足元、中国経済の先行き不透明感が強まるなか、香港・中国の株式市場はどのような動きが予想されているのか、東洋証券の龔静傑中国株アナリスト/香港ストラテジストと、山藤秋男中国株アナリスト/香港ストラテジストがそれぞれ解説します。

香港市場の8月動向と9月見通し

8月の香港市場…ハンセン指数は約9ヵ月ぶりの安値

中国経済の先行き不安、深刻化する不動産の債務問題や米ドル高・人民元安の進展などが嫌気され、香港市場は月初から下落基調が続いた。ハンセン指数は21日に終値ベースで約9ヵ月ぶりの安値を付けた。サウスバウンド経由の中国マネーは積極的に押し目買いを入れ、25日時点までの買い越し額は7月の158億HKDから611億HKDに膨らんだ。

個別銘柄では、安踏体育用品(02020)と百度集団(09888)は好決算発表を受け、大きく買われた。一方、大幅赤字転落の業績ガイダンスを発表した不動産大手の碧桂園控股(02007)は大幅安となった。

9月見通し…底堅い展開か、好決算銘柄に注目

◆ハンセン指数の9月予想レンジ……17,000~20,000pt

9月の香港市場は、底堅い展開となりそうだ。下落局面で積極的な押し目買いを入れる逆張り志向の中国マネーが相場を下支えしよう。

人民元相場の方向性を左右する米金融政策の動向に注目。19~20日に米FOMCが開催する予定。15日に発表される中国の主要経済指標にも目が離せない。景気回復の足取りは弱いと見る向きが多いが、さらなる景気支援策への期待が根強い。香港政府は香港市場の流動性を高めるためのタスクフォースを立ち上げる計画。その進展にも期待したい。

6月中間期の決算発表シーズンが終了し、好業績銘柄を物色する流れは継続しよう。

中国市場の8月動向と9月の見通し

8月の中国市場…外資の流出加速、上海3,100pt割れ

8月の中国市場で各指数は大幅安。25日に上海総合指数は年初来安値3,053ptまで売られ、深セン成分指数は約1年4ヵ月ぶり安値の10,091ptまで下落した。

中国経済の減速懸念や不動産債務問題に対する警戒感が相場の重し。対米ドルでの元安基調(約9ヵ月ぶりの安値水準)もあり、外資によるA株売越額は822億元(月初~8/28)まで膨らんだ(7月は470億元の買い越し)。

一方、当局の金融緩和(LPRの1年物を3.55%⇒3.45%に引き下げ)や証券取引印紙税の税率引き下げ(0.1%⇒0.05%)などが相場の一定の下支え材料になった。

9月の見通し…自律反発か、アップル関連株に注目

◆上海総合指数の9月予想レンジ……3,000~3,250pt ◆深セン成分指数の9月予想レンジ……9,500~11,500pt

9月の中国市場で各指数は自律反発の動きが強まりそう。8月以降の下落ペースが速く、割安感からの買い戻しも入りやすいだろう。

上海総合指数は節目の3,000pt、深セン成分指数は10,000pt近辺で下げ渋り、下値は限定的か。中秋節・国慶節の大型連休(9/29~10/6)をきっかけに旅行・消費関連株が見直される動きもありそうだ。

米アップルが12日に「iPhone 15」などの新製品発表イベントを開催予定。OEMメーカーの立訊精密工業(002475)などの値動きを注視したい。

29日は中秋節関連の祝日で休場。

龔 静傑

東洋証券香港現法亜洲有限公司

中国株アナリスト/香港ストラテジスト

山藤 秋男

東洋証券株式会社上海駐在員事務所

中国株アナリスト/ストラテジスト

(※写真はイメージです/PIXTA)