ベルギーで、自転車に乗った男性が5歳の女の子を転ばせ、そのまま走り去った映像を、撮影していた父親がSNSに投稿した。
その結果、自転車男性は大勢のネットユーザーから怒りをかい、叩かれることとなった。
男性は映像をSNSで共有した子供の父親を「名誉棄損」で訴えた。「SNSで拡散したことで脅迫が相次ぎ、外出も怖くなった」という。
裁判所はその主張を認め、男性は勝訴した。来年4月に少女の父親に対し、正確な賠償金支払い命令を下す予定だという。
Cyclist Who Kneed Girl, 5, To Ground Handed Suspended Sentence
2020年のクリスマスの日、ベルギー・リエージュ州の自然遊歩道で、母親と並んで歩いていた5歳の少女ネイアちゃんの後ろから、自転車に乗った男性が近付いてきた。
通り過ぎる直前で後ろを振り返った母親は、自転車の存在に気付いたが、ネイアちゃんを自分のもとへ引き寄せるのに間に合わず、ネイアちゃんが道を塞いでしまう形になった。
しかし、自転車の男性はスピードを緩めることも、止まることもせず、狭い道幅を強引に走行しようとした。
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そして、ネイアちゃんのそばを通る瞬間、膝を突き出したようで、それがネイアちゃんの頭にあたり、バランスを崩して転んでしまった。
路上で家族の様子を撮影していた父親のパトリック・ムパサさんは、すでに自転車の存在に気が付いており、通り過ぎる前に声を上げたが、自転車の速度は速く、あっという間の出来事だった。
ムパサさんは自転車の男性を呼び止めようとしているが、男性はそのまま走り去ろうとしていた。
怒りを覚えた父親、SNSに動画を投稿
パトリックさんが撮影した動画を見る限りでは、自転車に乗っていた男性(63歳)は、意図的にネイアちゃんに膝を突き出したように見える。
激怒したパトリックさんは、動画をシェアしたSNSで、このように投稿した。
自転車の男性には反省の様子もなく、また謝罪もありませんでした。この事件を、警察に通報すべきだと思いますか?
男性は私が攻撃的だと非難しました。 彼は、娘が転んだのを見ていなかったと主張し、見ていたら止まっていただろうと言いました。
私には、彼が「自分は特に何も悪いことはしていない」という印象しかありませんでした。
素直に非を認めてその場で謝罪すれば、大事にならずに済むかもしれない出来事だったのかもしれないが、自転車の男性は非を認めず、言い分を主張した。
それが、SNS上で男性に対する非難をあおるきっかけにもなったのだろう。
映像が拡散し、男性の行為が炎上した時点で、パトリックさんは当時(2020年12月)このように話していた。
この映像を投稿するのは復讐するためではありません。交通安全上の「意識を高める」ために共有したかっただけです。
誰かに「魔女狩り」を望んでいるわけではない。娘を膝で突き飛ばして倒した自転車の男性に謝罪を求めているだけです。
その後パトリックさんは、この件を警察に通報し、男性は裁判所へ出頭した。
父親がまず、自転車の男性を訴え。執行猶予付き判決
2021年2月3日の法廷審理で、自転車の男性は「バランスを保ち、転倒を避けるために膝を突き出した」と主張した。
ネイアちゃんを膝で突き飛ばしたことについては、「すぐには気づかなかった」とも付け加えた。
結局、2021年3月、裁判所は男性に執行猶予付きの判決を言い渡した。
同時に「子供を傷つける意図はなかったこと」「すでにSNSの誹謗中傷で十分に苦しんだこと」を理由に、自転車男性に対し、パトリックさんに1ユーロ(約158円)の賠償金を支払うよう命じた。
しかし、その後この1件は、驚くべき展開を迎えた。自転車男性が、パトリックさんを訴えたのだ。
今度は自転車男性が、父親を名誉棄損で訴え勝訴に
その1年後、自転車の男性はパトリックさんを名誉棄損で告訴した。
自分の映像がSNSで拡散し、罵詈雑言を浴び、怒るSNSユーザーたちから相次いで脅迫を受けたため、家を出るのが怖くなったと、男性は主張した。
最終的に、2年に及ぶ法的な争いを経て、自転車男性はついに勝訴した。
当初、男性は補償金として4,500ユーロ(約71万円)の支払いを求めたが、これは彼がもう使えないと主張する自転車の価格と同じだそうだ。
訴訟の開始時に、パトリックさんの弁護士ジャック・エンゲルベール氏は、「表現の自由」を挙げ、依頼人は何も悪いことはしていないと述べた。
私たちには、自分自身を表現する権利があります。インターネット上に動画を投稿する、または投稿した権利を有します。
この場合、表現の自由の限界を超えているかどうかを確認する必要があります。
一方、自身もサイクリストという弁護士のフィリップ・キュロ氏は次のように話している。
今回の判決は、少女の父親がビデオを公開したという間違いを犯したと認定しました。
当時、地元で運営されている自転車協会「GRACQ」のメンバーを含む交通専門家らは、「自転車利用者は、歩行者に自然の小道を通行する権利を与える必要がある」と述べていた。
なお、ヴェルヴィエ市の裁判官は、2024年4月に、男性への名誉棄損に対する損害賠償額を決定し、パトリックさんに言い渡す予定ということだ。
References:Cyclist filmed hitting girl, 5, successfully sues her dad for sharing video/ written by Scarlet / edited by parumo
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