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価格の再高騰が懸念される卵

去年と同じものを食べているのに、お財布からお金が飛んでいく。物価高を実感している人も多いだろう。だが、食品価格の高騰はまだ序章。この秋、値上がりするものとはーー。

8月18日、家庭で消費するモノやサービスの値動きを示す最新の消費者物価指数が発表され、去年より3.3%も上昇したことが明らかになった。節約アドバイザーの丸山晴美さんがこう解説する。

「単純にいえば、1年前より3%ほど家計の負担が増えていることになります。しかし食品だけに限れば10%ぐらいの負担増、つまり月6万円を食費に使っていれば6000円増えている感覚の人が多いはずです」

はたして、どんな食品が値上がるのか見ていこう。

「日本は小麦の約8割をアメリカやカナダなどからの輸入に頼っていますが、異常気象による干ばつでカナダの小麦の収穫量が減っています」(丸山さん)

円安、原材料価格や物流費の高騰に加え、ロシアウクライナ侵攻で小麦の価格が高騰していた。そこに世界的な異常気象が拍車をかけた形だ。

「小麦の価格は安定供給のため政府が買い付け、製粉業者に売却します。その売渡価格は毎年4月と10月に見直されるので、注意が必要です」

小麦の価格高騰は、パンや麺類、菓子類などにも影響を与える。

■年末に高まる需要で牛乳や牛肉が価格高に

国内で生産されるものも、歴史的な猛暑の影響を受けている。気候変動が家畜に与える影響について研究している北里大学医学部の鍋西久准教授が語る。

「すでに卵は、暑さで鶏がエサを食べないことから、生産量が少なくなったり、卵が小さいなど品質が悪くなったりしています。また、秋から冬にかけて卵の消費量が増えますが、その時季に卵を産ませるために育てられていた鶏が猛暑で死亡したり、発育が悪くなったりしています。昨冬に鳥インフルエンザの猛威により大量に殺処分した影響もいまだ残っており、秋にかけて品不足から価格が上がる恐れがあります」

今年4月に卵の平均価格は過去最高を記録したが、その後、価格は落ち着いた。だが、この秋にまた高騰する可能性があるという。

酷暑は牛乳の価格にも影響を与えているという。コロナによる消費量の減少で、牛乳が余り廃棄されたことは記憶に新しいが……。

「じつは飼料価格や資材の高騰によって酪農家の廃業が過去にないスピードで増えていました。加えて、暑さによって乳牛が体調を崩し、牛乳の生産量が低下しています。涼しくなれば牛乳の生産も増えますが、残暑も厳しく、影響は秋以降まで引きずりそう。秋からクリスマスにかけて、牛乳やバターやチーズなどの乳製品の消費量が増えますが、そのときに生乳が不足することで、牛乳や乳製品の価格上昇が考えられます」

では、牛肉はどうだろうか?

「肉牛も熱中症や体調不良など、猛暑の影響を受けます。エサを食べないことで発育が悪くなり飼育日数が延びれば、その分、高騰している飼料代がかかります。また暑さ対策に牛舎に冷房を設置すれば、電気料金が畜産農家に重くのしかかっています」

牛肉は年末にかけて需要が高まるので、品不足による価格の高騰は避けられそうにない状況だ。

「一方、豚、鶏も暑さによる死亡が多数報告されていますし、発育不良で飼育日数が延びています。ただし、豚肉や鶏肉は年末にかけて需要が増えることはないので、出荷量が減ったとしても、価格は大きく変動しないのではないでしょうか」

小麦や肉などの価格の高騰は、当然、それらを加工した加工食品の価格にも影響を及ぼす。さらに、人件費や輸送費、製造のための電気料金の上昇なども、加工品の価格を押し上げている。

加工肉や冷凍食品、菓子などの加工された食品や飲料も、この秋の値上げが予定されている。前出の丸山さんが解説する。

「秋は店頭の商品が、夏仕様から秋冬仕様に変わります。商品パッケージの変更に合わせると、価格改定もしやすい。だから、9月と10月は値上げラッシュが続くのです。今年の9月以降は、みそなどの調味料、菓子、飲料、アイスなど幅広い品目で値上げが行われる見込みです」

すでに値上げが確定している主な商品は、前ページから続く上の表のとおり。どれも食卓でおなじみのものばかりだ。