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日本が世界に誇れる点は、国民のほとんどが健康保険に加入し、安全な医療に安い費用でアクセスできる「国民皆保険制度」だと思っています。その国民皆保険制度を根底から揺るがしかねないのが「マイナ保険証」です。

様々な要素がありますが、ここでは中でも私たちの生活に影響する「資格確認書」について考えてみたいと思います。

マイナンバーカードの保有率は71.7%(’23年8月31日総務省)。つまり、マイナンバーカードを持っていない方が約3割います。’24年秋、従来の健康保険証が廃止された後、こうした持たない方の保険証代わりになるのが「資格確認書」です。

当初、資格確認書は申請が必要で、自動的に送られてくる従来の保険証と比べ不便だと不評でした。すると、8月4日の記者会見で岸田首相は「資格確認書を申請の不要なプッシュ型にする」と発表しました。

ただ実際は、マイナ保険証を持っていない方全員にプッシュ型で送るのは不可能だといいます。なぜなら、マイナ保険証をいったん取得して自主返納した人は、マイナンバーと保険証の紐づけを解除できないからです。

保険組合からすると、紐づけられた人はマイナ保険証を持っている人。当然ながら、資格確認書を送付しませんし「資格確認書を申請してください」などという案内も出しません。

自分で気づいて申請しない限り、マイナ保険証がないのに資格確認書もなく、無保険状態になりかねません。しかも会社員などは給料から保険料を天引きされ続けているにもかかわらず、です。

政府は今後、マイナンバーと保険証の紐づけを自分で解除できるソフトを開発するといっていますが、いつになることやら。

しかも、資格確認書がプッシュ型で送られてくるのは当初1回だけという可能性も。政府の資料には「当分の間」との文言があったからです。今は批判を逃れるためプッシュ型にするといい、ほとぼりが冷めたら「自分で申請しろ」ということでしょうか。

政府はマイナンバーカードの信頼回復のため、現在「総点検」を進めています。ですが、いまチェックしているのは3411ある保険組合のうち、1313組合だけ。残りの約2000組合は期限が設定されていません。「チェックしない」も同然ではないでしょうか。それにもかかわらず、中間報告で1069件の紐づけミスが発覚。これは氷山の一角だとしか思えません。

立憲民主党は、従来の健康保険証を廃止し、マイナ保険証を持たない人に資格確認書を発行すると、毎年、最低でも5億5000万円のコストがかかると試算しています。血税は、マイナ保険証への一本化より、家計を支える物価高対策に使ってもらいたい。岸田首相に、国民の声を聴く耳はないのかもしれません。