空中で砲弾を炸裂させて敵UAVを撃墜する算段のようです。

陸自の大口径りゅう弾砲 155mm口径で統一

防衛省は、このほど公表した2023年度の「事前の事業評価」で、新たに「統合対空信管」の研究開発を進める方針を明らかにしました。

これは、昨今高性能化が進むUAV(無人航空機)の中でも、高高度を飛ばない中・小型の機体に対して、有効な対処能力を155mmりゅう弾砲などに付与しようというものです。

具体的には、群れとして制御された中型以下のUAVによる飽和攻撃に対応する場合、地対空ミサイルを無数のUAVに用いるのは費用対効果(コストパフォーマンス)の観点から極めて不釣り合いです。そこで、ミサイルよりも安価な砲弾で対処できるようにすれば、敵が無数のUAVを飛ばしてきても、コスパ良く対抗できるとしています。

陸上自衛隊には特科(砲兵)火力として155mmりゅう弾砲FH70が数多く配備されています。自走砲も2023年度末(2024年3月)に203mm自走りゅう弾砲が退役すると、99式自走155mmりゅう弾砲19式装輪自走155mmりゅう弾砲の2種類となり、口径は155mmに統一されます。

そこで、155mm砲弾用の対空信管を独自開発することで、陸上自衛隊に効果的なUAV対処能力を付与しようというもの。こうすることで中・小型のUAV群には対空信管付きの155mm砲弾で、巡航ミサイルには高性能な地対空ミサイルで迎撃するという使い分けも可能になることから、防衛省では「多層的な防空が期待できる」ようになるとしています。

新規開発は信管のみ 砲弾は既存品で

「統合対空信管」の研究は令和6(2024)年度から着手し、令和13(2031)年度初頭までに試作へ到達、同年度後半に所内試験を実施する計画で、防衛省では令和13(2031)年度末には中・小型UAVへの対処能力を確立するとしています。

なお、非対空用の大口径火砲から射撃する航空機対処用の対空信管付き砲弾としては、旧日本海軍が開発・量産した「三式弾」や「零式弾」が比較的よく知られています。しかし、これらはあらかじめタイマーをセットする時限信管式であり、また専用砲弾を用いる形です。

一方、今回開発される対空信管は、既存の砲弾に新たに開発した信管を取り付けて対空用として転用できるようにするものです。また信管自体も、UAVに近づいたことを自動的に感知し起爆する近接信管であるため、大きく異なっています。

前出の「事前の事業評価」では、この近接信管に関して「最適な近接作動アルゴリズムによる対空目標への作動技術」「耐衝撃性を含むFPGA(現場でプログラム可能な半導体集積回路)実装技術」「有効範囲内で目標に高確率で効果を与えるための遠距離での目標検知技術」、この3点の確率が達成すべき目標として掲げられています。

防衛省では、この研究に関する2023度予算要求額として約46億円(後年度負担額を含む)を明記しています。

実弾射撃する155mmりゅう弾砲FH70(画像:陸上自衛隊)。