老後資金に不安を感じている人が増えています。しかし、不安があるにもかかわらず真実から目を背け、実情を把握していない人が多いのもまた事実です。不安を抱えたまま右往左往している人は、悪いヤカラからみれば格好の獲物ですから、食い物にされないよう、十分な注意が必要です。どのように対策を立てればいいのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

状況を冷静に分析して、必要なら対策をとればいいのに…

老後資金について不安を感じている人は多いようです。世の中には「年金では老後資金が2,000万円足りない」「いまの若者は将来、年金がもらえない」などと不安を煽るような情報が溢れているので、不安になる方が自然かもしれません。

しかし、将来の不安に怯える一方、実情を調べていない人もいるようですが、人間は、知らないことには必要以上に不安になりやすいですから、ぜひ一度、自分の目でしっかり調べ、考えてみることをお勧めします。

もちろん、それでも不安が雲散霧消するわけではありませんが、漠然とした不安が具体的な不安に変わるだけでも、精神的に楽になりますし、対策をも立てやすくなるというものです。

いまは便利な世の中で、老後資金に関する情報も少し調べれば簡単に手に入りますから、まずは、日本の年金の制度を調べてみましょう。自分が何円くらい年金を受け取れるのか、大雑把な見当がついているだけでも、なにも知らずに怯えているよりはるかにいいでしょう。

もし大病を患って巨額の医療費が必要になった場合、自己負担額がどれくらいになるのか、知っていますか? 知らない人はまず調べてみましょう。そのうえで「不安を感じる必要のないところ」と「不安に感じるべきところ」をしっかり把握するのです。

普通の人の老後資金は「なんとかなる」可能性が大

先に結論をいえば、普通の人の老後資金はなんとかなります。いまの高齢者の多くはなんとか暮らしているわけですから。彼らも現役のころは不安だったはずですが、なんとかなっているのですから、読者もきっと大丈夫だ、という前提で考えていいでしょう。

標準的なサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む、以下同様)と専業主婦(夫)の夫婦は、老後に毎月22万円程度の年金を受け取ります。贅沢はできませんが、なんとか暮らしていけそうな金額ですね。

自営業者は、年金額は少ないですが、定年がないので老後も元気な間は働けます。それなら、長く働いて老後を短かくしてしまえばいいわけです。少ないながらも年金を受け取ったら、それを蓄えておきましょう。短い老後くらいなんとかなるでしょう。

非正規労働者として生計を立てている人は、苦しいでしょうが、それでも対策はあります。たとえば、非正規と非正規が結婚して、片方が厚生年金に加入するような働き方をする、といったことを検討してみてはいかがでしょうか。

世の中に「不安を煽る人」が多いワケ

世の中に出回っている情報は、実際の世の中の姿よりも、暗く深刻な内容になっている場合が多々あります。情報の受け手としては、それを補正して理解することが重要です。

評論家のほうも、「大丈夫です」というより「〇〇という問題点と××というリスクがあり、心配です」といったほうが読者や視聴者の関心を惹きやすいので、悲観的な話をしたがる傾向にあります。

同様に、マスコミも悲観的な話を好みます。「大災害が起きる可能性は小さい」というよりも、「大災害の可能性は否定できず、その場合の被害は甚大なものが予想される」という報道のしかたを好むわけですね。

もっとも、筆者は評論家やマスコミを批判しようとは思いません。彼らの顧客が悲観論を聞きたがっているがゆえに、彼らがそれに応えているだけですから。

問題は、情報の受け手側が、悲観的な情報を得たがっており、なおかつそれを聞いて恐怖を募らせている、という点です。情報の受け手としては、正確な情報を入手し、いたずらに悲観論に怯えずにすむようにしたいものです。

行き過ぎた政府批判も、人々の不安材料に

政治ですが、野党は政府を批判することも仕事ですから、積極的に政府を批判します。その際は、うまく行っていることには触れず、問題点や懸念材料等々を強調するはずです。そこでまた、野党の話を聞いた人が不安になる…ということもありそうです。

与党支持者は野党の発言を割り引いて聞くでしょうが、野党支持者はそのまま受け取って自分の老後に不安を感じるかもしれません。そんなときには「野党はうまくいっていることには敢えて触れていないのだ」ということを思い出してほしいのです。

野党以上に面倒なのは、政府を批判することを使命と考える一部のマスコミでしょう。野党の発言は割り引いて聞く人も、マスコミの報道はそのまま信じる、という場合が少なくありませんから。

マスコミの使命は政府を監視することであり、政府を批判することではないはずなのですが、筆者と異なる認識をしているマスコミも存在するようなので、そうした場合には情報の受け手が慎重になるしかありませんね。

不安を煽って商品を売りつける輩には警戒を!

なかには、相手の不安を煽って商品を売りつけようという輩もいるので要注意です。怪しげな物品を売りつけようとする人だけではありません。「老後資金が足りないなら、わが社の投資商品を買って儲けましょう」などといいながら、金融機関が投資商品を売りつけようとする場合もあるようです。

そういわれたら即決することなく「老後資金がどの程度足りないのか」等を調べると同時に、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉を思い出しましょう。儲けるためにはリスクを覚悟する必要があります。老後資金が足りないから投資をしたのに、失敗して損を被ったら、悲惨な老後になってしまうかもしれません。

えっ、「わが社の投資商品は必ず儲かるのでご安心ください」といわれた?

 ダメダメ、それは「必ず損する詐欺商品」ですよ!

本稿は以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

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塚崎 公義 経済評論家

(※写真はイメージです/PIXTA)