不動産投資では、物件の価格が下落することや、賃料が下がってしまうことが起こり得ます。それでも損しないためにはどの程度の「利回り」が必要になるのか。YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」で不動産投資の初心者向けに情報発信する滝島一統氏の著書『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール 罠を見抜いてお金を増やす』(KADOKAWA)から一部抜粋して紹介します。

不動産投資の心構えは「最高を夢見て、最低を覚悟する」

不動産投資において大事なのは、「最高を夢見て、最低を覚悟する」ことです。「最高」というのは、「家賃は下がらない、空室もほとんどないままローンを完済。物件価格も下がっておらず、売却すれば購入時の金額が手に入る」という展開です。

逆に「最低」というのは、家賃も半分、物件価格も半分に下がったなど、極端に状況がよくない展開です。そんな最低な展開になっても生活に支障が出ないようにするのが、「最低を覚悟する」ということです。

たとえば、Gさんは1億円の物件を頭金2,000万円で購入し、キャッシュフローはプラスを維持し続けました。しかし、ローンが終わった30年後、価格は5,000万円まで値下がりしていました。投資として失敗のようにも見えますが、そんなことはありません。ローンや経費を払ったうえでキャッシュフローがプラスだったのですから、毎月純利益が出ていたことになります。

Gさんが負担したのは頭金2,000万円と購入時と売却時の諸経費1,000万円(仮。合計10%と想定)の計3,000万円です。Gさんは3,000万円の投資によって、30年間の純利益と、売却代金の5,000万円を得たことになるわけです(税金を考慮せず)。キャッシュフローが黒字であれば、価格が半値に下がっても損はしないのです([図表]参照)。

しかし、Gさんが頭金ゼロでローンを組んでもっと多くの額を返済しなければならず、キャッシュフローが赤字でさらに物件に競争力がなく家賃が暴落、空室率も高いなどの悪条件が重なったりすればどうなるでしょう。価格が半値になると大損、という可能性もあります。ローンを返しきれず、売るに売れない、別にお金を用意しなければならない、場合によっては自己破産かもしれません。

価格の上昇は期待しにくく、価格は下がると想定するのが現実的です。そして、「最低を確保」するためにも、表面利回り6%は死守するべきでしょう。

「想定外」のアクシデントに見舞われることも想定に入れる

最低を確保しても、世の中には想定外のことが起こります。コロナ禍もそうです。せいぜい2、3カ月、長くて半年だろうと思っていたのに、2年、3年と影響が続き、テナントが退去して苦戦する物件も目立ちました。誰も予想しなかった困難が舞い降りてくる、「ブラックスワンがやってきた」ような状況に見舞われる可能性にも備えておきたいところです。

たとえば年間家賃100万円の物件を3,000万円・利回り3%で買ったとします。もし景気が後退すると利回りが10%程度でないと売ることができず、1,000万円くらいまで値下げしなければなりません(100万円÷1,000万円×100=10%)。

そうなるとローンを返しきれない可能性が高いですから、持ち続けざるを得ない場合もあります。そのうえ不景気で家賃も下げなければならず、利回りはさらに下がります。退去者が出れば入居者を募集しなければなりませんが、不景気で空室率が高くなっていますから、入居者獲得のために広告料が必要になるかもしれません。

「最悪の事態」でも生きられないなら不動産投資はNG

こういう話をすると、「不安を煽っている」などと言う人もいますが、投資物件の仲介という業務をする以上、リスクを説明するのは重要な仕事です。最悪の事態に陥っても大丈夫(生活に支障がない)という人でなければ、不動産投資は勧められないし、そういう人でなければ買ってはいけないのです。最悪どうなるかを説明するのは当たり前です。

株式投資では、証拠金を入れると、その何倍もの資金を投資したのと同じ成果が得られる信用取引という投資手法がありますが、一定以上の投資経験がある人でなければ取引ができません。期待できるリターンが大きい代わりにリスクも大きいため、相応な知識と経験が必要とされるのです。

不動産投資は1,000万円単位の借金をして行うものなのに、いともたやすく投資する人がいるし、知識や経験も問われない。そしてそれを守る法律もありません。いくら慎重に考えても考えすぎと言うことはないのです。

失敗したら、早めに「損切り」するしかない

キャッシュフローがマイナスで、なおかつ将来性がない物件を、表面利回り4%台、3%台で買ってしまったという場合は売却するしかありません。たとえ、それを勧めてきた業者がどんなにいいことを言ったとしても、です。

表面利回り3〜4%台とは、得られる家賃収入に対して価格が高い、価格が高いわりに家賃収入が低い、ということであり、相当危険な水準です。3〜4%台は、好景気が続く台湾や中国沿岸部の実態に匹敵する利回りです。

ご存知のとおり、台湾や中国沿岸部と日本とでは経済の発展度合いが大きく異なります。この20年間GDPがほとんど伸びていない国の不動産が、10年で5倍、10倍になる国の不動産と同じ価値であるというのは、どう考えてもおかしい数字です。これはアベノミクスとコロナバブルによって溢れたお金が、不動産と株に流れた結果です。

繰り返しますが、物件価格の上昇を期待するのは難しく、キャッシュフローがマイナスになれば多くの場合、損失が広がるだけです。

さらに、金利上昇などをきっかけに不動産市場が崩れ始め、万が一、2011年当時の水準まで景気後退するようなことがあれば、表面利回りが10%程度になるまでに価格を下げなければ売却できません。そうなれば数百万円の補填では済みません。

そうなる可能性がなきにしもあらずという状況ですから、そうならないうちに売った方がいい。価格が上がると思うケース以外は、損切りが合理的な判断だと思います。

滝島 一統

株式会社光文堂インターナショナル

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)