堺雅人主演の日曜劇場「VIVANT」(毎週日曜夜9:00-9:54、TBS系9月17日は夜9:00-10:19)の最終回となる第10話が9月17日(日)に放送される。同ドラマは、数々の作品を世に送り出してきた福澤克雄氏が原作・演出を手掛ける完全オリジナルの“アドベンチャードラマ”だ。このたび、本作のプロデューサーを務める飯田和孝氏のインタビューコメントが到着。本編では描ききれなかった第1~9話の裏話や撮影秘話を明かしてくれた他、最終回前に“見返すべきポイント”をたっぷりと語ってくれた。

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■完全オリジナルのアドベンチャードラマ

同ドラマには堺の他、阿部寛松坂桃李二階堂ふみ二宮和也役所広司といった“全員主役級”のキャストが出演。

さらに、竜星涼、迫田孝也、林遣都、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世キムラ緑子や、映画「スパイダーマン」シリーズで知られるハリウッド俳優のMartin Starr(マーティン・スター)、「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイをはじめ数々の人気アニメのキャラクターを演じているレジェンド声優・林原めぐみらバラエティーに富んだキャストが登場。

また、2カ月半にも及ぶモンゴルのロケでは約1000kmを縦断、約250人のキャスト・スタッフが稼働するなど破格の規模での撮影が敢行された。

第1話

ドラム(富栄ドラム)の付けた発信機に気づく乃木(堺)

クランクインする前には、10話までの台本はほぼできていたので、1話で乃木がドラムに盗聴器を仕掛けられたところは、すれ違うシーンを撮影する際に、別班乃木がそれに気づく5話のシーンも併せて撮影しています。

その後、乃木はCIAのサム(Martin Starr)と話すわけですが、ドラムの盗聴器がある状況なので、聞かれてはいけない話は、盗聴器から離れた広場へ出て話しているという演出になっています。衛星から乃木の顔を見るために作られたシーンと思われるかもしれませんが、実はそういう意味もあったんです。これを踏まえてもう一度あのシーンを見ていただくと、面白いかもしれません。

・乃木vsザイール(Ganbold Erkhembayar)

ザイールを銃で撃つシーンは、実は乃木が撃っていたという部分も同時に、撮影しています。カメラのアングルを変えることで、1話では見えないようなアングルのカメラを採用し、別の野崎の視点(野崎の小型カメラ)からのアングルは5話で採用しているんです。

乃木さんの動きや体の向きも非常に繊細な演出になるので、態勢や、銃の出し方、それでいて、あれだけ正確にザイールの腕を撃ち抜くためにプロが見ても違和感のない撃ち方を、監督、堺さん、ガンアクション指導、アクション指導を交えて綿密に打ち合わせをして、工夫しながら撮影をしました。

ザイールを撃った後、野崎が突入しくるので、銃を持ったままにはできない、じゃあどう処理するかまで綿密なシミュレーションがなされていました。

考察でも気づいていただいてますが、ザイールのところへ向かう途中、乃木が警察車両の中で、少し屈む仕草は、あの時乃木さんは、銃を仕込んでいるんです。もう一度見てもらうと、警察官が「例のものは3万だ」というようなことを言っているんですけど、「例のもの」とは、その銃のことなんです。

・アリ(山中崇)のスマホをすり替え

堺さんとマジック指導の方と、スーツを着ている状況で、どういうふうに隠して、どうすり替えるかという打ち合わせを何度も重ねました。

またアリの部屋でデータを盗むところも、サイバー監修の助言を元に、福澤監督と助監督が何度もシミュレーションし、現場で堺さんとも何度も話し合って、別班ではない乃木のキャラを保ちながら、どのように実行するのが良いかを検証していました。

アリに気づかれないように動かなくてはならないし、でもアリはまだ乃木をただの商社マンとしか思っていないわけで、乃木の動きが鋭くても不自然ですし。かといって、アリはテロ組織の幹部クラスだということも乃木はわかっているので、バレてはいけないし、そのへんの絶妙なあんばいは、堺さんと山中さんだから、可能だったのではと思っています。

・数多く登場したモンゴルの動物たち

何頭ものヤギが一斉に移動する中を、乃木たちが逃げるというシーンがありました。昨年夏に、初めてロケハンに行ったのですが、それこそそこらじゅうに動物がいて、人間と共生していることを実感しました。

そんな動物との距離感に触れたことで、監督もあのストーリーを思いついたのではないかと思います。実際の撮影では、3000頭のヤギたちをどうやって同じ方向に動かして、その中で馬を走らせるか、とても苦労していました。いざ、移動が成功するも、今度は砂埃が立ち過ぎてしまい乃木たちが全く見えなくなるという(笑)。

