スター・ウォーズ」ドラマシリーズの最新作「スター・ウォーズ:アソーカ」が現在ディズニープラスで独占配信中。アナキン・スカイウォーカー唯一の弟子であり、クローン戦争から続く銀河の戦いの歴史を見つめてきた元ジェダイのアソーカ(ロザリオドーソン)が、新たに訪れる銀河の危機に立ち向かう全8話の物語も、いよいよ折り返し。本稿では、あのレジェンドキャラも登場し、胸アツ必至の展開となった第4話と5話のレビューをネタバレありでお届けする。

【写真を見る】銀河を超えられる宇宙クジラ、パーギルって?

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

■あのマスターの「最後の訓練」…絶対的な善、絶対的な悪は存在するのか

前作、第4話から怒涛の展開になっている「スター・ウォーズ:アソーカ」。何が怒涛かと言えば、善と悪の境界線が徐々に曖昧になりよりドラマチックになったからだ。アソーカ(ロザリオドーソン)と剣を交えるベイランスコール(レイ・スティーヴンソン)は自身の正義、スローン(ラース・ミケルセン)につくことで得られるだろう新しい未来を語り、サビーヌ(ナターシャ・リュー・ボルディッツォ)は、残された唯一の“家族”だと思っているエズラ・ブリッジャーを捜すため、敵であるはずのスローンを捜すモーガンたちの旅に同行する。勧善懲悪の痛快なストーリーから始まった「スター・ウォーズ」シリーズがここにきて、より深く、さらにリアルに善と悪に切り込んできたように見えるのだ。

考えてみれば、アソーカ自身が善と悪の間で苦悩してジェダイを離れた者であり、ベイランもまた正義の道から外れた元ジェダイ。ここで剣を交える2人が、いずれも善や正義に疑問を抱いているキャラクターなのは偶然とは思えない。

そういう流れのなか、配信されたばかりの第5話「影武者」は大変興味深い。第4話の最後に登場し、みんなを驚かせたアナキン(オリジナルのヘイデンクリステンセンが演じている!)が、ベイランとの闘いで海に投げ出され生死の狭間を彷徨っているアソーカの前に出現。途中で終わっていた「訓練の続き」を再開すると言い、2人がライトセーバーを交え、アソーカとジェダイの間に亀裂を生じさせたクローン戦争の時代にスリップする。

自分の命令のせいで多くの犠牲者を出してしまったことを悔やむ、まだ少女のアソーカアナキンは、指揮を執るのがジェダイの務めであり、時に間違いもあること、そして、求められる使命も時代によって異なることを説く。不穏な時代にジェダイとなったアソーカには、兵士としての戦闘力とサバイバル能力こそが必須だと言うのだ。ということはつまり、絶対的な善と絶対的な悪というのは存在しているのか?善には悪の側面もあり、同じように悪にも善の側面があるのではないか?濡れ衣を着せられて一度はジェダイから追放されているアソーカだからこそ、その価値観が理解できるのではないか? 

その「訓練」を続けていると、ジェダイだった善のアナキンダークサイドへと転じ、顔つきはもちろん、ライトセーバーも青から赤へと変化する。アナキンのこの変容を見せることこそが最後の訓練なのではないかと考えたくなるほどドラマチックだ。

■ヘラの息子がフォースを発揮しアソーカを救出!お馴染みの”あのセリフ”も

訓練を終えた時、アソーカに示されるのは2つの選択肢。生きるか、それとも死ぬのか。アソーカが選んだのは「生きる道」。その時、シス仕様だったアナキンの顔は穏やかなジェダイ仕様となり「まだ望みはある」という言葉を残し、かつてのパダワンを現世へと送り返す。今回のサブタイトルShadowWarrior」は「影武者」と訳されていたが、誰のことなのか?もしかしたら直訳どおり「影の戦士」で、このアナキンを指していると思ったのだが。

では、アソーカとサビーヌの救助に来たヘラ・シンドゥーラ(メアリーエリザベスウィンステッド)はどうだろうか。大切な仲間の救出という自分にとっての正義を、彼女が身を置く新共和国が阻み、彼女の指揮権を剥奪しようとまでする(彼女をかばっているというのは「オーガナ議員」すなわちレイア!)。やはり、善と悪はきちんとすみ分けられるものではないと言っているように見えるのだ。

ちなみに、アナキンとパダワンのアソーカがいる戦場は、「最初の任務」と言っていることから、クローン戦争中のライロスの戦いだとうことがわかる。この戦争はアニメ版「スター・ウォーズクローン・ウォーズ」で登場していたが、実写版では初めて。もう一つの戦いは、やはり「クローン・ウォーズ」で描かれていた惑星マンダロアでのマンダロア包囲戦。アソーカはボ=カターン・クライズと似通ったヘッドバンドをつけている。また、同シーンには実写では初になる老クローン兵士、キャプテン・レックスも登場。声を当てているのはこれまでのディー・ブラッドリー・ベイカーから、「ボバ・フェット」のテムエラ・モリソンへとバトンタッチされている。

そんなシリアスな物語が展開するなか、新たな存在感を発揮したのがヘラとケイナン・ジャラスの息子ジェイセン(エヴァン・ウィッテン)だろう。第4話ではシリーズお馴染みのセリフ「いやな予感がする」を口にしていた彼がここでは父親譲りのフォースを発揮。海から聞こえてくるライトセーバーバトルの音を聞き取るのだ。側にいるチョッパーすら感知できないのに!また、ジェイセンが海から聞こえるライトセーバーの音に耳を傾けている時に流れるのは「スカイウォーカーのテーマ」。言うまでもなくアナキンの登場を彩っているのだけれど、それと同時にジェイセンのフォースの目覚めも祝っているようにも聴こえてしまう。

では、これからの物語はどうなるのか?アソーカはサビーヌを捜す旅に出るのだが、彼女がモーガンたちと向かったであろう別の銀河へとハイパースペースジャンプするために選んだ手段は、巨大な宇宙クジラ、パーギルの体内に潜むこと。「スター・ウォーズ 反乱者たち」でエズラがパーギルたちとフォースによって想いを通じさせたように、アソーカも彼らと心を通わせ共に銀河を超える旅に出る!

そんなアソーカを見送るヘラの口から、あの名文句「フォースと共にあらんことを」がこぼれるのは美しく感動的ですらある。やっぱりこのセリフはファンの心にしみてしまう。

シリーズも佳境に入り、新しい価値観と旧来のお約束が混在した「アソーカ」。今回の監督&脚本を担当したのは本シリーズのクリエーター&ショーランナーであり、「反乱者たち」、「クローン・ウォーズ」(アニメシリーズ)も牽引した、いま現在の“スター・ウォーズ・ワールド”の立役者デイヴ・フィローニ。アニメシリーズとのリンクが濃くなるだけではなく、物語が深くなると同時にワクワクさせられるのは当然なのだ。

文/渡辺麻紀

まさかの登場を果たした“マスター”が、アソーカに「最後の訓練」をつける!/[c]2023 Lucasfilm Ltd.