融資審査が終わると、金融機関側からは融資条件が提示されます。その際、最初に提示される条件をそのまま受け入れず、できるだけ安い金利を交渉するには、どうすればよいのでしょうか? 本記事では、融資の教科書製作委員会の著書『現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書』(ごきげんビジネス出版)より、不動産投資ローンの融資条件の効果的な交渉方法について解説します。

最初に提示される融資条件をそのまま受け入れてはいけない

稟議が通り審査も終わると、金融機関側から融資条件を提案されます。

たとえば、「1億円の物件に対して、9000万円の融資ができます。期間は20年、金利は2%でお願いできればと思います」といった具合です。他にも、「事務手数料として融資実行時に1%の手数料がほしい」と交渉されるケースや、一括返済時の違約金や物件調査手数料、コベナンツ手数料といった、さまざまなかたちで手数料を求められることもあります。

融資を受ける際に、最初に提示された条件は、そのまま受け入れてはいけません。融資金額と融資年数は許容してもいいかもしれませんが、融資金利は担当者や支店での裁量がある程度あるため、「この会社には1.5%で貸せるけれど、高金利で貸したいし、最初は1.8%でいってみるか」と内心では思うものです。金融機関も、できる限り金利は高く取りたいので、仕方ない部分ではあります。

交渉する際は事実と根拠、それと相手に損をさせない条件を一緒に伝えるように意識してください。たとえば、「あなたの支店で〇〇さんも取引があると思いますが、〇〇さんは金利1%と言われていたような……」「口座に1000万円を入れますから」「定期預金で500万円を組みますので」と伝えるのがよいでしょう。ひたすらに「金利を安くしろ!」と訴えたところで限界がありますし、担当者も上長に伝えにくいので、このような条件はできる限り提示してあげましょう。

金利を下げやすくなったのは、インターネットの発達も大きいと感じています。これまでは、一般の人たちが金利を知ることはほぼなかったのですが、今では調べればすぐにわかり、「あの人は金利〇%なのに、なぜ私は〇%なのか?」という話になるので、金融機関としても下げざるを得なくなったのです。

「A銀行のほうが金利が安い」という交渉方法は要注意

交渉のひとつの手段として、いくつかの金融機関に融資条件を出して競争させた方がいました。A銀行は20年で2%、B信用金庫では25年2.5%、C信用組合では25年3%となった場合、C信用組合に「B信用金庫が同じ融資期間で金利2.5%といっているので、これより安くなればC信用組合さんで取引しようと思う」といった具合です。

信用金庫信用組合には、その戦略が有効に働くときもあります。しかし、反対に「他行さんと競わせるなら、うちは遠慮しておきます」となるケースもあります。その金融機関からは、「金融機関と協力体制になく、融資条件を競わせるような方であるなら、今後もそういったことが続くと考えられますので……」と断られた方もいると聞きました。競争させること自体が裏目に出る場合もあるので注意が必要です。

実際、金利交渉のときに一声かけただけで、「5分だけ待ってください」と言われ、本当に5分後に金利が0.5%下がった人や、「別の銀行ではこの金利です」と伝えたら、「1週間時間をください」と切り返され、1週間後にその銀行と同じ金利まで下げてもらえた方もいます。

また、融資条件の際に、「返済猶予期間をつけられませんか?」と尋ねられることもあります。たとえば、全空物件を買ったとき、リフォームに半年程度かかり、家賃が発生するのがかなり先になるため、その間だけでも返済猶予をつけてほしいといったことです。すでに返済実績がある方の場合、可能なこともあるので聞いてみましょう。

融資実行、返済スタート

返済の日付は家賃振り込み日のあとに指定する

融資実行後、金融機関が指定する日付で返済がスタートします。金融機関が指定する日付とは、10日・15日・20日・25日が多く、こちらから指定できることもあります。基本的には物件から入ってくる収入で返済を行いたいため、家賃振り込み日のあとに指定するのがいいでしょう。そうすれば家賃が入ってくる限り、返済が滞ることもありません。

次回の融資のため、金融機関に定期的な「報告」をする

ここから、いよいよ不動産の運営に移ります。運営がはじまれば、金融機関との関係は終わりではありません。次の融資をしやすくするため、また金利を交渉するため、金融機関に「報告」をする必要があります。

報告とは、たとえば「こんなリフォームして部屋がこれだけキレイになりました」「いくらお金をかけて外壁塗装をしました」「物件購入後1か月で空室がすべて埋まりました」「写真でのビフォーアフターはこちらです」といった経過を伝えましょう。大半の人は報告をしませんが、必ずするべきです。

なぜなら、こういった借主が「工夫を凝らして結果を出した」という事実がプラスの材料となり、次の融資時の稟議書に書きやすくなるからです。前回の融資時、リフォームもばっちりしてくれて、空室もすぐに埋めて、満室経営が続いている、といった事実を稟議書に書けるわけですね。こちらでプラス材料をまとめ、担当者に「以前に融資をしていただいた物件の現状です。満室になりましたし、リフォームも頑張りました」と渡すのがオススメです。

融資が実行されたあと、いかに早くその物件を満室にして、建物をキレイにして価値を高め、入居率を上げるか。空室がある物件ほど、「1か月で埋めました」「リフォームをして、こんなにキレイにしました」となれば、融資先としてもうれしいものです。

家賃収入の入金先は、その融資先の金融機関の口座にしてください。もちろん、融資時に金融機関からいわれると思いますが、その融資物件の家賃のみで返済ができている証明にもなります。

融資実行後に最もやってはいけないこと

融資実行後に最もやってはいけないのが、返済ができない(残高がない)状態にすることです。たとえば、50万円の収入があって30万円の返済がある場合、毎月その状態が継続すれば返済できるのですが、何かのきっかけで引き落としが重なり、お金を戻すのを忘れていて、30万円の返済ができないとなると「滞納」と同じなので、印象は最悪です。口座残高は常に余裕がある状態にしておきましょう。

※本記事は『現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。