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日曜劇場『VIVANT』(TBS系)が9月17日の放送で最終回を迎えた。その合間に堺雅人をメインキャラクターに起用した丸紅株式会社の新CMが流れたが、まるでミニドラマのように視聴者を引き込む面白さがあった。『VIVANT』では洋服やモンゴルの伝統的衣装を着て「乃木憂助」を演じた堺雅人が、CMでは鎧をつけたエネルギッシュな武士の役で登場するのだ。戦国時代を思わせる武士たちが争いを始めたかと思いきや、ゾンビの群れが襲ってきて、さらに空から怪獣が現れるという風に予測不可能な展開が続く。メイキング映像を見たところ、制作陣のこだわりが伝わってドラマの影響力をうかがわせた。

堺雅人演じる武士「紅丸(べにまる)」と敵対する勢力の首領「鵺姫(ぬえひめ)」役を務めるのは、『賭ケグルイ』シリーズで五十嵐清華役を演じた中村ゆりかだ。紅丸が敵軍を相手に孤軍奮闘していると、地中からゾンビが次々と出てくるではないか。ゾンビを演じた人々が土をかき分けて現れる演技は、マイケル・ジャクソンの代表曲『スリラー』のミュージックビデオを彷彿とさせるほど迫力があった。そんなゾンビの群れに襲われて、紅丸と鵺姫たちは力を合わせて戦う。ところが、今度は怪獣・キングギドラが空から現れたため、ゾンビたちも紅丸と協力してキングギドラに立ち向かうのだった。息もつかせぬ展開の映像とともに、『ファイナルファンタジーⅤ』のBGMとして知られる「ビッグブリッヂの死闘」(作曲:植松伸夫)が流れ、さらにスタジオジブリの新作映画『君たちはどう生きるか』で主人公・眞人の声を担当した山時聡真がナレーターを務めている。

ちなみに、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーによると『君たちはどう生きるか』はデジタルに頼らず「手描き」にこだわったそうだ。時代はCGや画像生成AIによる作品が次々と誕生するまでになった。しかし、ジブリのように手描きでしか出せない魅力を大切にしようとするクリエイターも少なくない。映画界ではトム・クルーズが主演を務める『ミッション:インポッシブル』シリーズで命がけのアクションシーンを自らスタントを買って出て撮影するというエピソードは有名だ。トムはCG映像を好まず、リアルに撮影することを追究しているという。

『VIVANT』の公式SNSでは、モンゴルロケによる砂漠を彷徨うシーンや、モンゴル軍の戦車シーンで出てくる戦車や軍人達はCGを使わずリアルに撮影したことを明かしている。福澤克雄監督は以前にインタビューを受けて、演出を手がけた日曜劇場『陸王』で国道1号を封鎖したロケを振り返り「CGではなく、リアルなとても良い映像が撮れた」と話していた。リアルへのこだわりは強く『VIVANT』でも極力CGに頼らない手法を貫いている。

『丸紅CM|できないことは、みんなでやろう。「紅丸」篇 』ではキングギドラが空を飛ぶところや、隕石のシーンなどCG技術に頼っていないわけではない。しかしメイキング映像を見れば、可能な限り、自分たちの手作業によって作り上げようという意気込みが感じられる。制作者がそうしたこだわりを持ち続ける限り、画像生成AIに仕事を奪われるという心配は無用だろう。堺雅人はインタビュー映像で「キャスト、スタッフの力を合わせてこんな作品ができたのは本当に素晴らしいことだと思う。なかなかできることじゃないので…」と語っている。今回のCMはストーリー展開から「できないことは、みんなでやろう」とアピールするとともに、皆で作品を完成させたことも含め、広い意味でそのことを呼びかけているようだ。

福澤克雄監督は先日のファンミーティングで『VIVANT』の続編について聞かれると、明言を避けながら「僕の中では第3部まで考えて作ってる」と可能性をほのめかした。CGに加えてAIが急速に進歩している時代にあって、福澤監督がどこまでリアルを追求するか次作に期待したい。

画像1、3枚目は『日曜劇場「VIVANT」 2023年8月11日付Instagram「番宣情報 8/13(日)ひる2:00~」』『丸紅株式会社 2023年9月8日付X「新キャンペーン開始しました。」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)

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