毎シーズン、数多くのアニメが放送される中、アニメソングも続々と世に放たれている。星の数ほど生まれるアニメソングから、ミュージシャン・DJの出口博之と、芸人にしてアニソンDJの鮫島一六三(BANBANBAN)が、一押しのアニメソングチョイス

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2023年夏アニメから、互いにBEST3アニソンを発表しあい、語りまくる連載「しゃべる! アニソン」。これを読めば、今聴くべきアニソンがわかる……はず!
さらにトークと楽曲を一緒に楽しめるポッドキャスト番組の配信をSpotifyでも配信中! こちらもあわせてお楽しみください!

 

 

鮫島 しゃべる!アニソン2023夏です

 

出口 この連載は私、出口博之とBANBANBAN鮫島一六三さんが、今期のアニメソングから3曲ずつ選んで、その曲のいいところを語り合うという非常に平和的なアニソンレビューというか、おじさんの感想文です!

 

鮫島 アニメを観て、よかったねっていうだけの平和な連載です。

 

出口 鮫島さんは最近どうですか?

 

鮫島一六三さん


鮫島 6月22日中野サンプラザでアニソンディスコをやらせていただいて、ほどよい感じでお客さんも入っていただきました。夏もあちこちでDJさせていただいて、いよいよ復活してきたなという充実した気持ちで過ごしています。京都の西本願寺の境内で盆踊りがあったんですが、そこでもアニソンディスコをやらせていただいて、最後はfhǎnaの「愛のシュプリーム」で燃えてきました。

 

出口 ほかにも病院でやったとか。

 

鮫島 足立区にある新しい物好きな病院でも、アニソンディスコをやらせていただきました。地元の人を集めて、リハビリルームを開放して。そしたら杖をついていたおばあさんも杖を置いて立ち上がってくれて、「元気になりました」って言ってくださいました。これはすごい嬉しかったです。出口さんはいかがですか?

 

出口 自分も非常に充実した夏でした。ありがたいことに作業が多くて、それをずっとやっていましたね。お互いの近況はこんな感じで……、今期のアニメはどうですか?

 

出口博之さん

 

鮫島 今期も面白い作品があるので、チェックしてていい感じですね。アニソンに関しては、傾向みたいなのはあまり感じられずひとつのテーマでくくるのが難しいんですが、それぞれ独立していい曲ばかりだと思います。

 

出口 とにかく前クールの「アイドル」(YOASOBI)がすごいことになってて、アニソンがこんなにも世界の中心になる事態っていうのはここ数年でもなかったから、アニソンに対する見方が変わるというか、注目度が上がってきているのかなと思います。

 

鮫島 DJ KOOさんが「いけないボーダーライン」をかける時代ですから。やめてくれよ!俺がかけるから取らないでくれ!(笑)

 

出口 そういうのも含めてアニソンへの注目度が高い状況ですが、ここ数年感じているのがいわゆるアニソンらしいアニソンというフォーマットみたいなものがどんどんなくなってきてるということです。それが逆に、「作品ときちんとつながっているのがアニソンだ」という原点に立ち返っているのかなというのは、今期のアニソンを聴いて思いました。

 

鮫島 やっぱりどのアーティストもしっかり作品に落とし込んで歌詞を書かれてますからね。

 

出口 原作もかなり読み込んで、その世界観が歌詞に反映されているなと感じることがありました。という感じで、今期のアニソンから1曲ずつ出し合って3曲、自身が考えるいい3曲を決めてきましょう

 

「ソングオブザデッド」(ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~)KANA-BOON


鮫島 まず私は「ゾン100」のOP「ソングオブザデッド」! KANA-BOONさんのアニソンの中で一番好きになっちゃいました。「フェスで鳴り響いて、みんながこれでタテノリで踊ってる姿が頭にば-っと浮かんできました。アニソンディスコでもさっそく振りを付けまして、北海道でネタを初下ろしさせていただきました。突き抜けてフェスだなという感じがしますね。みんなが待っていたKANA-BOONなんじゃないかなと。

 


出口 フェスに特化というか、いろんなコロナの制約を経て、そこから一歩進んだ時の明るさ、希望がある。

 