それから散水車を呼んで水をまいて、地面を濡らして、など試行錯誤の末に、あのシーンが誕生したのです。他にも、VIVANTには、ラクダに命を救われるシーンもあり、動物がこのドラマの鍵をにぎっているんです。

“動物の社会の中に人間がいるような感じ”と堺さんがモンゴルを表していらっしゃいましたが、モンゴルは人間と動物との距離感が日本と全く違います。人が動物を“飼っている”という感覚ではないんです。ですがそれは、日本がまだ遅れているだけあって、世界では当たり前のことだと痛感しました。

長旅を助けてくれたラクダを乃木と薫(二階堂)が心配して、時間をかけてウランバートルまでドラムが戻すという描写はそんな世界基準の考え方を取り入れたいという監督のこだわりでもありました。乃木がラクダモンゴル語で話しかけるのは、モンゴルの動物だからモンゴル語で、という堺さんのこだわりでもあります。

・“F”のキャラクター

乃木は普段、情けない男を演じているわけではありません。別班の乃木は“F”が担っているので、普段の乃木は温厚な性格です。

1話でチンギスから逃げている道中も、乃木はいつでも逃げられる状態です。でも、野崎(阿部)に素性がバレてしまう恐れがあるのであえて逃げません。また、野崎と行動を共にし、公安は“テント”に関してどこまで情報を得ているのか探る意図もあります。乃木と野崎のシーンを1話から見返してみると、そういった部分がより分かると思います。

■第2話

・随所に散りばめられた日本文化

野崎が乃木や薫に赤飯を振るまうシーンがありますが、ドラムが食べるところてんやお餅(5話)、日本大使館で出される料理など、全体的に日本特有のものを数多く使用しています。食べ物に限らず、乃木が住む日本家屋も、ベキ(役所)の刀もそうです。

福澤監督には、日本の人々はもちろん、やがては世界中の人に「VIVANT」を楽しんでほしいという思いがあり、日本の文化や風情をドラマ内にたくさん散りばめました。

乃木と薫が抱き合うシーンの背景を桜にしたり、ベキの故郷が奥出雲で、古くからたたら製鉄や稲作が栄えた地域だったり。世界に発信しているものが、日本の人も改めて日本の良さに気づかされるきっかけになるのではないかと思っています。

・伏線が回収されていないシーン

第2話は最終回につながる部分があります。第1話で壮絶な戦いを繰り広げたチンギスは、それがあったからこそお互いを認め、第5話で野崎はチンギスと手を組みます。

また、第2話で野崎が「ちょっと用事ができた」とナジュム(Bruce Taylor)を連れて行ったシーンの真意もまだ回収されていません。そして、英子(檀れい)とワニズ(河内大和)の会話も、改めて見返すと、最終回を見るときにさらにドキドキできると思います。

第3話

・数多くのセットに隠された工夫

データセンターに忍び込む撮影は本当に大変でした。実は、コンビュータがいくつも設置された部屋はセットで、警備室前はロケで撮影しています。野崎や東条(濱田)がいる車もセットです。

今回はセットを50以上も制作していますが、実はいろいろと使い回しをしています。例えば、データセンターの壁を公安の会議室の壁に使ったり、病院の壁を部屋に使ったり、台本がそろっている状態で撮影をスタートさせたことで、「このセットは次ここに活用しましょう」というプランを美術さんが立て、それに則った撮影スケジュールを組むことができました。

ただ、使い回していることが分からないように、第1話で使用したものをラストに回すなど、工夫を凝らしています。

■第4話

・新庄(竜星)を責めないで!

新庄が山本(迫田)を見失うシーンも、いろいろと考察がなされていましたが、一応追われている側も相当に訓練された人物ですからね。

山本も別班の黒須(松坂)が助けていますし、たぬきの置物を見ている隙に乃木を見失ったのも、そもそも乃木は別班ですから。なので皆さん、新庄ばかり責めないであげてください(笑)。

■第5話

・別班特有の連絡手段と、謎の登場人物

乃木が神田明神で祠をチラっと見るシーンは、後で別班の連絡方法に関係していることが分かります。饅頭が供えてあり、それを確認してお茶屋に行くという流れもスパイ映画のようなシーンですよね。

あまり触れられていませんが、あのお茶屋の店主(小林勝也)はもしかしたら、二人が別班だと分かっているのではないでしょうか…。

マスコットキャラクターのヴィヴァンちゃんが本編に登場!

