北朝鮮金正恩総書記は18日、ロシア訪問を終えて帰国した。4年ぶりの訪露について、国営メディアでも大きく報じているが、それを見た北朝鮮国民からは失望の声が上がっている。

一番期待していた「アレ」に関する言及がなかったからだ。米政府系のラジオフリーアジアRFA)が報じた。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞朝鮮中央テレビを通じて、金正恩氏訪露について連日報道していると伝えた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、住民の関心が食糧問題の解決に注がれていたと述べた。

「住民たちはロシア訪問がどのように行われたかというニュースより、食糧問題の解決につながる知らせを期待している」

麦、ジャガイモトウモロコシの収穫期が過ぎても、全般的な食糧価格は高騰したままで、1キロ7200北朝鮮ウォン(約122円)だったコメは、14日の時点で8000北朝鮮ウォン(約136円)を記録した。これはデイリーNKが定期的に行っている調査の結果としては史上最高値だ。非常に厳しい食糧事情が続く中、金正恩氏がその解決のためにロシアを訪問したのではないかと住民は思っていたのだ。

しかし、伝えられたのはボストーチヌイ宇宙発射場、航空機工場、ロシア海軍太平洋艦隊の視察や、人工衛星の開発の支援を取り付けたことなど、軍事に関することばかりで、民生などそっちのけ。期待は、失望と諦めに変わってしまった。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋は、13日の夜は午後7時から9時まで電気の供給が行われ、金正恩氏訪露のニューステレビで見ることができたと伝えた。普段は電力供給が行われていない地域でも、重要なニュースが報じられる場合に、テレビ視聴ができるように、特別に電力供給が行われることがあるのだ。

しかし、それを見た住民からはこんな声が上がっている。

ロシアに行ったのだから、食糧難を解消するために農業や食糧問題を議論し、小麦粉などを受け取らなければならないのに、(金正恩氏の関心は)軍事衛星だけじゃないか。いったい何をしに行ったのか」

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、「国内の人民が飢えているのに、豪華な外遊の様子を見ると、 反発心が生まれる」とし、今回のロシア訪問が期待外れだったと述べた。

今まで、米国のトランプ大統領(当時)、中国の習近平国家主席との首脳会談が行われるたびに、国営メディアは大々的に報じていた。しかし暮らし向きはよくなるどころか、2020年1月のコロナ鎖国以降、各地で餓死者を出すほどの厳しい状況となり、収穫期を迎えても、あまり改善していない。住民からはこんな声が上がっている。

「先端科学世界を占領(達成)しようと人工衛星を開発すると言っていたが、結局得たのは飢餓だけだ」

ミサイル人工衛星核兵器の開発について、北朝鮮国民は、その意義、目的など、思想教育を通じて徹底的に教え込まれているにもかかわらず、非常に批判的だ。一部に理解を示す人、積極的に支持する人ももいるが、「まずは食べ物をくれ」という怨嗟の声がほとんどだ。

北朝鮮とて、そのような世論の悪化に気づいていないわけではない。もしかすると、ロシアからの小麦の支援を取り付けたかもしれないが、今のところ国民に期待を抱かせるようなことは一切報じられていない。

金正恩氏がクネビチ軍用飛行場を参観した(2023年9月17日付朝鮮中央通信)