日本のマイホーム取得者はおおむね40歳前後。その年代の平均年収540万円ほどとされますが、4,000万円ほどの住宅を購入する場合、どんな資金計画を組むのが適切でしょうか。詳しくみていきます。

平均的な会社員…平均返済負担率20%の場合の返済月額

多くの会社員が夢にみるマイホーム。昨今は賃貸派が増えているという意見もありますが、5年に1度行われる総務省『住宅・土地統計調査結果』の最新調査(2018年)によると、日本の持ち家率は61.2%。60代では9割弱になることを考えると、まだまだ持ち家派が多数派であることが事実です。

【世帯主の年齢別「持ち家率」の推移(総世帯のうち勤労者世帯)】 ~29歳:6.7% 30~39歳:47.5% 40~44歳:75.8% 45~49歳:71.3% 50~59歳:75.5% 60~69歳:86.5% 70歳~:81.3% 出所:総務省統計局「家計調査 家計収支編」(2022年)より

マイホーム取得に際してどうしても考えなければならないのが、お金の問題。「人生の三大支出」にも数えられるマイホームは、通常数千万円という出費が伴うものです。そんな金額を一括で用意できる会社員は少数派であり、ほとんどの人が住宅ローンを活用しています。

国土交通省令和4年度住宅市場動向調査』で「新築注文住宅」「新築分譲住宅(戸建て)」「新築分譲住宅(マンション)」の購入者(一次取得)をそれぞれみてみると、40歳手前で3,000万~4,000万円の30年ローンを組み、物件を購入するというのが、平均像といえそうです。

■新築注文住宅

世帯平均年収 731万円 世帯主平均年齢 39.5歳 購入資金(住宅+土地) 4,713万円 借入額:3,772万円 住宅建築資金返済期間 32.8年 土地購入資金返済期間 34.5年 返済負担率:16.4%

■新築分譲住宅(一戸建て)

世帯平均年収 722万円 世帯主平均年齢 37.5歳 購入資金 4,074万円 借入額:3,205万円 平均返済期間 32.7年 返済負担率:18.8%

■新築分譲住宅(マンション)

世帯平均年収 923万円 世帯主平均年齢 39.9歳 購入資金 5,048万円 借入額:3,610万円 平均返済期間 29.7年 返済負担率:17.4%

返済負担率は年収におけるローンの年間返済額の割合を指します。「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、日本の40代前半のサラリーマン(正社員)の平均給与(所定内給与額)は33.3万円。残業代や賞与も含めた年収は推定540.6万円です。適正な返済負担率は20~25%前後とされていますので、平均的な会社員の場合、返済額は108万円ほど、月9万円前後になるようにローンを組むというのが、1つの基準といえそうです。

「平均的な会社員」のローン完済は70歳過ぎ…もう少し短いローンを組んでみたら

仮に、4,000万円の新築戸建て購入に際して800万円の頭金を入れ、借入額3,200万円・30年返済の住宅ローンを利用したとします。返済方式は元利均等、金利は0.5%とすると、利息分は246万6,449円で、月々の返済額は9万5,740円。年間の総返済額は114万8,880円と、年収540万円に対し返済負担率は21.3%ほどとなります。「適正」な水準に収まっており、余裕のある返済プランといえそうです。

ただ、この通りの返済プランで進めていくのは少々不安かもしれません。その理由は完済時期。上にみたとおり、40歳前後で30年ほどの住宅ローンを組んでマイホームを購入するというのが平均的な姿ですが、それではローン完済が70歳前後となります。多くの人が年金生活となっているタイミングです。

それでは、もう少し完済時期が早くなるようにしたら月々のローン負担はどうなるのでしょうか。上と同じく、3,200万円の借入を行って新築戸建てを購入したケースを想定してみましょう。

65歳のときに完済すべく25年のローンを利用した場合、月々の返済額は11万3,494円。30年ローンを利用した場合に比べ、月々の返済額は1万7,700円ほど増え、返済負担率も25.2%ほどに高まります。「適正」な水準をわずかに超えており少々負担感はあるかもしれませんが、共働き世帯であれば不可能ではないでしょう。

ただ、住宅ローンの返済を行う現役期間中、一時も途切れることなく、同じ水準の収入を得続けられる保証はどこにもありません。勤め先の業績悪化によってボーナスカットが行われる可能性もありますし、病気やケガによって就労不能に陥るリスクも排除できません。

そうした「まさかの収入減」に備え、安定的に収入を得られている時期にできるだけ多くの自己資金(頭金)を準備しておくのは有効といえます。そのほか、たとえば都内に勤めている会社員であれば物件価格が高騰している23区の物件には早い段階で見切りをつける必要があるかもしれません。

「いまより通勤時間は30分くらい伸びるけど、埼玉に住むか」

そうやって近隣県も視野に入れてみると、思わぬ“お手頃物件”に出会える可能性もあるでしょう。

上記のシミュレーションで完済時期として想定したのは65~70歳。その頃にローンを返し終わっていたとしても、老後の生活はまだまだ続きます。現役時代に毎月返済をしながらも、同時に、年金生活に突入した後の生活を豊かにするための資産形成を行っていける余裕を持つことが重要です。

(※写真はイメージです/PIXTA)