鮫島 ずっとしゃがんで、アッパーカットを打ってきたような感じがありますね。OP映像の色使いもポップで、ゾンビものだけど血なまぐさくない。主人公も非常にバカで(笑)、ゾンビの世界になって喜んじゃってるので、こういう明るくてバカな曲はいいんじゃないかな。今期イチ押しですね。

 

出口 KANA-BOONは、最初の頃はシリアスな印象で、曲の世界観も内側に向いた感じの、フラストレーションを音に乗せて……みたいな印象だったけど、ここ何作かは明るめな曲の印象が強くて、スコーンと抜けて明るくなったというか、楽しい曲がけっこう増えてきましたね。

 

鮫島 アニソンDJの間でも反響がよくて、取り合いになりそうです(笑)。絶対盛り上がると思います。

 

出口 ちなみに振りはどんな感じなの?

 

鮫島 「スリラー」の振り付けは別でやったのでそれはやめて、ゾンビなのでひっかく動きを増やしたり十字を切ったり。あとはゾンビなのでキョンシーも入れようと思って、中国っぽい動きを入れました、運動量が非常に多くて。炎天下で絶対やっちゃダメなヤツです(笑)。楽しいですよ。

 

「PRIDE」(「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。」ED)チョーキューメイ

 

出口 これは滅茶苦茶カッコよかったです。チョーキューメイは2020年前後結成の、いわゆるコロナ禍に活動をされていたバンドで、もっといえばコロナになって自粛だなんだという時期に学生時代を過ごされている。

 

 

鮫島 えっ! じゃあ10代でバンドを組んで、コロナ禍になっちゃったんだ。

 

出口 以前、コロナ禍になってから音楽始めたりバンドを始めたりという世代が、これから我々とは違った感覚でものを作って、世の中に出てくるなんじゃないかという話をしたと思うんですけど。

 

鮫島 もう出てきた!

 

出口 早いよ!って (笑)。楽曲もすごくボーダレスというか、自分たちがこういう曲調でこういう楽曲だったらこういうアレンジにするよね、っていうような考え方からすごく外れた音とかアレンジになってます。そこの新しさが、いろんな世代の音楽を純粋に「いいよね」って聞いてきたりとか、選ぶアンテナの鋭さはあるなと思います。具体的にはサビなどでホーンが鳴ってたりするんだけど、普通はそこに入れないよねっていう。もっとストリングスとかが入ってる雰囲気なんだけど、ラッパが入るの!とか。それが不思議とよかったりするし、こんなの聴いたことなかったなと思いました。それでも洋楽やJ-POPなどの要素がそこかしこにあるから知ってる感じではあるんだけど、その組み合わせ方が今までなかった。そんな感じの曲です。キャリアはすごく浅いけど、もう知る人ぞ知る、界隈ではもう来るぞみたいなバンドです。

 

鮫島 これだけのキャリアでもアニソンのタイアップをとるなんてすごいですね。

 

出口 結成して、今回のタイアップに至るまでの流れってすごい早いから、夢があるなって思いますね。時間がネックにならないというか、時間がかからないで世の中に伝わる時代なんだなって。

 

鮫島 スピード感が上がってますよね。今や地方にいても、東京と同じくらいのスピードで走っていけるじゃないですか、コロナ以降いろんなところが変わりましたね。その代表的な人たちなのかな。

 

出口 あとはリタイアした人たちにもすごく希望を与える存在だなと思います。つまり音楽を諦めざるを得なかった人たちとか、絵が好きで描いていたけど夢を諦めて就職された方も多いと思うんですよ。作品を作って、応募して、誰かにいいと言われて、それでライブやって……って計算したら3年はかかるよね。次の展開は2年くらいかかるよね。そう考えると、夢を諦めざるを得ない。そういう人達も、今はそこをすっ飛ばせるんだなと。作られる作品はいいものであるというのが前提だけど、コロナ禍になってから活動を始めた方たちが、今はもうここまで世の中に発信できていることを考えると、おじさんだってまだ夢はある。

 

鮫島 どの世代でも、いいものを作っていればチャンスがあるような。年齢とか関係なくなってきてる。もちろんいいものを作っていることが前提ですけど、年齢で諦めることもなくなってきたし、いろんな仕事をしながらもの作りをしていい時代になってますからね。

 

 

「NAME」(「好きな子がめがねを忘れた」OP)綴 or「貴方の側に。」(「わたしの幸せな結婚」OP)りりあ。

 