もともと、日曜劇場には重厚なイメージがあるのと、今回は放送前に作品に関する情報をほぼ出さなかったこともありあえてイメージとは真逆のかわいらしいキャラクターを立ててPRをしようと考えました。

実はこのヴィヴァンちゃん、5話に出演しているんです。どこかに登場しているので、ぜひチェックしてみてください。割と画面のど真ん中に、こっちを向いてほほ笑んでいます(笑)。

■第6話

・薫の意味深な発言

薫が乃木に「私のこと好きなんですか?」という縁側のシーンがありますが、その前の会話、薫さんの表情がとても意味深なんです。実は僕の知らないストーリーがあるのではないかと疑ったぐらい(笑)。

もしかしたら監督が教えてくれていないストーリーがあるかもしれません。バナナナイフのシーンは、男の子の憧れが詰まったようなカットでした。宮崎(陽平)監督にとってもこだわりのシーンだったようで、現場では入念な打ち合わせがなされていたようです。

実は、10日19時から放送した生放送のセットにも、バナナナイフがあったのをお気づきでしょうか(笑)? セットに入るなり、宮崎監督が「見てください見てください」と無邪気に寄ってきたのを覚えています(笑)。

ドラムボイス誕生秘話

ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)の手術の無事を祈るドラムの姿は印象的ですよね。ちなみにドラムの声については、最初から女性の声にすることは決まっていました。

普通の声にするか、色っぽい声にするか、いろいろとアイデアが出る中、では実際に誰にお願いしようという話になった時、さまざまな役を演じ分けていらっしゃる声優、林原めぐみさんにオファーをしてみたんです。

監督には、「このドラマを世界に発信するなら、世界的アニメである『エヴァンゲリオン』や『カウボーイビーバップ』の声を担当している林原さんの声が必要です!」とプレゼンしました。

ご本人も、ドラムのキャラクターや、何よりこの「VIVANT」を面白がってくださり、お引き受けいただきました。本当に感謝しています。今でも、誰の声と言わず、現場で林原さんの声を出した、最初のドラムのシーンのリハーサルは、鮮明に覚えています。「この声って…ですよね」というスタッフの列が(笑)。

■第7話

・乃木と野崎の2人だけが分かる会話

バルカ共和国へ向かう飛行機の中での乃木と野崎の会話は、乃木が別班だということが分かっていながら交わされる高度なやりとりです。

そして乃木の「あなたは鵜群の一鶴、眼光紙背に徹す」というメッセージも、野崎にしか分からない。さらに、空港で乃木は野崎に「僕は○○○○社との商談があります」と言って去りますが、わざわざ伝えた“○○○○社”の意味とは…。

・野崎のスマホに送られたメッセージとは

別班がノコル(二宮)と接触するため、ロシアの反政府組織を道中で襲い、その遺体を隠した小屋があります。そこに野崎とチンギスも辿り着くわけですが、ここで発信機の付いた薫たちの写真を見た野崎が、スマホを見るんですよね。そこには一体何が書いてあったのでしょうか。

■第8話

・乃木の特技がカギ!

手で重さ量ることができる乃木の特技は、第1話ジャミーンがパンを作るシーンで披露され、第8話ではヤスダ(音尾琢真)の悪事を暴きました。この特技を第1話ジャミーンとの何気ないシーンでやっていたことで、“後付けではない”ということが分かっていただけたのではないでしょうか。

■第9話

・善悪を判断できるジャミーンの存在

ベキの告白で、乃木がジャミーンに助けられた家が、実は自分が生まれた家だったと分かるところは、僕はこのドラマで一番好きなシーンかもしれません。

この運命がつながった瞬間は、事前に知っていながらも、映像を見て鳥肌が立ちました。ジャミーンの存在にも、いろいろな考察が出ていますが、“人の善悪を判断できる”彼女の存在は、最終回に生きてきます。

・山本以外の日本のモニター

第9話のラストで、乃木に撃たれて死んだはずの別班員たちが生きていたという事実が判明しました。あの証拠映像を送ったのは“日本のモニター”とされていますが、これは果たして誰なのでしょうか。

最終回で明かされますので、皆さんぜひ予想してください。第1話から第9話をよく見れば、この人物だというのは分かるはずです。むしろ、この人物がテントのモニターだと仮定すると、「なるほどたしかに!!」となると思います!

■「“家のテレビが壊れてしまうんじゃないかという豪華なシーン”をぜひ楽しみに」

このドラマは“憂助が愛を探す冒険の物語”です。愛を知らない乃木が、薫と出会って愛を知り、そして父親のベキにもその愛が向けられ…そうした乃木の思いがどういう結末を迎えるのか、最後にどういう愛の形を示すのかは1つの見所となっています。

最終回ではまた漢文の言葉が出てきます。その言葉の意味と、ドラマ全話を見ていただければ、必ず1つの結末に辿り着くことができると思います。とても愛のある結末を想像できると思います。

そして、考察を楽しんでくれている皆さま、そんなものはどうでも良いとすら思えてしまうシーンがドーンと待ち受けています。出演者の皆さまも、口にしていますが、“家のテレビが壊れてしまうんじゃないかという豪華なシーン”をぜひ楽しみにしていただければうれしいです。

日曜劇場「VIVANT」でプロデューサーを務める飯田和孝氏のコメントが到着/  (C)TBS