詳細画像はこちら

基礎骨格は日産アリアと同じCMF-EV

何事も、タイミングが重要だったりする。それは、ニューモデルの発売にも当てはまる。

【画像】EVはクロスオーバー風に一新 メガーヌ Eテック・エレクトリック 競合モデルも 全131枚

ルノーは、欧州市場で小型ハッチバックのバッテリーEV(BEV)、ゾエを2012年から販売している。高価なBMW i3より市場の嗜好に合致していたが、当初はBEVを受け入れられる環境や心構えが充分に整っていなかったことも事実だ。

詳細画像はこちら
ルノーメガーヌ Eテック・エレクトリック(英国仕様)

一方でメガーヌ Eテック・エレクトリックのプロトタイプへは、約1年前に試乗している。その時点で発売されていれば、キア・ニロ EVやMG 4などに先行できていたはず。フォルクスワーゲンID.3の弱点から学び取るには、時間不足のタイミングだったとしても。

惜しくもルノーは、量産版としての最終仕上げに時間を要した。その間にライバルモデルが市場へ投入され、それぞれの強みで少なくないユーザーを獲得している。

もちろん、ルノーが意欲的にプロジェクトを進めなかった結果ではない。メガーヌエレクトリックは、日産とのアライアンスで実行されるBEV計画の2番目に当たるモデルとして、重要度が極めて大きいためだろう。

基礎骨格をなすプラットフォームは、SUVの日産アリアも採用する新開発のCMF-EV。アリアがフォルクスワーゲンID.4なら、メガーヌエレクトリックはID.3といった位置関係になるといえる。競合せず、補完し合える関係を狙っている。

バッテリー容量は60kWh 航続距離は450km

駆動用バッテリーは実容量で60kWhとアリアより若干小さいが、450kmの航続距離で競争力はある。40kWh版も設定されるが、英国市場には長い航続距離の方が適合するということで、導入予定はないらしい。

また、メガーヌエレクトリックには前輪駆動しか設定されない。ツインモーターの四輪駆動は選べず、日産アリアと差別化し、ハッチバックとしての位置づけを強調する目的があるようだ。

詳細画像はこちら
ルノーメガーヌ Eテック・エレクトリック(英国仕様)

フロア下に駆動用バッテリーが敷き詰められる都合上、内燃エンジンのメガーヌより全高は高い。全体的にボリューミーなフォルムだが、SUVには見えない。

ID.3のようなボックス状のシルエットは避けながら、存在感のあるスタイリングにまとまっている。全長は4210mmで、ID.3の4261mmより40mmほど短い。全高も1568mmに対し1500mmと、70mmほど低い。

そのためリアシート側は若干狭いが、荷室容量は440Lで大きい。やや位置が高い荷室フロア下には、32Lの収納空間も設けられている。リアシートの背もたれは降りたためるが、荷室側との段差が生じる。

前後の座席側にも各所へ収納が用意され、インテリアは広々としていてスタイリッシュ。部分的に新鮮味のある素材を用いることで雰囲気を引き立てているが、硬質なプラスティックも少なくない。

車内で存在感を放っているのが、メーター用とインフォテインメント用のツインモニター。システムは、グーグルが提供するアンドロイド・オートモーティブと呼ばれる、車載専用プラットフォームで稼働する。アンドロイド・オートとは異なる。

グーグルのシステム搭載 乗り心地は良好

ボルボも同じシステムを採用しているが、メーカー独自のインターフェイスに仕上げることができ、一見すると共通性は感じない。グーグルの音声アシスタントが要望を聞き、グーグル・マップが標準ナビとなるから、知っている人なら気付ける程度だろう。

ルーノは、そのアンドロイドをスマートフォン風にデザインしており、現代っ子なら使いやすく感じるはず。アップル・カープレイにも対応し、アップル・ファンがスマートフォンと同期させ、アプリやサービスを利用することもできる。

詳細画像はこちら
ルノーメガーヌ Eテック・エレクトリック(英国仕様)

パワートレインやインテリアで差別化を巧みに図ったルノーだが、走りにも違いが出ていて興味深い。乗り心地は比較的硬めながら、適度な落ち着きもある。

20インチ・ホイールを履いていた試乗車は、若干路面の不整に影響を受けがちだった。それでも、大きさを考えれば快適といって構わないだろう。ほかに18インチも選べる。

ステアリングホイールの操舵感は軽く、切り始めからかなりクイック。滑らかなコーナリングや、フロントタイヤのグリップ状況は判断しにくい。攻め込むと一定の手応えは伝わってくるものの、若干の不自然さも伴う。

最高出力218psを一手に引き受けるフロントタイヤだが、トルクステアはほぼ皆無。トラクション・コントロールが余分なパワーを制限しつつ、ドライバーが望んだ加速を巧みに実現させていた。

0-100km/h加速は7.5秒と充分。ファミリーハッチバックとしては俊足といえる。ドライブモードを変更すれば、アクセルペダルの反応も変えられる。

スタイリッシュで実用的なサイズのBEV

ステアリングホイール裏のパドルを弾くと、回生ブレーキの強さを調整できる。アクセルペダルだけで完全に停止までカバーする、ワンペダル・ドライブはできない。

今回の試乗で確認できた航続距離は、フル充電で平均330kmほど。電費は5.4km/kWhとなるが、もう少しカタログ値に近づいて欲しかったというのが正直なところ。キア・ニロ EVは395km前後は実際に走れる。

詳細画像はこちら
ルノーメガーヌ Eテック・エレクトリック(英国仕様)

急速充電能力は最大で130kW。最短30分で残量10%から80%まで蓄えられる。2022年の新型BEVとしては、妥当な速さだ。

Eテック・エレクトリックの英国価格は、3万5995ポンド(約594万円)から。ライバルよりお手頃ながら、そのエントリーグレードにはグーグルのシステムの多くと、アダプティブ・クルーズコントロールなどが実装されない。

堅実なグレードといえるのがテクノで、こちらは3万8495ポンド(約635万円)から。これも、同等装備のライバルより安いといえる。ただし、MGモーターのMG 4は価格破壊的にさらに安価だ。

メガーヌ Eテック・エレクトリックは、好印象な仕上がりのBEVだと思う。恐らく1年前なら、実用的なサイズでスタイリッシュで、優れたインフォテインメント・システムを実装し、際立つ存在といえただろう。乗り心地も褒められる。

しかしその間に、操縦性や航続距離で勝る実力派ライバルが登場している。市場がどう判断するのか興味深い。

ルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリック(英国仕様)のスペック

英国価格:3万9545ポンド(約652万円/試乗車)
全長:4210mm
全幅:1780mm
全高:1500mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.5秒
航続距離:450km
電費:6.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1636kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:60.0kWh(実容量)
急速充電能力:130kW
最高出力:218ps/5473-1万1688rpm
最大トルク:30.4kg-m/100-4714rpm
ギアボックス:シングルスピード


■EVの記事
ユーロNCAPで5つ星獲得 新型レクサスRZ 乗員と歩行者で80%以上のスコア
BMWの次世代モデル 外観よく似た6車種が登場 デザインに「強い重複」と責任者 キドニーグリルはどうなる?
ファーウェイら3社、高級EVセダンを開発 右ハンドル車も生産予定 新型アバター「12」発表
0-100km/h加速は驚異の「0.956秒」 スイス学生チーム EV加速の新記録樹立、世界最速へ

基礎骨格はアリアと同じ ルノー・メガーヌ Eテック・エレクトリックへ試乗 航続450km