鮫島 次なんですが、どちらにしようか迷ったので2曲あげて、しゃべってるうちに1曲にしぼっていいですか。しゃべりながら整理していきます。

 

出口 それ無茶苦茶新しくないですか(笑)。

 

鮫島 「好きな子がめがねを忘れた」綴さんと「私の幸せな結婚」りりあ。さん、で迷っているんですよ。なぜかというと、どちらも作画が美しすぎるアニソンなんです。「私の幸せな結婚」は桜の花びらから始まって、髪の毛1本1本までていねいに描かれていて、非常にいいんです。歌詞も作品とリンクしていて何回でも見れる素敵な曲です。

好きな子がめがねを忘れた」は学校を舞台にした日常モノなんですけど、視力の悪いヒロインが毎回眼鏡を忘れて、隣の男の子が教科書を貸すよって言ったらすごい至近距離まで迫ってきてドキドキしちゃうみたいな。眼鏡を忘れたという1シチュエーションだけでどれだけ大喜利をするんだって感じのアニメなんですが、これも異常にOPの作画がいいんです。これまた髪の毛1本までふわふわと描かれていて。

 

出口 鮫島さんのクオリティの基準は髪の毛?

 

鮫島 髪の毛1本1本! 「バイオレットエヴァ―ガーデン」もそう!(笑) 超ていねいな髪のなびかせ方という枠のアニメがあるんです。より自分がキュンキュンしてるほうに軍配をあげようと思うんですが、「私の幸せな結婚」は話が大正時代あたりの話で、ちょっと自分にはリアリティが感じられなかったりするんですが、「好きな子がめがねを忘れた」は同じような学生時代を過ごしてきましたからね。主人公・みえさんという女の子は、眼鏡を取ると目つきがすごいう悪くなるんですけど、OP映像の最後! 眼鏡をしてないんですけど、一瞬だけ目つきがよくなるんですよ。そこでハートを持っていかれちまうので、私の2曲目は「好きな子がめがねを忘れた」の綴さんの「NAME」に決まりました(断言)。

 

 

出口 わはははは(笑)。鮫島さん、最近になってラブコメジャンルを好きになったっていう話を聞いていたから、今あげた作品も印象的だなと思いました。ちょっと前ならスルーしていたような気がします。

 

鮫島 スルーしていたと思います。ここ最近ラブコメがすごい好きなんです。

 

出口 作画で言ったら、この2作が抜群なんですか?

 

鮫島 作画で言うと、「呪術廻戦(第2期) 懐玉・玉折」もすごくよかったですね。「青のすみか」のOP映像もよかったです。話は暗いけど、OPの中でコミカルなシーンも描くんですよ。等身が変わったりしてそれを見たら余計に悲しくなっちゃうというか。あえてそういうところを入れてきて、暗さを引き立たせようとしているのかなと思うと憎ったらしいというか、ズルいですよね(笑)。

 

「plan」(「トニカクカワイイ 女子高編」OP)早見沙織

 

出口 鮫さんがかわいい路線だったので、私もその方向で。「トニカクカワイイ 女子高編」のOP「plan」。これはすごくよかったです。言ってしまえばテクノポップ的な曲ですし、最近すごくはやっているカワイフューチャーベースというEDMからの派生ジャンルにつながる曲ですね。圧倒的に早見沙織さんの声がかわいい。これは素晴らしい。

 


鮫島 はい、早見さんはかわいいですよね。

 

2人 あはははは(笑)。

 

出口 おじさんが「かわいい」しか言えなくなったらおしまいですよ(笑)。今期はフューチャーベースっぽい感じの曲がけっこう多くて、これはなぜだろうと思ったらYouTubeとかの無料音源とかTikTokで流れる音楽ってこのテイストの曲がけっこうあるんですよね。だから、これはこじつけだけど、多くの人がよく聞く音楽ってこのあたりなのかなって。SNSでよくかかっている音楽のジャンルがこのあたりだと考えると、今の時代にすごくマッチしているジャンルなのかなと思いました。

 

鮫島 SNS映えするというかね。

 

