『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。今年の投票がまもなくスタートする。ぜひあなたの「今年、いちばん良かった本」を決めて投票してみてほしい。ここで改めて、2022年の「コミック」部門にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。
1位『SPY×FAMILY』遠藤達哉 2位『ONE PIECE尾田栄一郎 3位『ゴールデンカムイ』野田サトル 4位『ミステリと言う勿れ』田村由美 5位『名探偵コナン青山剛昌 6位『呪術廻戦』芥見下々 7位『Dr.STONE稲垣理一郎:原作、Boichi:作画 8位『きのう何食べた?』よしながふみ 9位『ワールドトリガー』葦原大介 10位『葬送のフリーレン』山田鐘人:原作、アベツカサ:作画 11位『ちはやふる末次由紀 12位『薬屋のひとりごと』日向 夏:原作、ねこクラゲ:作画、七緒一綺:構成、しのとうこ:キャラクター原案 13位『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』泰 三子 14位『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』豊田 悠 15位『夏目友人帳緑川ゆき 16位『キングダム』原 泰久 17位『3月のライオン羽海野チカ 18位『東京卍リベンジャーズ』和久井 健 19位『黄泉のツガイ』荒川 弘 20位『アオアシ』小林有吾 21位『チ。―地球の運動について―』魚豊 22位『僕のヒーローアカデミア堀越耕平 23位『メダリスト』つるまいかだ 24位『ブルーピリオド』山口つばさ 25位『【推しの子】赤坂アカ×横槍メンゴ 26位『怪獣8号』松本直也 27位『宇宙兄弟』小山宙哉 28位『転生したらスライムだった件』伏瀬:原作、川上泰樹:漫画、みっつばー:キャラクター原案 29位『わたしの幸せな結婚』顎木あくみ:原作、高坂りと:漫画、月岡月穂:キャラクター原案 30位『この音とまれ!』アミュー 31位『正直不動産』大谷アキラ:著、夏原 武:原案、水野光博:脚本 32位『うるわしの宵の月』やまもり三香 33位『月刊少女野崎くん』椿 いづみ 34位『正反対な君と僕』阿賀沢紅茶 35位『夜は猫といっしょ』キュルZ 36位『憂国のモリアーティコナン・ドイル:原案、竹内良輔:構成、三好 輝:漫画 37位『龍と苺』柳本光晴 38位『塩の街ー自衛隊三部作シリーズー』弓きいろ:著、有川ひろ:原作 39位『税金で買った本』ずいの:原作 系山 冏:漫画 40位『星旅少年』坂月さかな 41位『高良くんと天城くん』はなげのまい 42位『京都府警あやかし課の事件簿』栗原一実:漫画、天花寺さやか:原作、ショウイチ:キャラクター原案 43位『光が死んだ夏』モクモクれん 44位『ベルセルク三浦建太郎 45位『消えた初恋』アルコ:作画、ひねくれ 渡:原作 46位『さよなら絵梨藤本タツキ 47位『ねことじいちゃん』ねこまき(ミューズワーク) 48位『ザ・ファブル The second contact』南 勝久 49位『ポーの一族 秘密の花園』萩尾望都 50位『その着せ替え人形は恋をする』福田晋一
 昨年(2021年)の11位から大幅にジャンプアップ。今年(2022年)のランキングで堂々の1位に輝いたのは、テレビアニメも好調な『SPY×FAMILY』だ。「誰も血がつながっていないのに、涙あり笑いありのファミリー。登場人物みんなが魅力的」(40代・女)といった声に代表されるように、凄腕のスパイ・黄昏をはじめとする仮初めの家族一人ひとりのキャラクター造形が評価されている。また、圧倒的だったのは娘であるアーニャの人気!「アーニャの可愛さにやられました」(50代・女)など、天真爛漫な彼女に魅了された人も多いようだ。  2位の『ONE PIECE』はもはや常連組だが、ルフィの能力の源である「ゴムゴムの実」の秘密が明らかになったことで、さらに盛り上がっている。マンガ界をけん引するトップランカーとして、果てのない面白さを見せてくれる展開には、もう流石の一言だ。
[caption id="attachment_1028428" align="aligncenter" width="190"]チ。―地球の運動について―』魚豊 小学館[/caption]
 最終回を迎えた〝骨太な作品〞も次々ランクインしている。3位の『ゴールデンカムイ』は先の読めない展開とさまざまな要素の〝闇鍋〞っぷりで読者を魅了してきたが、ついに完結。と思いきや、なんと実写映画化も決定したことで、まだまだファンの熱は冷めそうにない。また、21位の『チ。―地球の運動について―』は読み終えた後も読者の心に余韻を残した。本作を読み、「生き方を問われた」と感じる人も決して少なくはないだろう。
[caption id="attachment_1028428" align="aligncenter" width="190"]きのう何食べた?』よしながふみ 講談社[/caption]
 目立ったのは男性同士の恋愛を描いた作品の多さだ。8位『きのう何食べた?』、14位『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』、41位『高良くんと天城くん』、45位『消えた初恋』と、昨年よりも比率が増えている。恋愛における多様な形が広まりつつある時代の流れは、確実にマンガにも影響していると言えるかもしれない。今後もさまざまな関係性が描かれていくようになると好ましいな、と思う。  新顔である30位『この音とまれ!』、34位『正反対な君と僕』、37位『龍と苺』などは、それぞれジャンルも作風も異なるものの、共通していたのは「登場人物を応援したくなる」といった意見。なにかにひたむきになっているキャラクターを見守る、という読み方をする読者が増えていることの表れか。マンガというものはあくまでもフィクションだ。それでも「登場人物たちが生きている」と感じる瞬間がある。それは現実と物語との間にある境界線を飛び越え、キャラクターと想いが重なるということ。そんな読書体験は必ずやきっと、読み手の心を豊かにしてくれるものだろう。 文=イガラシダイ ※この記事は『ダ・ヴィンチ』2023年1月号の転載です。

いま、編集部注目の作家

BOOK OF THE YEAR 2023投票まもなくスタート!去年のコミック部門を振り返る——このキャラクターたちを、 応援したい! 読者一人ひとりの想いが 反映される結果に