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 まるで巨大なハムスター回し車か、はたまた第二次世界大戦の自走兵器「パンジャンドラム」を彷彿とさせる、自作の乗り物でアメリカからイギリスまで、大西洋横断を試みていた男が、海のど真ん中で逮捕されたそうだ。

 逮捕されたのは、フロリダ州の在住のアスリート兼活動家、レザ・”レイ”・バルーチ(52歳)。

 強力な台風が迫っていた8月26日、沿岸警備隊が大西洋をパトロール中、ジョージア州ティビーから110kmの沖合で奇妙な”乗り物”の内部で走る男性を発見。

 バルーチ容疑者によれば、彼が「バブル」と呼ぶ自作の水上バイクでロンドンまで”走破"するつもりだったのだという。

【画像】 ハムスター回し車の人間版で海を行く

 その乗り物は、まさにハムスター回し車のような構造で、中で人間が走ることで海の上を移動するようになっている。

 だがバルーチ容疑者が「バブル」と呼ぶ乗り物は、アルミ製のフレームに浮きを取り付けただけの簡素なもので、安全性に問題があることは明白だった。

 乗っていたレザ・”レイ”・バルーチ(52歳)によれば、バブルは6ノットで航海可能な船で、フロリダに船舶登録されているというが、発見当時に登録証の提示を求められたときにはそれを持っていなかった。

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乗り物から降りるよう説得するも難航、数日後にようやく降りる

 2023年8月26日、バルーチ容疑者を発見した沿岸警備隊は危険なのでバブルから降りるよう説得を試みたが、バルーチ容疑者はこれを拒否。刃渡り30cmのナイフで自殺すると脅してきた。

 さらに翌日、沿岸警備隊がバブルに乗り込もうとすると、手にワイヤーのようなものを握り、積まれている爆弾で自爆すると威嚇した。

 沿岸警備隊は食料と水を与え、台風が迫っていることを伝えながら、粘り強く説得。その甲斐あって8月29日、バルーチ容疑者はついに乗り物から降りたそうだ。

 バルーチ容疑者を乗せた沿岸警備隊の小型船は、9月1日にマイアミビーチの沿岸警備隊基地に帰投した。

 心配された爆弾については、嘘だったと自供している。

Man running on water inside 'bubble' for charity washes up on Florida beach

過去にもバブルで同様の事件を複数回起こしていた

 彼はもともとイラン出身で、同国の自転車ナショナルチームのメンバーでもあった。

[もっと知りたい!→]犬が必死に海の中を泳いでいる!沿岸警備隊が無事救助

 ところがラマダン(断食期間中)に食べ物を食べたり、マイケル・ジャクソンのTシャツを着たりしたことで同国で鞭打ちの刑にされ、2年間の懲役に服していたという過去がある。

 その後バルーチ容疑者はドイツに亡命し、平和を広め、権威主義に反対するために、自転車に乗って世界各国を旅するようになったという。

 走破した距離は地球2周分にもなる8万km。6大陸55カ国を駆け巡ったそうだ。

 2002年には、アメリカに不法入国しようとして逮捕されたが、アメリカ同時多発テロ事件の犠牲者のために走ると約束したことで釈放された。

 アメリカで暮らすようになってからは、バルーチ容疑者は、平和や公共事業のための慈善活動を行いながら資金を集めていると主張しており、過去にもバブルで航行を繰り返していた。

 今回のバブルでの大西洋横断もその一環だったという。

 しかし、2014年と2016年にはバミューダ・トライアングルを走りまわり、マイアミの沿岸警備隊から1万ドル(当時の為替で約100万円)の罰金を科せられた。

 2021年には、フロリダからニューヨークへ向かう途中、出発地点から48kmほど流され、救助された後に逮捕されている。

 しかし、慈善活動とは言え、危険な行為を繰り返し、沿岸警備隊に多大なる迷惑をかけていることも確かで、9月5日に「乗船妨害」と「港長命令違反」の容疑で刑事告発されたそうだ。

References:Man's attempt to cross ocean in 'human-powered wheel' fails / Florida man arrested trying to cross the Atlantic Ocean in a bubble / Florida man tried to travel to London by crossing Atlantic Ocean in hamster wheel: Coast Guard / written by hiroching / edited by / parumo

 
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巨大なハムスターの回し車のような乗り物で大西洋を横断しようとした男が逮捕