出口 うん。音はかわいいけど、すごく音楽的。最近の曲はバーンと豪華なものが多いんだけど、この曲は音数が少なくてシンプルな作りでトレンドの逆を行ってる、隙間がすごくある曲なんですけど、そこに声のキャラクター性や自身のキャラクターが柱として存在してるから、真似できそうで真似できない、エンタメとしてど真ん中の音楽になっています。音数が少ないと言いましたけど、よく聴くとすごく細かいネタがちりばめられていて、声のカットアップみたいな手法とか、けっこうえぐいことをやってますね。すでに確立された王道の手法ではあるんだけど、「こういう流れでこう入れるんだ」というか、すごくかわいくまとめられているのに、けっこうストイックというか。

 

鮫島 (感心したように)やっぱり出口さん勉強されていますね。僕なんてかわいいしか言ってない(笑)。

 

出口 僕のは「ういきぺであ」に書いてあったことだから(笑)。

 

鮫島 わははは(笑)。

 

 

「Raise」(「ONE PIECE」ED)Chilli Beans


鮫島 3曲目は「ONE PIECE」Chilli Beansで「Raise」。「ONE PIECE」17年ぶりのEDテーマですよ!

 

 

出口 いいところいきましたねー!

 

鮫島 この子たちも2019年結成で、活動開始して1年くらいでコロナ禍に突入しちゃったみたいですね。曲はすごくシンプルで、これまでの「ONE PIECE」のEDとは全然違うというか、「ONE PIECE」をそんなに感じない曲だと思ったんですけど、それはそれで今の熱量の高い「ONE PIECE」をクールダウンしてくれる機能を果たしてくれているのかなと思いますね。

 

出口 今はどのあたりなんですか?

 

鮫島 ワノ国編で、ルフィがギア5になりました。そこからこの曲が使われ始めました。そのワノ国編もそろそろ終わりに向かっていくということで、ED映像も花の咲かなかったワノ国に花が咲いたり、白米のおにぎりが出てきたり、これからキッドとかローが出港しようとしている絵が出てきて、ワノ国編が終わるんだなということを匂わせる映像になっています。これがすごくいいですね。

去年、アキバ総研さんで、「オールスター・アニソン・ベスト」というコンピレーションアルバムのレビューを書かせていただいたんですが、その中で「ONE PIECE」にEDがなくなって非常に遺憾に感じていると書いたんです。

【ディスクレビュー】21世紀を代表するアニソン34曲をフルサイズで収録! アニメファン感涙のコンピCD「オールスター・アニソン・ベスト」を、BANBANBAN鮫島一六三が聴いてみた!

 

出口 ほお~。

 

鮫島 寂しいと。EDくらいやってよ!と。ドドーンと終わって、すぐに「ワイドナショー」が始まるのやだよ! すぐに東野(幸治)さんが出てくるのはやだよって!(笑) ワンクッションおかせてよ、と書かせてもらったんですが、たぶんね……。「ONE PIECE」のスタッフさん、僕の記事読みましたね。

 

出口 いや、たまたまだよ(笑)。でもそのように思っていた方はほかにもいたのかもしれないですよね。やっぱり「ONE PIECE」はEDがないと。さすがにクッションなしで「ワイドナショー」にいけないよって方がいたのかもしれない。これはスタッフの方に鮫島さんの思いが届いたんだと。

 

鮫島 それもあって、入れさせていただきました。復活の「ONE PIECE」ED! そこから最終章に向かっていくんですよ。ちなみに「ONE PIECE」が原作の単行本106巻を出した時に、「未来島 ~Future Island~」っていう公式ソングをYouTubeにアップしたんですよ。最近の「ONE PIECE」って去年の「新時代」(Adoが歌う映画「ONE PIECE FILM RED」主題歌)のヒットもあってか音楽と密接になってきている気がします。「未来島 ~Future Island~」で歌ってるのはVチューバーの方ですけど、すごくいいラップで耳に残るし、いっぽう映像はノスタルジックで。

 

出口 原作のある作品の強さってそこだと思いますね。先が読めなくてワクワクするオリジナル作品もいいんですけど、「ONE PIECE」の場合はワノ国編がそろそろ終わるということは見てる側がわかってるわけじゃないですか。すでに結末を知ってる中でアニメを観る側からすると、きちんと着地点を見据えた映像が入っているのは強さですよね。作品を読み込むとか、原作へのリスペクトとか、どこまで取り入れてどこまで寄り添うかと相互に歩み寄っている感じがいいと思います。「ONE PIECE」も大きな作品だから、作る側の思いも強いんだなと。

