平均給与443万円。国税庁が発表したこの数字に、世間は騒然となりました。総務統計局家計調査などをもとに、日本人の生活について見ていきます。

平均給与443万円…賞与の下落「リーマンショック級」

国税庁令和3年分 民間給与実態統計調査結果』が公表されました。1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は443万円。令和2年度は433万円でしたから、10万円分数値を上げています。

1年を通じて勤務した給与所得者の平均賞与は67万円です。令和2年度は65万円、令和元年度は70万円でしたが、この令和2年度の「5万円」という減少幅はリーマンショック後以来の大きさでした。令和3年度も回復はいまひとつであったことがうかがえます。

平均給与443万円ですと、月の収入では37万円ほどになります。前年の収入によって多少の差はあるものの、手取りは29万円ほどです。2人以上の世帯の消費支出が約27万5,545円ですから(令和5年6月分/総務統計局家計調査)、家族を養うにはあまりにカツカツな金額であることがわかります。

なお、総務省『家計調査 2022年(令和4年)貯蓄・負債の概要』より、年齢別2人以上の世帯の貯蓄額について見てみると、40歳未満「812万円」、40歳~49歳「1,160万円」、50歳~59歳「1,828万円」、60歳~69歳「2,458万円」、70歳~「2,411万円」となっています。

お給与、貯蓄額ともに格差が鮮明になる昨今の日本社会。ちなみにお隣中国では、「共同富裕」との言葉のもと格差是正の動きを活発化させており、習近平国家主席は、富裕層に対して寄付を呼び掛けています。

日々の暮らしで精いっぱいながらもさらに不安になるのが「老後の生活」。老後資金2,000万円問題を発端に急激に関心が高まりました。

老後不安の波はエンタメ業界にまで。天海祐希さん主演映画『老後の資金がありません!』も上映されました。本作品、法務省タイアップしており、成年後見制度や遺言書の保管方法について、HPにポスターとともに掲載されていました。

日々の暮らしで精いっぱいでも眼前に迫る「老後生活」

ざっくりとした映画の内容は下記のとおり。

“老後の資金をコツコツと貯めてきた……はずなのに! 身の丈に合っていたはずの篤子の生活が、突如綻び始めたのだ。入院していた舅の今際の際に、章の妹・志津子(若村麻由美)から喪主を押しつけられ、葬儀代400万円近くを支払うことに。折しも、密かに正社員登用を期待していたパート先をリストラ……”(『老後の資金がありません!』公式HP)

……「ウチの家のことかな」と思ってしまう人もいるかもしれません。高齢化核家族化が進むなか、相続に関する問題も活発に議論がなされるようになりました。

相続なんてお金のある人の話、と考えるのはNG。相続のシーンでは財産はもちろんのこと、借金も遺された家族が引き継ぐことになります(相続放棄等、回避する手段はあります)。全然あったことのない遠い親戚の借金がまわりまわって私のもとへ……といったトラブルも発生しているのです。

年金はどうなる?厚生労働省のコメントによると…

日本全体の「お金への不安」はかつてないほどピークに高まっている今、はたして日々の生活、そして老後は“大丈夫”なのか? 頭をもたげるのは、「新首相はどういう対策をするのか…」という点です。岸田総理は、令和を生きる日本人に向けて、次のような政策を掲げています。

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■人生100年時代の不安解消

⇒ 働き方と関係なく、充実したセーフティーネットを受けられるよう、働く方は誰でも加入できる「勤労者皆社会保険」を実現。

■子育て世帯の住居費・教育費を支援

⇒ 中間層の拡大に向け、分配機能を強化し、所得を引き上げる、「令和版所得倍増」を目指す。特に、子育て世帯にとって大きな負担となっている住居費・教育費について、支援を強化。

■あなたの所得が増える「公的価格の抜本的見直し」

⇒ 看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士など、賃金が公的に決まるにも関わらず、仕事内容に比して報酬が十分でない皆様の収入を思い切って増やすため、「公的価格評価検討委員会(仮称)」を設置し、公的価格を抜本的に見直し。

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民間の平均給与が443万円、手取りが29万円ほどである今、所得倍増という言葉に、どんな思いを抱くでしょうか。

年金はどうなる?厚生労働省のコメントによると…

なお、今後の年金の行く末に関しては、厚生労働省が正式コメントを発表しています。「少子高齢化が進行すると、若い世代の年金額は減ってしまうのではないか?」という問いへの答えが、下記になります。

“A.年金制度は、5年に一度、健康診断のような形で行う「公的年金の財政検証」によって100年先までの見通しを検証しており、令和元年の財政検証では、若い世代が将来受け取る年金は、経済成長と労働参加が進むケースでは、引き続き、将来の時点で働いている人々の賃金の50%を上回る見込みです。年金制度が破綻している、若い世代は年金を受け取れない、といったことは全くありません。”

生活格差、老後不安。お金の問題が「解決」する設計図は描けるのでしょうか。コロナ禍がひと段落し、日本はまた新たな段階に至っているといえますが、国民全体が感じている心労の深い闇はその濃さを増す一方です。

(※写真はイメージです/PIXTA)