かつてマーケティングの世界では一般的だった「ペルソナ」という手法ですが、現在ではなかなか通用しなくなってきている、と販促コンサルタントである岡本達彦氏は指摘します。岡本氏の著書『お客様目線のつくりかた:顧客視点は仕組みで生み出せる』(悟空出版)より、一部抜粋して紹介します。

 「悩み」や「欲求」に焦点を当てる

かつてマーケティングの世界では、お客様を絞り込むために「ペルソナ」という手法を使いました。

それは「20代女性、OL、独身、年収いくら」などと代表的なお客様のモデルを設定し、そのモデルが気に入りそうな営業戦略を展開していくこと。「ペルソナ」とは、英語で言う「パーソン」で、まさに「人格」とか「個性」を表す言葉になります。

しかし現在、かつての「ペルソナ」という手法は、営業や広告の世界ではなかなか成立しなくなっています。というのも、お客様がそんなステレオタイプカテゴリーに当てはまらなくなっているのです。その昔のマスメディア前世のころは、20代ならこの雑誌、50代ならこんなテレビ番組と、だいたい、接する情報が決まっていたのです。だから人々の趣向にも、同じカテゴリーに属する人であれば、そうそう差が出ませんでした。

ところがネットの時代になり、人々の要望が多様化してくると、昔のように性別や年齢ではお客様をグループ化できなくなっています。

50代や60代の男性でもダイエットを意識するし、化粧品を買う男性もいる。かたや牛丼店でランチをとる女性もいれば、韓流アイドルを追いかける60代女性もいるわけです。

ですから最近のマーケティングでは、 「悩み」とか「欲求」に絞って特化した売り方を追求していくのが通常になっています。

さまざまな人が訪れる「コンビニ」では

例をあげるならば、一番わかりやすいのは「コンビニ」でしょう。コンビニはそもそも、「便利に買いたい」というお客様に特化している販売形態です。お店の広さも適度にして、最低限の品数に抑えた商品展開をしています。ただ、望む便利さの程度もお客様によって異なり、そのレベルもさまざまであるわけです。

レジ横のコーヒーマシンで淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、イートインで飲んでいく余裕のあるお客様もいれば、缶コーヒーを買って、帰り道に歩きながら飲んで帰る人もいます。

その便利さを望むタイプには、やはりペルソナも当てはまりません。男性か女性かは関係ないし、年齢もあまり関係ない。価格が安いか高いかも、あまり考慮しないことが多くなります。

多少高くても、家で外食のようなメニューが手っ取り早く食べられるなら、それを喜ぶお客様もいます。すると、手っ取り早く買えるお弁当などに、最近は比較的、料金の高い高級メニューが増えているわけです。また「手軽さ」をより徹底して、電子決済はもちろん、自分で手続きして勝手に買っていくセルフレジも定着しています。

早く、手軽になるならば、サービスなんて一切なくていい。そういうお客様も世には多くいるわけです。そういう人には望みどおりにしてあげることで、逆にお店の側は、サービスを望む人に時間をかけられるわけです。

(※写真はイメージです/PIXTA)