『CLANNAD』は、主に人と人――とりわけ「家族」の絆を描いた作品ですが、ストーリー序盤を象徴するキャラクターはやはりこの「伊吹風子いぶきふうこ)」と言えるでしょう。メインヒロインを始めとして、一癖も二癖もある登場人物が多いこの作品の中で、ひときわ異彩を放っているキャラクターで、そのくせ最後にはボロ泣きさせてくれる、なかなかニクいヒロインです。


【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】


ヒトデを彫り続ける不思議ちゃん

 そもそも風子と主人公の朋也(ともや)の出会いは、誰もいない教室で黙々と風子がヒトデの彫刻(最初は朋也はただの星だと思っていたようですが、後に風子本人から「これはヒトデです」と指摘されます)を作っていたところから始まります。手に怪我をするのも構わずに彫刻を続ける姿を憐れんだ朋也から、彫刻刀を没収された風子は「手は痛くないから返してください」と朋也へ詰め寄ります。「じゃあ俺とハイタッチしろ」と言われ、わざわざバスケのシュートモーションから始める(そもそもハイタッチがわからず、「バスケのシュートが決まった時なんかにやるアレだよ」と説明されたのが元凶)その姿が可愛らしくてたまりません。

■大好きなお姉ちゃんのために!

 そんな風子ですが、ずっと彫刻を作っていたのには理由がありました。近々風子の姉が結婚するということで、ヒトデの彫刻は結婚式の招待状代わりだったのです。風子の姉が知り合いだったこともあり、朋也とメインヒロインの渚(なぎさ)は風子に協力することにします。特に渚は家でも家族と共に彫刻を作るほどで、風子はそれを学校中の生徒に配り歩くのでした。もちろん中には風子のヒトデを良く思わない人もいますが、それでも諦めないひたむきさには強く心を打たれるのです。

■諦めなければ努力は報われる

 さて、そんな折朋也と渚は当の風子の姉から衝撃の事実を聞かされます。それは「伊吹風子」という女子生徒は2年前事故に遭い、今も隣町の病院で眠り続けているということ。

 つまり、朋也たちの前にいた風子は生霊だったのです。しかも風子に関する記憶は、風子の「お姉ちゃんの結婚式をたくさんの人にお祝いしてもらう」という目的が達成に近付くほど、周囲の人間から消えていってしまうのです。ヒトデの彫刻は確かに手元にあるのに、それがなぜあるのか、誰にもらったのかわからない・・・という人たちが増えていくのです。しかし結婚式当日、式場である学校にはたくさんの生徒がお祝いにかけつけます。「前日まですっかり忘れていたのに、このヒトデを見たら思い出した」と。望み通りたくさんの人に姉の結婚式を祝ってもらった風子の嬉しそうな表情は、もう涙なしには見られません。

 メインストーリーでの風子はこの結婚式の終了以降、ほとんど登場しなくなりますが、その後も時折朋也のピンチに生霊として現れ、ちょっと的外れな方法でピンチを救おうとし(て結局成功せず去っていき)ます。この時既に朋也や渚には風子についての記憶はなく「なんだったんだろう?」という感じになるのですが・・・。

 そんな何ともいえない不思議な魅力を持った「伊吹風子」、確実にクセになります(そしてきっとヒトデが少し好きになります)。ぜひ実際に作品をご覧になって、彼女の魅力を実感して欲しいです。


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★記者:凛廻(キャラペディア公式ライター)

(C)VisualArts/Key/光坂高校演劇部

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