『NEOLAND CASE.3』2023.8.27(日)福岡・福岡市民会館

本物の音楽体験を通じて、音楽という文化、音楽に関わるすべての方を未来へとフックアップしていくことを目指す福岡のライブイベント『NEOLAND』。その5回目となる『NEOLAND CASE.3』が、8月27日(日)に福岡市民会館で開催され、くるりザ・クロマニヨンズが出演。夢のようなツーマンライブが行われた。

チョーキューメイ

このイベントのオープニングアクトを務めたのは、2020年梅雨頃に結成され、いまSNSなどを中心に注目を集めている4人組バンドのチョーキューメイだ。空閑興一郎(Dr)、藤井ごん(Ba)、れんぴ(E.Pf)、麗(Vo.Gt.Vn)と順にステージ登場し、揃ったところでジャジーでキャッチーな「心を照らせ!」でスタート。やや緊張しているかのように見えたが、それを跳ねのけるようにパワフルに楽曲を届け、間奏では麗がバイオリンを弾き、くるりザ・クロマニヨンズのファンを驚かせる。

軽快な鍵盤のリズムが心地よく、藤井のジェスチャーで手拍子も起こったキュートな「貴方の恋人になりたい」、麗が再びバイオリンを持ちまずはインストでバンドの演奏力の高さを見せた「おやすみパパママ」をエモーショナルに披露し、観客を魅了。大先輩たちの出番を前にステージに立てた感謝、そして短い時間ながらも爪痕を残そうという気概を感じられたパフォーマンスだった。



くるり

暖かい雰囲気でチョーキューメイの音楽を楽しんだあと、ここからが本番とばかりに観客がスタンディングでスタンバイ。Key、Gt、Drの3名のサポートメンバーと共に登場した岸田繁(Vo.G)、佐藤征史(Ba.Vo)によるロックバンド、くるりを大きな拍手で出迎える。ザ・クロマニヨンズとのツーマンイベントで先攻、さらに直近まで「愛の太陽EP」発売記念ツアーを行っていたこともあり、最初はどの曲で、そしてどんなセットリストで来るのかーーと胸躍るなか、「こんばんは、くるりです。よろしくお願いします」(岸田)と始まった注目の1曲目は「琥珀色の街、上海蟹の朝」、通称“上海蟹”。ギターを持たず、ハンドマイクで歌う岸田のラップ、おしゃれメロウシティポップサウンドで瞬く間に彼らならではの空気感に変えていく。

ドラムのカウントから始まり大きな歓声が上がったのは、次の「WORLD’S END SUPERNOVA」。心地よいビートとメロディ、最高のグルーヴ感、浮遊感あるサウンドから成るくるり流のダンスミュージックでフロアをゆったりと揺らす。そんな大人のロックに酔いしれていたのも束の間、今度は荒々しくギターを掻き鳴らし、疾走感溢れる爆裂ロックチューン「トレインロック・フェスティバル」(ご当地ver.)をガツンとお見舞い! 先ほどまでのチルムードは一変、ノリノリな岸田を筆頭に一気にロックバンドとしてのギアを上げてきた彼らに呼応するように拍手と歓声が沸き起こる。

さらに、岸田がスキャットをしたり、ボソッと「ポカリポカリスエット)うまい」と言ってみるなど遊び心も満載だった「Morning Paper」を間髪入れず演奏。骨太なロックンロールを見せつけ、熱気をグングン高めていった。メンバー紹介、「ポカリって昔、500ml入りの瓶のやつもありましたよね。あれを飲むのがすごい幸せやったんです」(佐藤)とポカリ話に花を咲かせたあとは、6月に先行配信された「In Your Life」、シンプルなバンドサウンドながらもどこか郷愁を誘う9分にも及ぶ壮大な「真夏日」、さらに8月に配信されたばかりの新曲「California coconuts」を披露し、最近の音楽性もきっちりと提示する。

「憧れのザ・クロマニヨンズと福岡で対バンということでうれしゅうございます」(岸田)と喜びを述べた終盤、特に初見の人たちにとって聴きたかった曲の1つであろう代表曲「ばらの花」を演奏し、会場の満足度を高めたあとは、初期ナンバーの「虹」へ。じっくりと聴かせるだけでなく、アウトロでたっぷりとセッションを繰り広げるなど、大いに盛り上げて終了。あっという間のステージだったが、新旧織り交ぜた刺激的で多彩なセットリストくるりファンもそうでない人も存分に楽しめたに違いない。

