、この絵画を見つけて購入したという。

女性は当時、その絵画を「もしかしてお宝かもね」と冗談を言っていたそうだが、インターネットで検索しても絵画に関する情報が見つからなかったため、自宅に飾った後、クローゼットで保管していたという。そして今年の5月頃、クローゼットに絵画があったことを思い出し、もしかしたら価値があるかもしれないと思い、Facebookのプライベートグループページ「Things found in Walls」にこの絵画の写真を投稿した。

するとユーザーから、ロバート・ルイス・スティーヴンソン著の小説「宝島」の挿絵などを手がけた、20世紀初頭のアメリカを代表する芸術家“N・C・ワイエス(N.C. Wyeth)”として知られるニューウェル・コンヴァース・ワイエス(Newell Convers Wyeth)の作品ではないかという声があがった。

またこの絵画は、メイン州ロックランドにあるファーンズワース美術館の元学芸員で、現在は「Lewis Conservation Services, LLC」という会社を立ち上げて絵画修復士として働くローレン・ルイスさん(Lauren Lewis)の目に止まった。N・C・ワイエスのコレクションが収蔵されているファーンズワース美術館で、かつてワイエス作品の展覧会を企画したことがあるローレンさんは、オンライン上で「本物かどうか?」と質問が添えられた数々の美術品を目にしてきたが、ほとんどが複製、または模造されたものだったという。

しかしローレンさんは、女性が投稿した絵画の裏面の写真を見て、N・C・ワイエスが愛用していた画材メーカー「F. Weber & Company, Inc.」のルネッサンス・パネルというブランドラベルが写っていることに気づき、心が踊ったようだ。ローレンさんが女性のもとまで出向いて絵画を調べたところ、絵画の裏に貼られたもうひとつの小さなラベルには「ラモーナ(Ramona)」と書かれており、N・C・ワイエスヘレン・ハント・ジャクソン著の小説「ラモーナ(Ramona)」の挿絵として描いた4つの作品のうちの1つと判明した。ちなみに同小説の挿絵の作品が発見されたのは今回が2つ目であり、最初に見つかった作品は2014年にサザビーズのオークションにて66万5000ドル(約9720万円)で落札されていた。

ローレンさんは「99パーセント本物」と確信し、この絵画について次のように語っている。

「小さな傷がいくつかあって確かに表面を綺麗にする必要がありますが、過去80年間、この絵画の行方を誰も知らなかったことを考えると、驚くべき良い状態にあったと言えます。」

なおこの絵画について、大手オークションハウス「ボナムスオークション」では、今月19日に開催されるオークションに出品された場合、15万ドル(約2200万円)から25万ドル(約3660万円)で落札されると予想している。

ローレンさんによると、絵画の所有者である女性と夫はさほど裕福な暮らしをしておらず、彼女は「もし期待通りの価格で売却できたら、この絵画は夫妻の人生を大きく変えることになるでしょう」と話している。

芸術家の作品は時に驚くほどの価値を生むことがあるが、現代美術家の奈良美智氏が2009年2月26日にニューヨークのバーの壁に落書きした絵が、2019年10月に数億円の価値があることが判明し、大きな話題になっていた。

画像は『Smithsonian Magazine 2023年8月31日付「A Lost N.C. Wyeth, Bought for $4, Could Sell for $250,000」(Bonhams Skinner)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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