株式会社帝国データバンクは、コロナ禍で注目を集めた「餃子無人販売店」の動向について調査・分析を行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 餃子の無人販売、コロナで大幅増 22年度末に1300店、3年で10倍に急拡大

  2. 出店数は鈍化傾向、市場飽和で閉店も 利用者層の拡大が市場維持のカギに

[注1] 全国の「餃子無人販売店」のうち、帝国データバンクが店舗数・推移が取得可能な全国67事業者・ブランドを対象に集計した

[注2] 企業信用調査報告書(CCR)ほか、外部情報などを基に集計した。なお、店舗数や初出店時期などは一部推定値を含む

※調査期間:2023年7月31日まで

※調査機関:株式会社帝国データバンク

餃子の無人販売、コロナで大幅増 22年度末に1300店、3年で10倍に急拡大

コロナ禍で「ギョーザの無人販売所」が急激に増えてきた。店内備え付けの冷凍ケースから顧客が商品を取り出し、料金箱に現金を入れる無人販売スタイルの餃子専門店は、2022年度末時点で全国に1282店あることが分かった。コロナ禍の20年度末時点は131店と少なかったものの、以降は急激に出店数が増加し、22年度末までの3年間で約10倍に急拡大した。23年度は7月時点で全国におよそ1400店あり、店舗数は前年度に比べて増加した。

冷凍餃子の無人販売事業に進出した企業の進出時期(初出店時ベース)を見ると、最も多いのは「2021年度中」で、全体の6割がこの時期に参入した。また、こうしたビジネスに成功した企業が多いことから、22年度以降に新たに参入した企業も2割を占めた。なお、22年度末時点で最もシェアが大きかった餃子無人販売店は「餃子の雪松」ブランド(運営:YES、東京・国分寺)で、全国シェアのおよそ3割を占めた。

「冷凍餃子の無人販売ビジネス」は、手軽な調理で人気が高い「餃子」を、巣ごもり下の買いだめ需要を受けた「冷凍食品」としたことで、消費者に受け入れられる余地が広がった。総務省の家計調査によると、冷凍餃子を含む2022年度の冷凍調理食品の支出額は、1世帯当たり1万円を超え15年度以降で最高だった。また、24時間営業による利便性の高さ、つり銭が不要な30~40個・1000円の価格設定なども、消費者の認知度を大きく高めた要因となった。

他方、無人販売を展開する企業では、中華料理店や業務用冷凍食品メーカーがコロナ禍での販売減少を補うために冷凍餃子専門店へと進出したケースが多くみられた。「事業再構築補助金」など各種補助金制度の活用も背景に、本業とは別の事業として手がける動きも広がったことで、駐車場運営やクリーニング店など他業種からの参入も多くみられた。有人店舗に比べて省スペース・低コストでの開業が可能なこと、人件費などランニングコストが大きく抑えられるといったメリットも後押しした。特に、店舗運営に従業員を多く必要としない点が近時注目され、餃子以外の商材でも無人販売ビジネスが展開されるケースが目立つ。

出店数は鈍化傾向、市場飽和で閉店も 利用者層の拡大が市場維持のカギに

コロナ禍の3年間で1000店舗以上増加した無人餃子販売店は、足元では既存店舗の売り上げが減少傾向に転じたケースもあり、競争激化の影響が出始めている。これまで店舗数の急増を支えてきた出店ペースも23年度に入って鈍化傾向にあるほか、店舗の閉鎖や事業の断念といった動きも見られ、市場は「飽和状態」に近づきつつある。調査対象となった67の餃子無人店で販売する餃子1個当たりの価格も約30円と、市販冷凍餃子に比べるとやや割高な点も、物価高で節約志向が強まる中では逆風となる可能性もある。

今後は、コロナ「5類」移行で外食需要が回復し、相対的に巣ごもり需要が一服するなかでの利用者層の拡大が市場維持のカギを握る。日本冷凍食品協会(東京・中央)が今年4月に行った調査では、自動販売機や無人店舗等で冷凍食品を購入した割合は男女ともに1~2割にとどまった。利用者層の拡大余地は依然として残っているなかで、味や品質、価格に見合うこだわりといった、「無人販売」など話題性以外の誘客戦略が求められる。

配信元企業:株式会社帝国データバンク

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