企業がSDGsに取り組むうえで、「つくる責任」「つかう責任」に加え『すてる責任』についても、企業側から生活者に積極的に働きかける必要があるでしょう。本記事では株式会社 YRK andの杦浦克彦氏が、企業の新しい「すて方」である「サーキュラー・エコノミー」について解説します。

「サーキュラー・エコノミー」とは?

サーキュラー・エコノミーとは「循環型経済」ともいわれ、従来の「原料調達→製造→販売→使用→廃棄」という大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済(リニアエコノミーまたは直線型経済)とは違い、使用済みの製品をまた新たな資源として製品化や原料化し活用することで、廃棄物を出さず資源を循環させる仕組みです。それによって、天然資源の採取や消費を抑制し、廃棄物埋め立てなどの環境汚染を防いで持続的な社会を実現させる、生産と消費の新しいあり方です。

日本が推進してきた従来のリデュース(ごみを減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(再利用する)の3R活動は廃棄物の発生が前提とされている概念。これとサーキュラー・エコノミーは「余分な資源の採掘はせず、必要以上に製品をつくることなく、廃棄物を資源化することでずっと使い続ける」という意味で大きく異なります。

つまり、メーカー・小売・回収・リサイクル事業といった、幅広い業種の企業を含むサプライチェーン全体での連携が必要となるほか、生活者に対しては消費スタイルそのものの変化を求めることにもなります。

「サーキュラー・エコノミー」を企業が実現するには

スーパーのレジ袋は有料に、スタバストローは紙に…

たとえば、2020年7月1日、スーパーやコンビニエンスストアレジ袋の有料化がスタートしました。これは、地球規模で環境への負荷が懸念されているプラごみ対策の一環として始まりましたが、皆さんのなかにも、レジ袋を買わずエコバッグを持ち歩くようになった、あるいは手持ちのバッグに入れるようになったという方も多いのではないでしょうか。

また、大手コーヒーチェーンのスターバックスも、2020年1月に紙製ストローを全店に導入し、2021年4月にはストロー不要のカップでアイスドリンクの販売を開始したのは記憶に新しいところでしました。舌触りや使い心地に対するユーザーからの不満について、スターバックス側は「紙ストローの品質改良」で満足度向上に努めることをコメントし、プラストローへ戻すことをしませんでした。

このように、必要以上にプラスチック製品を作らない、使わないという企業および生活者の意識と行動の変化が、やがて循環型経済の実現につながっていくのだといえます。

法改正が「サーキュラー・エコノミー」実現の追い風に

「プラスチック資源循環促進法」とは?

同じ「脱プラ」の動きでいうと「プラスチック資源循環促進法」が2021年6月11日に公布され、2022年4月の施行を目指して進められています。

この新法は、

・プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計

・ワンウェイプラスチックの使用の合理化

・プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化等

を基本方針として定めています。

家電リサイクル法などの従来のリサイクル法と異なるところは、プラスチックを使用した製品の設計・製造段階から廃棄までの各段階で資源循環を促すことを目標にしているところにあります。

簡単にいうと、

①「つくる」ときには再資源化を前提に素材選びや組み立てなどを考慮

②「うる(≒つかう)」ときには余分なものや不必要なものは提供しない

③「すてる」ときには分別収集はもちろん、再商品化にあたっての取り組みを、企業と自治体が連携し、廃棄物の自主回収まで含めて行う

上記を定めた法律になります。

このなかでも、特に③に注目してみましょう。現在、プラスチック製品を廃棄するときは自治体によって可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみとそれぞれ区分が異なります。また、容器包装リサイクル法で定められたマークのついた製品容器やびん、PETボトル、お菓子の紙箱やフィルム袋、レジ袋などは、資源回収を目的として資源ごみの日に出すことが定められています。

「プラスチック新法」が「サーキュラー・エコノミー」の実現に果たす役割

「プラスチック資源循環促進法」が施行されると、たとえば、菓子の包装紙が紙とプラスチックに分けられているものも、再資源化を前提にどちらかに統一するパッケージ設計が望ましいということになります。また、いまは自治体によっては可燃ごみに定義されている歯ブラシが、自主回収対象となってドラッグストアの「使用済み歯ブラシBOX」へ集められるようになるかもしれません。

この法律は、罰則規定はいまのところありませんが、それゆえ生活者、企業、自治体すべての人に脱プラ問題の当事者として参加することを求めています。それぞれがそれぞれの立場で連携し課題解決のために動く役割を明確に定めている法律なのです。

「サーキュラー・エコノミー」の実現に向けて果たすべき責任

すてる責任を、生活者と企業はどう担うべきか?

このように、社会は急速にごみ削減、ごみゼロといった方向へ舵をきりつつあります。しかし、たとえば上記新法の最も重要な製品回収・リサイクル段階においては、生活者の協力が必要不可欠です。そして、それをサポートするのが自治体だけでは、不十分なのではないでしょうか。企業が生活者の「すてる責任」までサポートすることで、これからの社会が目指す循環型経済へ近づくことができるのではないでしょうか。

杦浦 克彦

株式会社 YRK and

Brand Creativ Unit(BCU)

コミュニケーション・プランナー

(※写真はイメージです/PIXTA)