13日に行われたEURO2024予選グループIの第6節・ルーマニア代表対コソボ代表の試合で、ルーマニア代表のサポーターからコソボに対する差別的な行為が起こったため、試合が一時中断された。

 アルバニア系住民が多数を占めるコソボは、2008年にセルビアからの独立を宣言したが、セルビアは認めず。両国の敵対関係は、この数カ月間、さらに緊張が高まっており、今年5月にはテニス界のスターであるセルビア出身のノバク・ジョコビッチが、全仏オープンでカメラのレンズに「コソボセルビアの心臓だ。暴力をやめろ」とメッセージを書き、大きな波紋を呼んでいた。

 コソボの独立は、約100カ国以上によって承認されているが、ロシアや中国、スペインなど一部の国は依然として独立を認めていない。今回EURO2024予選で対戦することになったルーマニアも、セルビア側に立っており、独立を認めていない国のうちの一つだ。

 そんな民族間の緊張が高まる中、ブカレストで行われたルーマニア代表対コソボ代表の一戦で、差別的な行為は起こった。

 試合前にコソボ国歌が流れると、ルーマニア代表のウルトラス(サポーター)が「セルビアセルビア」と連呼し、スタジアム関係者がその音を隠すためにさらに大きな音で国歌を流す事態に発展した。

 そして、試合中もルーマニア代表のウルトラスから「コソボセルビアだ」という合唱がスタジアムに響き、スタンドでは同じメッセージが書かれた横断幕が掲げられた。そのため、前半18分に主審が試合の中断を決定。両チームの選手がピッチから退いた。

 中断後、スタジアムでは「試合再開に向けて努力している」とのメッセージとともに、「隣国(セルビア)の名前を叫ぶのはやめてください。欧州サッカー連盟UEFA)はリヴィジョニズム(歴史修正主義)を容認しません。これは最後の警告だ」、「同じ横断幕を掲出しないでください」と場内にアナウンスが流れた。

 約50分間の中断を経て、最終的に試合は再開。前半だけでイエローカードが6枚出され、コソボ代表のFWヴェダト・ムリキが退場となったが、試合は最後まで行われ、後半に2点を決めたルーマニア代表が2ー0で勝利した。

 この勝利により、ルーマニア代表はグループIで勝ち点12の2位となり、首位のスイス代表とは2ポイント差に迫った。一方、コソボ代表は5位に順位を下げている。

 なお、この試合では、ルーマニアでよく使用される民族主義的なスローガン「ベッサラビアはルーマニアだ」と書かれた別の横断幕もスタンドに掲げられた。現在はモルドバウクライナに属しているベッサラビア地域が、かつてルーマニアの領土だったため、依然として国家に属していると主張するメッセージだ。

 欧州サッカー連盟は(UEFA)は、試合後に「一部のサポーターによる差別的行為により、試合が中断された後、50分間の中断を経て、試合が再開された」と発表した。

EURO2024予選グループIの第6節・ルーマニア代表対コソボ代表 [写真]=Getty Images