近年、サウナがブームとなっていますが、SNS上では「マナーの悪い人が多い」「大声で騒いでいる」「集団で入ってきた」など、マナー違反を指摘する声が上がっています。一方、「サウナは私語禁止なの?」など、マナーがよく分からないといった意見もあります。

 ところで、サウナでは主にどのようなマナーがあるのでしょうか。マナー違反となる行為をした場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。サウナの設置施設で発生したトラブルに対処した経験があり、サウナのマナーに詳しい、弁護士法人永総合法律事務所(東京都千代田区)の弁護士・永滋康さんに聞きました。

サウナストーンへの水のかけ過ぎで器物損壊罪の可能性

Q.そもそも、サウナにはどのようなマナーがあるのでしょうか。サウナに慣れていない人がやりがちなマナー違反となる行為について、教えてください。

永さん「サウナを愛する人は『サウナー』と呼ばれており、熱いサウナとキンキンに冷えた水風呂とを交互に入ることで、リラックスした状態になるのを楽しみにサウナに通っています。

多くのサウナ施設では、サウナーが互いに気持ちよく使えるよう、『サウナの入室前は体をよく洗う』『水風呂に入る前は汗を洗い流す』『室内で場所取りをしない』『室内でタオルを絞らない』など、さまざまなマナーが存在します。私自身はコロナ禍以前からサウナ施設によく通っていますが、サウナでは特に次のようなマナー違反の行為を多く見掛けます」

(1)サウナ室に入る前に体を洗わない
「どうせサウナで汗をかくから、後で体を洗えばよい」と考えているのか、脱衣所で服を脱いだ後、体を洗わずにサウナ室に直行する人を見掛けます。この行為は不衛生なので、きちんと体を洗ってから入室するようにしてください。

(2)サウナ室のドアをすぐに閉めない
友人同士でサウナを楽しむ若者に多く見られる行為です。友人がサウナ室に入るのを待ってドアを開けっ放しにすると室内の温度が下がります。入室したら、すぐにドアを閉めてください。

(3)サウナ室で大声で話す
サウナは私語厳禁というわけではありませんが、施設によっては「黙浴」「サウナ室内は会話禁止」と書かれた掲示物を設置していることがあります。これを無視して友人と会話をしていた人が同室者から注意され、トラブルになったケースが多く発生しています。

特に、新型コロナウイルス感染症法上の分類が2類相当だった2021~2022年は、こうしたトラブルが非常に多かったと思います。

(4)過剰に「ロウリュ」を行う
施設によっては、サウナ室内のストーブ内に設置されたサウナストーンにアロマ水をかけ、水蒸気を発生させる「ロウリュ」を体験することができます。

ロウリュをすると急激に熱い水蒸気がサウナ室内に充満し、温度が一気に上がるため、より熱いサウナを楽しむことができます。ただし、過剰なロウリュはサウナ室内を急激に高温化させるため、同室者とトラブルになることが多いです。

(5)水風呂に入る前に汗を洗い流さない
サウナ室から出た後、そのまま水風呂に頭から飛び込む人をよく見掛けます。「熱いサウナに耐えたから、すぐに水風呂に入って気持ち良くなりたい」という気持ちはよく分かるのですが、極めて不衛生なので、きちんと汗を洗い流してから水風呂に入るようにしてください。

Q.マナー違反となる行為が原因で、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

永さん「可能性はあります。以前、客が、サウナ施設のスタッフに無断でサウナ室内の設定温度を勝手に変更してしまったケースがあります。このような行為で室内が高温になり過ぎた結果、他の人がやけどをしてしまった場合、傷害罪(刑法204条)に該当する可能性があります。

ロウリュのストーブアロマ水をかけ過ぎた場合、故障することがあるので注意してください。また、2022年には、あるサウナ施設でロウリュ用のサウナストーンに放尿した人がいました。そのため、清掃や消毒のためにサウナが一時的に使用できなくなったケースがあります。

このような行為により室内の機器を破壊するなどして、サウナを使用できなくさせた場合、不法行為(民法709条)に該当し、損害賠償を請求される可能性があるほか、器物損壊罪(刑法261条)や業務妨害罪(刑法233条、234条)に該当する可能性もあります」

 サウナを長年愛用している人の中には、ブームに伴う客のマナー悪化を理由に、サウナを利用しなくなった人もいるようです。客同士が互いに気持ち良く過ごすためにも、サウナを利用するときは、必要最低限のマナーを守りましょう。

オトナンサー編集部

サウナ施設でのマナー違反が法的責任を問われる可能性は?