ザ・クロマニヨンズ

この日、ゲリラ豪雨により開場時間が早まった『NEORLAMD CASE.3』。「雨いっぱい降ったの知っとる? 大変だったね。今、もっと大変なことがここで起きてるからしっかり見てね」(甲本ヒロト/Vo)と途中のMCで話した通り、ザ・クロマニヨンズのライブは忘れられないものになる。

ヒロトー!」、「マーシー!」など大歓声と手拍子が起こるなか、桐田勝治(Dr)、小林勝(Ba)、真島昌利(G)、甲本ヒロト(Vo)のザ・クロマニヨンズの面々が登場。まずは最新アルバム『MOUNTAIN BANANA』に収録され、映画『Gメン』の主題歌になっている「ランラン」でスタートを切ると、1stシングル「タリホー」、直球のロックンロールナンバー「生きる」、彼ら流の生命の讃歌「イノチノマーチ」まで、怒涛の勢いでぶっ放す。彼らが贈る初期衝動に満ちた純度の高いロックンロール、そして観客の熱量も相まってホール公演にも関わらず、序盤からまるでライブハウスのような熱気が充満。

その熱をやや落ち着かせるようにMCでは、「『NEOLAND』にはよくしてもらって。素敵なステージを用意してもらったし、くるり来てくれてありがとう! チョーキューメイは今日まで知らなかったけど、みんな得したな~!」(ヒロト)と笑いを誘いつつ感謝。また、オープニングアクトを務めたチョーキューメイのバンド名が落語『寿限無』の一節が由来なのを知っていたのかは分からないが、突如「チョーキューメイチョーキューメイ……寿限無寿限無、五劫の擦り切れ、買い砂利水魚の水行末……」と小4の時に覚えたという『寿限無』を披露し、会場を沸かせる。

そんなサービス精神旺盛なヒロトに、あるハプニングが。MCを終え、勢いよく「グリセリン・クイーン」に入ったのだが、歌い出しのタイミングを失敗! マーシー(真島)の元に行き演奏をストップさせる。「この会場に何人もおるけど、100%僕一人の責任です。歌詞を間違えるのはいいけど、歌いだしだけはちゃんと歌いたかった。謝りま~す!! もう1回やらせてくださーい!」(ヒロト)と深々と謝罪。これには観客も大爆笑だ。この思いがけないハプニングに立ち会えた喜びもあり、やり直しの「グリセリン・クイーン」は大盛り上がり! さらに、軽快なビートに乗ってヒロトブルースハープを奏でる「暴動チャイル(BO CHILE)」、ヒロトハープマーシーのギターの掛け合いがたまらない「ごくつぶし」などを浴び、その熱狂ぶりは天井知らずになっていく。

「スピードとナイフ」を挟んで突入した終盤は、「夏休み最後の日にここに来てくれてありがとう。僕らの一番得意なビート、8ビートを続けて何曲か聞いてもらいます」(ヒロト)と「エイトビート」を皮切りに、ド頭から手拍子が湧きおこった「エルビス(仮)」、「紙飛行機」、この日集まったすべての人の心境を代弁するように「今日は最高だー!」(ヒロト)と叫んだ「ギリギリガガンガン」、「ナンバーワン野郎!」まで怒涛のシングル曲で畳みかけ、最後は「人間!人間!」のコールが鳴り響く「クロマニヨン・ストンプ」で圧巻のライブはフィニッシュ! 鳴りやまない拍手の中、「ありがとう! また会いたい。また会いたい。絶対に会いたいロックンロール!!」(ヒロト)、「チョーキューメイくるりザ・クロマニヨンズでした。またね」(マーシー)と再会を約束し、ステージを後にした。

幅広い世代、初ザ・クロマニヨンズの人たちもいたであろうにも関わらず、コール&レスポンスやオイコール、「紙飛行機」で見せた揃った手振りなど、まるでワンマンかのような盛り上がりを見せたのはさすがの一言だった。

新進気鋭の期待のニューカマー、多彩な音楽性を操る音楽のマジシャン、永遠のロック・キッズによる三者三様の音楽が楽しめた『NEOLAND CASE.3』。今後、どんな顔ぶれがブッキングされるのか、ぜひともこれからも『NEOLAND』に注目を!

取材・文=金子裕希 写真=オフィシャル提供(撮影:柴田恵理

『NEOLAND CASE.3』