■「モンハン」、「ガンダム」、戦隊シリーズ……ビッグネームの参入が続く

 『ポケモン GO』などでおなじみのNianticカプコンが、9月14日に新作位置情報ゲーム『Monster Hunter Now』をリリース。誰もが知るビッグタイトルがまたひとつ、位置情報ゲームの世界に降り立った。

【画像】「ガンダムメタバース」プロジェクト

 「モンスターハンター」は、プレイヤーがハンターとなり巨大なモンスターを狩猟する人気シリーズだが、スマートフォンで遊べる『Monster Hunter Now』は片手で手軽に操作でき、大型モンスターは75秒で狩猟するというスタイルとなった。ここに、ARでモンスターが現れる機能も備わり、まるで日常生活の一コマで“ひと狩り”できるようなゲームとなっている。

 事前登録人数が300万人を突破していることからも、注目度の高さがうかがえる新作だ。『ポケモン GO』以来のヒットタイトルとなれるか、各所より熱い視線が注がれそうである。

 同格のビッグネームとして、「ガンダム」シリーズにも動きがあった。昨年発表された「ガンダムメタバース」が、10月6日から10月17日の期間限定でオープンすることになったのである。ガンダムの世界観を再現した空間に、ガンプラの写真やスキャンしたガンプラのCG展示、ECショップ、アーティストライブなど、ガンダムに関わるコンテンツが並ぶメタバースとなる模様だ。

 記念映像作品『ガンダムビルドメタバース』も10月6日より公開される。物語の舞台はメタバース空間で、本作の主人公はメタバース空間で「ガンダムビルドシリーズ」歴代キャラクターたちとガンプラバトルを繰り広げる内容になるとのことだ。

 さらに、持参したガンプラをスキャンし、VR空間で鑑賞・操縦ができるイベント『ROAD TO GUNPLA BATTLE ガンプラバトルVR』の実施も発表された。事前抽選イベントとなるが、「ガンダムビルドシリーズ」の世界観を実現する興味深い取り組みだ。「ガンプラ」という最大の商材とともに、ガンダムシリーズメタバースが立ち上がり始める。

 既存メタバースの進出先として、直近では『Fortnite』も人気だ。9月10日には東映の戦隊シリーズ『王様戦隊キングオージャー』の公式ワールドが『Fortnite』にて公開された。作中に登場する場所をモチーフにした空間となり、制作は「Unreal Editor for Fortnite(UEFN)」、すなわち「Unreal Engine」製だ。9月17日には第2弾の発表も予告されており、継続的な展開が行われるようだ。

 「UEFN」の解禁以後、10代を筆頭に多数のユーザーがプレイするプラットフォームへ、ハイクオリティなゲーム・CG空間を発表しやすくなったこともあり、国内でも『Fortnite』へ参入する企業がにわかに増えている。『TOKYO GAME SHOW VR』を手掛けてきた株式会社ambrも、9月15日に『Fortnite』でのゲーム開発事業参入を発表している。『Roblox』もそうだが、アクセスがしやすく規模の大きなメタバースへの参戦は、下半期に向けて加熱が予想される。

■「ユーザーが自由に活動できる」ことで生まれる熱気

 アクセスのハードルはやや高いが、表現力と没入感に優れた『VRChat』にも、参入の流れは続く。先週名乗りを上げた企業は、国内VRゲーム開発企業の雄・MyDearest株式会社である。

 9月14日にVRChat社との公式パートナー契約を締結した同社が、まず最初に送り出したのは「自社のバーチャルオフィス」だ。「MyDearestバーチャルオフィス」と名付けられたワールドは、現実の同社オフィスを再現しつつも、「デスクの上を散らかす」「壁にスプレー落書きができる」など、「現実ではやっちゃいけない」をコンセプトに様々な“遊び”が散りばめられている。

 VRゲーム企業が『VRChat』にも注力するのは、ユーザーの「VRヘッドセット活用」を広げるためだ。VRゲームを遊ぶ人には、ソーシャルVRで日常的にVRヘッドセットを使う習慣を。ソーシャルVRの住民には、VRゲームという新たな使い道を。両軸でVRを盛り上げていこうという試みを、MyDearestは推進していきたいようだ。

 企業だけでなく、有志によるカレンダーサービス『VRChatイベントカレンダー』も、『VRChat』オフィシャルパートナーとなった。日夜、多数のユーザー主催イベントが開かれる『VRChat』において、「今日はどんなイベントがあるか」を一目で知れるこのカレンダーは、いまや『VRChat』ユーザーの暮らしになくてはならないものだ。

 オフィシャルパートナーになったことで、より機能性を高めたカレンダーが実現したらしく、ワールド内設置用に早速配布が始まったようだ。また、『VRChat』パートナーイベントとの連携を強化するべく、株式会社ポリゴンテーラーが法人窓口を担当することも明かされた。情報インフラとして純粋に強化される、と見て良いだろう。興味深いのは、こうした有志の取り組みやサービスも公式パートナーとなれる『VRChat』の土壌だ。

 『VRChat』ではとにかく多数のイベントが開催されるが、先週とりわけ注目されたのは「道頓堀に飛び込むイベント」だろう。阪神タイガースにとって18年ぶりとなるセ・リーグ優勝を祝い、『VRChat』の道頓堀を再現したワールドにて、参加者が一斉に道頓堀川へ飛び込む催しが開かれたのである。

 現実の道頓堀川に飛び込むのは危険だが、仮想空間の道頓堀川であれば何度飛び込んでもリスクはない。「現実ではやってはいけない」ことを、思いっきりやれるVRの特性がよく活きた出来事だ。なお、イベント自体のインパクトの強さと、阪神優勝の話題性の大きさから、このイベントは複数のメディアで取り上げられ、大きな話題になっている。

 余談だが、『cluster』にも道頓堀を模したワールドがあり、こちらは飛び込むと「飛び込んではいけない」というメッセージが出現する仕様になっている。その大きな理由は同ワールドが大阪府大阪市公式コンテンツだから、というのが大きいだろう。これは致し方がない部分だ。

 一方、『VRChat』の道頓堀は、関西圏の有志ユーザーが作り出したコンテンツである。自由につくり、遊べる土壌が整っていると、ユーザーが自然と場を盛り上げてくれる。ユーザー側の自由度は、メタバースでの取り組みが注目されるかどうかを占ううえで、重要な判断材料となるのではないだろうか。

(文=浅田カズラ)

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