魚雷を撃破する魚雷?

高性能化が進む潜水艦の長魚雷に対応

防衛省は、このほど公表した2023年度の「事前の事業評価」で、海上自衛隊で運用されている「12式魚雷」に、魚雷防御機能を付加するための開発を進める方針を明らかにしました。

「12式魚雷」は、敵潜水艦を攻撃するための短魚雷で、護衛艦のほか、哨戒機ヘリコプターにも搭載可能です。ただ、護衛艦などの水上艦艇にとっては、海中に潜む敵潜水艦の脅威は非常に大きいものがあります。

護衛艦は敵潜水艦の魚雷が向かってきた場合、デコイ(おとり)やジャマ―(通信妨害)といった音響欺瞞で回避する想定ですが、潜水艦の長魚雷が高性能化しているため、こうした機能だけでは防御が難しくなっているといいます。

こうした状況を踏まえ、防衛省は魚雷を物理的に無力化する機能を既存の12式魚雷に付加する必要があると指摘。これまでのデコイやジャマ―といった装備は、物理的な破壊を伴わない「ソフトキル」機能に位置づけられますが、魚雷を撃破する「ハードキル」機能が加わることで、防御機能が大幅に向上するとしています。

防衛省は、護衛艦に向かってきた敵潜水艦の長魚雷を、この新兵器で撃破している運用構想図も公表しました。開発にあたっては、「達成すべき目標」として、自艦に接近する長魚雷の探知技術や誘導制御技術、撃破技術の確立をあげています。

今後は、2024年度から2028年度に試作、2025年度から2029年度にかけて技術・実用試験を実施する予定。来年度予算の概算要求には約91億円を計上しています。

対潜能力に優れた「あさひ」型護衛艦(画像:写真AC)。