 

鮫島 愛が強いと思いますね。作画ひとつをとっても、これが毎週やってるアニメの作画かというくらい戦闘シーンが描かれています。もう最近の「ONE PIECE」はカロリーの高さが異常なので、EDをちゃんとやって、もう少し本編を短くしてもいいよって思うんです(笑)。

 

出口 EDの役割ということを考えれば、「ONE PIECE」のEDは非常に正しいと思います。クライマックスに向けてうわーっとテンションが上がっていく中で、1話ごとの圧の強さを受け止めてくれる。

 

鮫島 クールダウンさせてくれる効果があると思うので、ED復活は大賛成ですね。

 

「シェケナーレ」(「シャドウバースF(セブンシャドウズ編)」ED)OCHA NORMA

 

出口 鮫さんがけっこう男子な感じできましたが、私も図らずも男子な感じになりました。3曲目は「シャドウバースF(セブンシャドウズ編)」ED、OCHA NORMA(オチャノーマ)のシェケナーレ。これ、ハロプロの新しいユニットです。2020年結成です。

 

 

鮫島 へー! すごい時期に組んだなあ。

 

出口 もうね、安定のハロプロですよ。ファンキーだし、ノリがいいし、振りとかもかわいくて踊りやすいというか。メロもすごくよくて、ザ・90年代という匂いがすごく漂っているから、新しいグループではあるけど「モーニング娘。」から培われてきたエンタメのノウハウがめちゃくちゃ入ってる。めちゃくちゃかっこいい。手の振りがあったり合いの手が多かったりと、いちばんいいハロプロの曲を想像していただければと思うんですが、すっげえいいです。アニメ自体もカードゲームを題材にしているから、バトル要素が強いんだけど、登場するキャラクターに女の子が何人かいて、その子らがEDで踊ったりしてます。その子らが、まあかわいい!これは外野から勝手に言ってるんですが、アニソンディスコにも合うと思う。

 


鮫島 OCHA NORMA。グループ名もいいですね(笑)。今、お茶の間っていう言葉も死語ですよね。お茶の間に集まれるっていいですよね。

 

出口 そのちょっとした古さというか、昭和、平成の懐かしい感じがハロプロにはあると思っていて、それには、つんくさんの存在がすごい大きいのかなと思います。

ハロプロは一貫してファンクだったり‘70年代ディスコサウンドが中心になってて、そこから本当にぶれてないから、音楽が手段じゃなくて目的になってる気がするんですよ。これは単純に比較はできないんだけど、例えば秋元康さんの坂道グループとかも女の子のグループとしては同じだけど、秋元さんにとって音楽は手段なのかなと思うんですよ。なぜかというと秋元さんは言葉とか歌詞とかタイトルとか、文字の人の考え方だからです。だからと言って音楽をないがしろにしているわけではないけど、つんくさんは音楽の人だから音楽が目的になっている。かつては自分も演者であったしリスナーだったし、そんな彼が何に感動して何に興奮したかと言うとやはり音楽なんだなと。そこがモーニング娘。の根っこにあるわけだし、第5期の頃はディスコとかファンクが多かった。それを見た若い子たちが自分もなりたいって言って、どんどんハロプロのオーディションを受けに来るとなると、その時点ですでに素養があるんだよね。かっこいいもの、憧れるものはモーニング娘。なんだけど、それはつまり、バックにあるファンクが好きになってるということだから素養があるし、ぶれない。AKBとか坂道グループにはもちろんスタープレイヤーみたいな方はいるし、そこに憧れるのも正しいことなんだけど、ハロプロに関して言えば、そのバックボーンにつんくさんの遺伝子があるから、そこが受け継がれているんだろうなというのはOCHA NORMAの「シェケナーレ」を聴いて思いましたね。

 

鮫島 OCHA NORMAの「シェケナーレ」(笑)。いいなあ。

 

