福岡空港の「門限」問題から、10時間以上も乗客が機内に缶詰状態になるケースが発生しました。一方、アメリカでは相次いで乗客を機内に留め置いた航空会社に“罰金”を徴収。交通機関のトラブルに、ひとつの解決策を提示しています。

11時間にわたって旅客機内に閉じ込め

2023年9月5日(火)の夜、フィリピンの首都マニラから福岡へ向かっていた航空便が福岡空港の“門限” に間に合わなくなり、マニラへ引き返す事態が発生しました。

当該機は20時ごろに福岡空港に着陸しようとしたものの、それを取り止め上空で待機。ただ、燃料が足りなくなる恐れがあったため、北九州空港にいったん着陸し、そこで給油したものの、今度は福岡空港の“門限” を超えてしまったため、結局フィリピンへと引き返したというものです。

その間、乗客は機内に缶詰状態となったため、11時間にわたり拘束された挙句、マニラで降ろされたとのことでした。

これに関して、日本国内では福岡空港の“門限” や、北九州空港での乗客対応などについて様々な意見が出ていましたが、筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事)は同時期にアメリカ政府が採った事例が参考になるのではないかと考えます。

それは1週間ほど前の8月28日に、アメリカ運輸省がアメリカン航空に対して行った処分です。これはアメリカン航空が乗客を機内で規定時間以上待たせたことに対し、罰金410万ドル(日本円で約6億円)の処分を下したというものです。

アメリカの法律では、離陸前の飛行機で、3時間を超えて乗客を機内で待機させる場合は、航空会社側で乗客が機外に出る機会を与えなければならないと義務付けています。なお、この410万ドルは、航空会社を対象にした罰金の額としては史上最高額であるとも発表されています。

罰則は民間会社に改善を促す効果も

今回のアメリカン航空の処分は、2018年から2021年の間に長い遅れを生じた米国内の43便を対象にしています。影響を受けた乗客の総数は発表によると5821人だそうで、これらの便では規定を超える待ち時間の間に、乗客は機外に出られなかっただけでなく、食事も飲み物も与えられなかったといいます。

この処分は、アメリカの混雑空港での長時間待機が慢性化していることに対して、航空会社による改善努力を促そうというアメリカ運輸省の意図の現れだといえるでしょう。

こうした交通機関における長時間の閉じ込めは、たとえば日本の鉄道でもしばしば報じられます。立ったままの乗客が多い混雑列車において、長時間の缶詰状態が発生することがあります。トイレのない車両も多いですし、窓が開かない車両も増えています。そうしたなかで長時間、外に出られないのは普通に酷でしょう

そのようなことが発生すると、毎回のように鉄道会社側の対応が適切であったのか議論になりますが、前出のアメリカの3時間ルールは全員着席、しかも機内にトイレを備えた航空便に対して適用されています。責任の所在にひとつのけじめを設けているともいえます。

機内、もしくは車内で長時間にわたり乗客が閉じ込められるような事態は極力避けるべきです。もし事業者の方で対応が難しいのであれば、国の方、すなわち行政サイドで一定の指針を作る必要があるのではないでしょうか。

セブパシフィック航空のエアバスA320シリーズ(画像:セブパシフィック航空)。