令和5年12月歌舞伎座公演において、坂東玉三郎演出による『天守物語』の上演が発表された。

文豪・泉鏡花の戯曲の中でも屈指の名作とされる『天守物語』は、白鷺城姫路城)の天守閣にまつわる伝説をもとにした、美しい異形の世界の者とこの世の人間との夢幻の物語。天守閣の最上階に棲む美しく気高い天守夫人・富姫と若き鷹匠・姫川図書之助の恋が描かれ、美の本質、真の純粋さを希求した傑作だ。

令和5年5月平成中村座姫路城公演『天守物語』左より、姫川図書之助=中村虎之介、天守夫人富姫=中村七之助 ©松竹

令和5年5月平成中村座姫路城公演『天守物語』左より、姫川図書之助=中村虎之介、天守夫人富姫=中村七之助 ©松竹

歌舞伎では、昭和30(1955)年に六世中村歌右衛門の富姫で初演。近年では、坂東玉三郎が昭和52(1977)年に富姫を初演して以来、自身が演出も勤めながら大切に上演を重ねてきた。そして今年5月には、「平成中村座姫路城公演」にて玉三郎の演出により、中村七之助が富姫を初役で勤め、好評を博した。

この度、歌舞伎座12月公演では、姫路城公演で好評を博した玉三郎演出による『天守物語』の上演が決定。七之助の富姫、中村虎之介の図書之助、中村勘九郎の舌長姥/近江之丞桃六、中村獅童の朱の盤坊の配役に、演出をする玉三郎が富姫の妹分である亀姫役を初役で勤める。

令和5年5月平成中村座姫路城公演『天守物語』左より、天守夫人富姫=中村七之助、姫川図書之助=中村虎之介 ©松竹