俳優の松下洸平が主演するTVer初のオリジナルドラマ「潜入捜査官 松下洸平」(9月5日より毎週火曜、金曜昼12:00より配信)。松下が実は警視庁の捜査官で、15年前から芸能界に潜入。マフィア疑惑を持つ大物俳優の捜査をしていた、という設定で繰り広げられる異色のサスペンスコメディーだ。

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在京民放5局が全面協力する本作は、松下のほか、疑惑の大物俳優を演じる佐藤浩市を始め、馬場ふみか古田新太が本人役に挑戦。ドラマ内には、各局の人気バラエティー番組も登場し、リアルとフィクションが混在する異色のエンターテインメント作品となっている。

そんな話題満載の同ドラマを手掛ける小原一隆プロデューサーに、制作意図や裏話をたっぷり語ってもらった。

TVer初のオリジナルドラマ誕生までの道のり

――まずは「潜入捜査官 松下洸平」を制作することに至った経緯から教えてください。

僕はフジテレビからの出向で、TVerには他局からも同様の出向者がいるんですけど、こんなに民放各社が集まっているのはTVerしかないので、何か一緒にできるコンテンツが作れたらなと。そんななか、松下さんで面白いことができないか、というお話をいただいたことをきっかけに考え始め、各局の担当者を集めてブレストやアイデア出しをするなかで、最終的にこの形になりました。松下さんのお芝居を見ていて、サスペンスもので何かできないかな、というのが最初の軸でしたが、設定を考えるにあたってはブレストのなかで「容疑者、ホアキン・フェニックス」というモキュメンタリーの話題が出たこともきっかけの一つでした。

――本作は松下さんを始め、出演者が本人役を演じることだけでなく、各局の人気バラエティーがドラマ内に登場することも話題に。「TVerでドラマしか観ないユーザーに、バラエティー番組を観るきっかけにしてもらいたい」という意図があるそうですが、各局の調整など大変な部分も多かったのではないでしょうか。

そうですね。スケジュールの調整が1番大変でした。バラエティー番組は意外とまとめ録りしていることが多いんですね。「緊急SOS ! 池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレビ東京)は1~2カ月に1本の撮影ペースだったので、その調整をお願いするのも一苦労でしたし、いざ決まったら山口ロケで(笑)。企画的にはお願いしたいけど、スケジュールの問題でNGになってしまった番組もありました。

――「緊急SOS ! 池の水ぜんぶ抜く大作戦」のほか、「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ)、「全力! 脱力タイムズ」(フジテレビ)、「ラヴィット!」(TBS)、「あざとくて何が悪いの? 特別編」(テレビ朝日)とドラマ各話に人気バラエティー番組が登場。バラエティー番組の収録をしながら、ドラマも撮影するという今までにない撮影方法を敢行したとお聞きしました。

“潜入捜査官の松下さんが各番組に出演する”という設定ですが、ドラマのために特別に収録するわけではなく、それぞれ通常の番組としても放送されるので、各番組のスタジオにドラマのカメラを入れさせてもらって撮影しました。「ぐるナイ」「―脱力タイムズ」はスタジオが二つに分かれていたので、最終的に5、6台カメラを入れたんですよ。

――放送の一部がドラマ内に組み込まれるだけでなく、バラエティー番組の出演者の方は、それぞれドラマ内で見どころとなるシーンを担っていますね。

ナインティナインさんは過去に松下さんと共演されていたので、2人にお芝居をしてもらう、というよりは和気あいあいした雰囲気を出してもらいたかったので、ほぼすべてアドリブでお願いしました。岡村(隆史)さんは「役作りしてきたのに、なりゆきでいいよと言われてプランが崩れた」なんておっしゃっていました(笑)。あとは、「あざとくて—」の収録に出てきたエピソードを監督がドラマで活かしたいと、収録のあとに台本を変えました。すでに放送済みのバラエティー番組も、このドラマの配信にあわせてTVerでの再配信をお願いしているので、ドラマとあわせて見てもらえると面白いと思います。

――見る度に新たな発見がありそうですが、繰り返し見るときの注目ポイントは?

細かいところまで見ていただきたいですが、実は、第1話と最終回のとあるシーンは同じ日に撮りました。朝に「ラヴィット!」に出演して川島(明)さんとのシーンを撮って、そのあとに「ぐるナイ」の収録でナイナイさんとのシーンを撮影という、その日は大変な1日でしたね。最終回の方を先に撮ったにも関わらず、松下さんの切り替えもすごかったです。

■松下洸平と再びタッグを組むなら”ラブコメ”に!?

――本作はTVer初のオリジナルドラマ。今後もTVerのオリジナルコンテンツを増やしていく予定はありますか。

テレビコンテンツの面白さを配信で伝え、地上波に戻ってきていただく、というのがTVerの趣旨でもあるので、率先してオリジナルコンテンツをどんどん量産していこうとは、あまり考えていません。オリジナルコンテンツを作っても放送局にメリットがないとやる意味がないのかなと。TVerのオリジナルコンテンツを見て、テレビコンテンツの面白さに気付いてもらえるようなものを作っていきたいですね。あとは、民放5局が制作協力してくれた本作のようにTVerでしかできないもの。僕が今後フジテレビに戻ったとしても、他局の番組とコラボするのは難しいですから。

――次に制作するなら、どんな内容に挑戦したいと思っていらっしゃいますか。

今のところ、全くアイデアはないんですけど(笑)。それこそ在阪局の皆さんからは「次は大阪のバラエティー番組で!」というお話もちらほらいただいているので、もしかしたら…ということはあるかもしれません。僕は放送局出身なので、やっぱり放送局が作るコンテンツは面白いと思うんです。今はいろいろなコンテンツがあふれていますけど、テレビの面白さに気付いていただけるようなコンテンツを生み出していきたいですし、TVerにはローカルの番組も多いので、まだユーザーが出会えていないけど面白い番組に焦点が当たるような企画を実施していきたいですね。

――もし、次回作で再び松下さんとタッグを組むなら?

お会いする前は誠実で真面目な印象だったんですけど、お会いしたら思ったよりも気さくで。今回演じてもらった本人役もそうですが、真面目だけど根はポップでおちゃめな方なのかなと思ったので、次回はラブコメとか、もっと遊べる役をお願いしてみたいです。

■取材・文=吉田光枝

「潜入捜査官 松下洸平」キービジュアル/(C)TVer