将来、どんな職業につきたい? アンケート調査で男子高校生に聞いたところトップは「公務員」だったといいます。その魅力は安定的で、比較的給与も良いところ。ただ公務員でも不安定で低収入、生きていくのもやっと……そんな悲惨な人たちもいます。みていきましょう。

公務員は「いまどき男子高校生」が将来なりたい職業NO.1!

ソニー生命保険は『中高生が思い描く将来についての意識調査2023』を発表。男性高校生が将来なりたい職業の第1位は「公務員」で15.8%でした。

前回調査である2021年のトップは、当時、一世を風靡していた「YouTuber」で15.3%。あれから2年。「YouTubeでは稼げない」というニュースをよく目にしたことと、天井が見えない物価高に経済の停滞とマイナス要因が重なったことで、急激に安定志向が高まり、公務員人気を押し上げたと考えられます。

不景気のときに人気が高まる公務員総務省令和4年地方公務員給与実態調査』によると、その数、全国で280万人。そのうち、高校生がイメージしているであろう、役所で事務的な仕事をする一般行政職は93万人です。

その平均給与は月収31万5,063円(平均年齢42.0歳)。年齢別に平均給与の推移をみていくと、年齢が上がるごとに給与も増えていき、60歳手前で40万円に達します。

一方、厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』で民間企業(正社員)の平均給与をみていくと、月収で31万1,800円(平均年齢42.6歳)。別調査なので年齢区分は異なりますが、公務員と同様、年齢が上がるとともに給与も増えていき、ピークは50代で40万円まであとちょっとといったところです(関連記事:『【早見表】年齢別・地方公務員と民間企業(正社員)給与比較』)。

異なる調査なので、単純に比較はできませんが、公務員の給与は民間企業と同程度か、それをも上回る水準。さらに雇用等が安定しているとなると、確かに将来に不安が募るなか、高い人気を誇るのも頷けます。

ただ、ここまでの話は民間企業における正社員の話。公務員の世界にも非正規である、「会計年度任用職員」という立場の人たちがいます。地方公務員法第22条の2の規定に基づき任用される職員で、以前は「臨時職員」「非常勤職員」などと呼ばれていましたが、制度導入後はその多くが会計年度任用職員となりました。その数は全国で60万人強で、公務員の5人に1人にあたります。

非正規公務員「会計年度任用職員」…年収200万円未満の低収入に悲鳴

会計年度任用職員はその名のとおり、任用は会計年度ごとが基本。制度の導入はいわゆる非正規公務員の処遇改善が目的のひとつで、民間企業では賞与にあたる期末手当の支給の対象になりました。しかし当の会計年度任用職員からは

――使うだけ使われて……まるでボロ雑巾みたい

――正規の公務員と同じ量の仕事をしていて、給与は倍近く違う

――名ばかり公務員で、これではとてもじゃないが生きていけない

そんな悲痛の声が聞こえてきます。基本的に会計年度任用職員は昇給していくことを想定していますが、全国町村会はその昇給の上限を定義し、事務職員の場合「1級25号俸」としました。その額、およそ18万円。これがフルタイムで働いた時の上限です。

公務非正規女性全国ネットワークが行ったアンケート調査によると、回答者のうち5割以上が年収200万円未満、主に生計を担っている女性でも7割が年収250万円以下でした。

また会計年度任用職員は新地方公務員法において一般職として位置づけられ、服務に関する規定が適用されます。たとえば兼業の禁止もフルタイムの場合は適用。「収入が足りないから」と、アルバイトをするわけにはいきません。

また前述の通り、1年会計年度に限って任用される職員ですが自動更新というわけではなく、更新回数も原則2回まで。民間企業では有期雇用労働者が5年以上働けば無期労働契約に切り替えられる「無期転換ルール」がありますが、会計年度任用職員は公務員なので労働契約法の適用外。無期転換ルールは適用されません。

――公務員でありながら不安定で明日も見えないワーキングプア

このような状況は問題視され、各自治体では非正規から正規への転換が進んでいるといいます。一方で、人口減少のなか、地方の財政は逼迫。非正規公務員を積極的に活用し、人件費を圧縮しようという動きも。

どちらにせよ、会計年度任用職員は制度ができてから日が浅く、さらなる改善が必要なことは明らか。行政で働いていながら生活もできない……なんとも皮肉な状況が、一刻も早く変わることを願うばかりです。

(※写真はイメージです/PIXTA)