法改正により「雇用の安定」が図られ、「同一労働・同一賃金」で格差是正の下地もできた……非正規社員の待遇改善に向けて、さまざまな取り組みがされていますが、実際はどうなのでしょうか。みていきましょう。

仕方がなく非正規社員…全国で180万人

総務省『労働力調査』(2022年)によると、正社員は3,588万人、非正規社員は2,101万人、非正規社員の割合は36.9%でした。2000年代の法改正で、非正規雇用は一気に増え、以降は緩やかな右肩上がりとなっています。

非正規社員の内訳をみると、「パート」が最も多く1,021万人。「アルバイト」が453万人、「契約社員」が283万人、「派遣社員」が149万人、「嘱託社員」が112万人と続きます。

2013年施行の改正労働契約法、2015年施行の改正労働者派遣法により、非正規雇用として働く一部の人々には雇用の安定を図る措置が講じられるようになり、正社員化が進んだことで、若干非正規社員の割合は減少しましたが、「働く高齢者」の増加もあり、働く人の3~4割は非正規社員という状況は続いています。

非正規社員というと正社員との格差にクローズアップされますが、多くが自発的な非正規社員。

・自分の都合のよい時間に働きたい…34.0%

・家計の補助・学費等を得たいから…18.5%

・専門的な技術等をいかせる…13.1%

・通勤時間が短いから…6.0%

・家事・育児・介護等と両立しやすいから…3.0%

出所:総務省『労働力調査』

一方で「正社員の仕事がない」と、非自発的な非正規社員は8.7%。少数派ではありますが、数にすると180万人以上と結構なインパクトです。また若年層の非正規雇用者は、現在の就業形態から変わりたいとしている人が多く、正社員化の希望が高いことが確認できます。

さらに長期間の非正規社員の経験は、どちらかというとマイナス評価。年を重ねれば重ねるほど、非正規社員からの離脱は困難であることは、就職氷河期世代の40~50代で非正規社員→正社員への転換がなかなか進んでいないことからも明らかです。

ーーいつかは正社員

そう思っているなら、なるべく早いうちに行動するのがベストです。

非正規の1/4は「正社員と同等」または「それ以上」の仕事をしている

前出のとおり、非正規社員については正社員との賃金格差など、待遇について問題になりがち。そこで正社員への転換のほか、「同一労働・同一賃金」など、改善の動きがみられます。しかし、

――結局、おれたちは捨て駒

雇用が不安定でセーフティネットも不十分。低収入で経済的自立も困難、しかもキャリア形成も不利……そんな非正規社員のボヤキは、いまだに聞こえてきます。そこで公益財団法人連合総合生活開発研究所『2022年 非正規雇用労働者の働き方・意識と労働組合に関する調査』で非正規社員の状況をみていきましょう。回答者については以下の通り。

性別:男性26.2%、女性72.8%

年齢:平均45.0歳

雇用形態:パート・アルバイト73.5%、契約等16.0%、派遣7.9%、嘱託1.8%

最終学歴:中学4.4%、高校41.8%、専修等17.0%、短大等15.4%、大学20.6%、大学院0.8%

配偶者:有・同居54.4%、有・別居2.3%、無43.3%

まず「仕事の内容と難易度」についてみていくと、「正社員と同じ内容で、同程度の仕事」が26.4%、「正社員と同じ内容で、正社員よりも高度な仕事」が2.5%、 「正社員と同じ内容で、正社員よりも軽易な仕事」が28.2%、「正社員とは異なる仕事」が25.6%。4分の1以上が正社員と同程度以上の仕事をしています。

正社員と同じ内容で、同程度以上の仕事、または軽易な仕事と回答した約6割の人たちに給与水準を聞いたところ、「賃金水準は低くかなりの格差がある」が36.0%、「賃金格差はあるが許容できる程度である」が36.6%、「賃金水準はほぼ同等以上である」が8.3%。許容できるかできないかは別として、仕事内容・難易度以上に格差が生じたままであることは明らかです。

2021年4月から、すべての企業に「同一労働同一賃金」が適用されましたが、実際に同一労働であるかどうかの判定は難しく、また人件費抑制の観点からも、あえて正社員と同じ仕事はさせないという企業も多数。格差是正に向けて、前進しているとは言い難い状況です。

そんな非正規社員の平均時給は平均1,141円。一方、厚生労働省の調査によると正社員(平均年齢42.6歳)の平均時給は1,975円。1.7倍の差が生じています。もちろん、正社員よりも軽易な仕事をしているケースも多いので一概に少ないとはいえませんが、正社員との格差に納得できない非正規社員が36.0%もいることから、改善の余地は大いにありそうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)