出口 すごく真面目に考えても、軽さがあるのがいいですよね。これは自分もDJではかけたいですね。ハロプロに関して言えば、自分はあまり積極的には通ってなかったけど、DJとかライブによく来てくれるお客さんで、ハロプロをすごく好きな方がいて、現場に来るたびにCDをくれるんですよ。ありがたいなと思って聴いてみたら、こんなにかっこいいんだって驚きました。最初は学生時代に聞いてた初期モーニング娘。のイメージだったけど、そこがちゃんとアップデートされて、今はこんなになってるんだって。ハロプロはかっこいいですよね。

 

鮫島 ずっと続いてますからね。いろんなユニットも出てきたりして、研究生だけで中野サンプラザを埋めたりしてましたからね。ファンもその姿勢が好きなんでしょうね。

 

出口 安易に人気に傾かないというか、私たちはちゃんとハロプロを背負おうみたいな。そこにはつんくさんの音楽への愛を背負って戦うから強いんだなと思うし、エンタメに元気がないとか、日本のエンタメはどうとか最近よく言われるけど、みんなハロプロを見習えよって思う(笑)。

 

鮫島 変にK-POP路線にいくよりも、日本は日本人らしいガラパゴス化した楽曲があったはずですよね。なんだかんだ言って、世界で一番聴かれている日本の曲ってアイドルじゃないですか。

 

出口 言ってしまえばハロプロも洋楽のオマージュだし、つんくさんが聞いてきたファンクソウルを下敷きに歌謡曲が混ざってくる形だしね。近いところでいうとFolder、のちにFolder5。あれだってもともとはジャクソン5で、そこから日本に輸入されてフィンガー5になりFolder5に至るわけで。そこに日本におけるエンタメの正しい進化の仕方を見るというかね。

 

 

鮫島 というわけで3曲ずつぶつけ合いましたけど、今期はバラエティに富んでいるというか全部毛色が違うように思いました。

 

出口 だいたい毎回かぶることがあるけど、今回はノンペアでフィニッシュでしたね。それくらい見る人によって刺さる作品とか思い入れの強い作品というのは多岐に渡るんだなと思いました。

 

鮫島 今期はそういう曲が多かったですね。だから選ぶのが難しかったです。

 

出口 確かに。まだまだ選びたい曲はたくさんあったんですよね。

 

鮫島 「るろうに剣心」OPの「飛天」とかもそうだし、「Lv1魔王とワンルーム勇者」OPの「One Room Adventure」も入れたかったんですよ。本当に迷いました。「ファンファーレ」(「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」OP)、sanaさんの「Brand new day」(「おかしな転生」OP)とかもね。sanaさんはsajou no hanaとしても「スパイ教室 2nd season」ED「ニューサンス」を出してるし、今期2作品もやってるのはすごいですよね。

 

出口 今までと違うタイプの曲になってたから、これもあげとかなきゃいけない。ポイントとなる曲だなと思ってはいたんですけど、今回は次点ということで。

 

鮫島 どれも捨てがたい曲ばかりで、あいかわらずアニソンは元気だなと思いましたね。だから、もうDJ KOOはアニソンをかけないでくれ(笑)!もういいじゃん、「survival dAnce」があるじゃん!

 

出口 そこはDJ KOOさんにも積極的にアニメソングのほうにも来ていただきましょう! やはり日本を元気にできる方だと思います。日本が一番元気だった時代に一番元気な音楽をやられていた方なので、あの人がいるだけで回りが明るくなる。そう考えると、その人の持つ力が求められてくるから、前回も触れたAI問題じゃないけど、テンプレじゃなく誰が何をやるかが重要になる。

 

鮫島 そうなんですよね。DJ KOOさんがかける楽曲って説得力があるんですよね。いろんな楽曲をめちゃくちゃ知ってるはずなのに、あえてそこをチョイスするのは説得力があるなって。かないません。

 

出口 我々もああいうおじさんになりましょう!

 

出口博之

出口博之

ロックバンド・モノブライトのベーシストとして、2007年7月メジャーデビュー。ベーシストとして多数のアーティストのライブ・レコーディングに参加するほか、作編曲、DJ、ライター、番組MCなど媒体を選ばず幅広く活動中。

 

鮫島一六三

鮫島一六三

お笑いコンビBAN BAN BANの「フリーザじゃない方」。2010年、アニソンDJイベント「アニソンディスコ」をコンビで立ち上げ国内外、会場の大小問わずさまざまな場所でアニソンを鳴らす。吉本興業所属。

 


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